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忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その8)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◇2ターン目

◇◇◇

遭遇グロウコブラ: 1d12 = (8)
デスクランチ

 リョウゴク・ストリートの外れ、別区画と隣接する土地に建てられた相撲バー「カワイガリ」。相撲バーであれば当然設置されていて然るべき巨大な中継用スクリーンや大型スピーカー、イミテーション・ドヒョー・リングなどはこの店には無い。

 こじんまりとしたカウンター席の上に掲げられたモニターにはバショの映像が流れているが、音声がオフにされており白熱した実況やデンデンダイコの音は聞こえない。入り口に置かれた土産スペースのオスモウ・チョコが無ければ相撲バーだと分からないような内装だ。

 この店のマスターでもあり、バーテンでもある初老の男性はモニターにどこかノスタルジーを感じさせるような視線を向けながら静かにグラスを磨く。その体格は大きい。歪に大きい。カウンター奥のバックバーに置かれた木製札には立派なオスモウ・フォントで『タケカンムリ』の名が書かれていた。

「……本当にあのデスドレインという男はとんでもないニンジャであった!この極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラが誇るコブラ・カラテとチドク・ジツが通用しない化け物だ。奴を野放しにしておけばネオサイタマが、世界が危険だ!マッポーカリプス、ナウ!」「お前さんがそこまで言うとは相当ヤバイニンジャのようだな」

 カウンター席に座って話すのはグロウコブラとデスクランチの2人。この店にいる客は彼らだけである。グロウコブラはオカワリしたホット・サケをトックリでそのままぐいと呷った。「何を……何を呑気に言っておるか!この私が紙一重のギリギリだったとはいえ逃走を選択せねばならんほどの相手だぞ!ダークニンジャ=サンやラオモト=サンに動いてもらわねば!マスター!なんぞツマミを!」「呑気はどっちだよ……」

 デスクランチはグロウコブラの締まらない態度に呆れつつ、自分もスモトリ専用サイズのジョッキになみなみと注がれたビールを1秒で飲み干し、空になった容器をカウンター席に置いた。マスターはヤキトリの乗った皿と新しいジョッキを2人の前に置き、グラスを磨く作業へと戻った。

 二本の脚で立つ鶏はスモトリにとって縁起の良い動物であると神聖視されており、ヤキトリはリョウゴクの名物料理となっている。グロウコブラが甘辛いタレの塗られた香ばしいバイオ鶏肉に齧り付こうとした……その時である。

※グロウコブラとデスクランチはデスドレインの情報共有を行ったことで、次回以降のデスドレインとの戦闘時、ダイスが+2される。

◇◇◇

遭遇グロウコブラ: 1d12 = (6)
チキンハート

※状況的にデスクランチもいるものとする。

『ハッキョーホー』入り口のドアに取り付けられたオスモウベルの電子音が新たな来客を告げる。「ハァーッ!ハァーッ!」その男は息を切らせ、倒れ込むようにして店の中に飛び込んできた。その背中や腕には血の付いた包帯が巻かれている。「す、スミマセン……やってます?」彼は体裁を取り繕う様に尋ねた。

「チキンハート=サン……!?どうしたんだねその有様は」「デスクランチ=サン!?それに……えっと、グロウコブラ=サンも!」デスクランチは背中や腕に血の付いた包帯を巻いた同僚に駆け寄り、肩に爬虫類めいた手を置く。

「オイちょっと待て貴公今どうして私の名前を言い淀んだまさかとは思うがこの私の名前を忘れて」「黙ってろグロウコブラ=サン。……それで何があったんだ?」「死神だ!」チキンハートは悲鳴を上げるようにその名を叫んだ。グロウコブラとデスクランチが顔を見合わせる。死神。すなわち、ニンジャスレイヤー。

「ブラインド=サンの協力もあってアンブッシュを成功させたところまでは良かったんだが……奴にはかすり傷を与えるので精いっぱいだった。その後、逆に反撃を受けてこのざまだ」「クフハハハ!敵前逃亡とは情けないのォ~!」「お前が言えたことか。黙ってろ」デスクランチは口吻から牙を覗かせ言った。グロウコブラはバツが悪そうにトックリを舐める。マスターは相変わらずモニターを眺め続けている。

「人通りの多いストリートをいくつか経由してどうにか撒くことが出来た。リョウゴク・コロシアムに向かうスモトリの行列に紛れ込めたのが運が良かった……」話している間に恐怖が蘇ってきたのか、あるいは極限状況から解放された安堵からか、チキンハートの目に涙が浮かぶ。

「とにかく、命があってなによりだ。まあ座れよ」「ああ……すまない」「マスター、彼になにか飲み物とツマミを」チキンハートはデスクランチに促され、カウンターの席に着く。「……スミマセン、俺はノンアルコールと、あと、オスモウチョコを」「なんだ?飲まんのかね」とデスクランチ。「仕事中だからな」「お堅いことだ」デスクランチは肩を竦める。

「では貴公、ヤキトリだけでもどうだ。旨いぞ」とグロウコブラ。「……俺は鶏肉は駄目だ」「なに?アレルギー持ちか?チキンハートなんていうニンジャネームのくせにか?」「むしろチキンハートなんていうニンジャネームだからだ」「???意味が分からぬぞ?」「別にいいさ」「ドーゾ」マスターがチャとチョコをカウンターに置く。

「イタダキマス」チキンハートは生真面目に手を合わせ、チャとチョコを口に含んだ。甘さと温かみが口から臓腑へと広がっていき、彼のニューロンを癒す。チキンハートは暴れるように脈打っていた心臓が徐々に落ち着いてきたことを確認しながら、ニンジャスレイヤーについての情報をデスクランチたちと共有する。

※チキンハートとグロウコブラとデスクランチはニンジャスレイヤーの情報共有を行ったことで、次回以降のニンジャスレイヤーとの戦闘時、ダイスが+2される。

◇◇◇

遭遇リストレイント: 1d12 = (2)
ニンジャスレイヤー

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」「……ドーモ、リストレイントです」一方その頃、もう一人の逃走者であるリストレイントは追跡者であるニンジャスレイヤーと鉢合わせていた……!

(チィッ、まさかこんなタイミングでターゲットと出くわすとは……)リストレイントは己の不運を呪い、心の内で舌打ちした。事前に調査しておいた下水道の迷宮めいて入り組んだ通路を通ることでデスドレインの操るアンコクトンの奔流からは辛うじて逃れることが出来た。

 だが、背後から迫る敵を振り切るのに必死で前方で別のニンジャを追跡していたニンジャスレイヤーに気が付けず、鉢合わせしてしまったのは痛恨の極みであった。うまくやればリー先生から捕獲依頼があったニンジャスレイヤーと、アーチ級ソウル憑依者であると思われるデスドレインの2人を漁師がカチグミ出来たかもしれぬというのに。不用意な戦闘でツキが落ちたか。

「イヤーッ!」しかし終わったことをいつまでも嘆いていても1円の特も無し。リストレイントは即座に意識を切り替え、左右の手で手錠と足枷を同時投擲した!「イヤーッ!」「グワーッ!?」

リストレイント『対抗判定:ワザマエ』+『☆小拘束具投擲(1)』:
10d6>=4 = (3,6,6,5,3,2,3,3,6,4 :成功数:5)

ニンジャスレイヤー『対抗判定:ワザマエ』+『◉ツヨイ・スリケン(1)』:
13d6>=4 = (4,5,5,5,4,5,6,4,1,4,2,1,6 :成功数:10)
リストレイント体力6 精神力4

 ナムサン。ニンジャスレイヤーの両手が掻き消えたかと思った次の瞬間、リストレイントの投擲した拘束具が破損した状態で地面に落下し、更にリストレイントの脇腹に1枚のスリケンが突き刺さっていた。ニンジャスレイヤーが右手で投擲したスリケンが手錠と足枷を同時破壊し、左手で投擲したスリケンがリストレイントに届いたのである。

「グワーッ……」リストレイントはスリケンを引き抜き、咄嗟にカラテを構えてニンジャスレイヤーと対峙する。死神はこれにジュージツの構えを取って応じた。「ツー・ラビッツ・ノー・ラビット。殺す順番はまずオヌシからにする。だがすぐには殺さぬぞソウカイヤ。痛めつけ、インタビューする」

 リストレイントの額に汗が流れる。彼は脳内で無数のイマジナリー・カラテを行い、己の生存可能性を計算しようとした。「イヤーッ!」だがそれより早く、現実のニンジャスレイヤーが赤黒の疾風となってリストレイントのイマジネーションを掻き消した!

「イ、イヤーッ!」傭兵はジゴクめいたチョップを奇跡的な反応で防御!2人はそのままワン・インチ距離で鍔迫り合いめいてチョップを押し合い、殺意の籠った視線を交差させた!

◇◇◇

遭遇ニンジャスレイヤー?: 1d12 = (4)
ドラゴンチック&タカギ・ガンドー

 タンバ区、違法オハギ工場跡地。そのUNIXルームにて。傷を癒し終えたニンジャスレイヤーは殺すべきニンジャであるデスドレインを今度こそ粛清するべく、手下のハッカーたちに情報を集めさせていた。

『例のニンジャの交戦映像入手』「よし、映せ」ブウン。ニンジャスレイヤーが座る座席の前に設置されたUNIXの画面に、囚人服めいたニンジャ装束を着た凶悪な面相のニンジャが映し出される。デスドレイン。音声は無いが、下卑た声で嗤っているのが動画だけでも分かった。ニンジャスレイヤーの奥歯が軋みを上げる。

 しかし、その次に流れた映像を見てニンジャスレイヤーは驚愕に目と口を開いた。デスドレインが見知らぬ女ニンジャに攻撃を受け、負傷させられている。しかも……(馬鹿な!これは俺のカトンの完全なる模倣ではないか!)両腕と両足にカトンで編んだグローブとブーツを纏ったニンジャに、だ。

「この女はなんだ!場所を教えろ!すぐに!」プライドを大いに傷つけられたニンジャスレイヤーはがなり立てた。自分のジツを盗窃したニンジャが、自分が撤退を選択したニンジャ相手に善戦するなどと!これはニンジャスレイヤーに対する侮辱行為、及び宣戦布告にほかならぬ!

『ターゲット変更ですか?』『現在位置地下下水道と予測。少し時間かかります』『デスドレインは追跡続行?中止?』「いいから早くしろ!この女ニンジャは殺さねばならぬ!最優先だ!」『イピー』『イピー』ニンジャの怒りを受け、ハッカーたちは慌てて女ニンジャ……ドラゴンチックの捜索を始めた。

(気に食わぬ……!だがこれもまたニンジャ殺戮者としての試練……!いつの日か「初代」を、あるいはこの私を表面的に模倣しようとする痴れ者が現れることは分かっていたことだ。それが今日だった。それだけのことだ)

 言うまでも無いことであるが、ニンジャスレイヤーは自分が「初代」を真似しているだけのコピーキャットだとは微塵も考えていない。何故ならば、「初代」は自分を精神的監視するだけに留め、その行動に対して何の文句も付けていないからだ。自分の行動が「初代」にとって不都合であれば、今頃何らかのアクションを取っている筈。

(あるいは、文句を言いたくても言えないのかもな)ニンジャスレイヤーはメンポの下で笑みを浮かべる。既に自分の実力と実績は「初代」に追い付き、あるいは追い抜こうとしている。「初代」の感じている焦燥は手に取るようにわかる。

 だからといって、「初代」は下らぬ嫉妬で正統後継者である自分の足を引っ張る真似をするような矮小な存在ではない。自分が憧れ、目指し、到達した存在は、もっと尊ぶべき崇高なものなのだ。

(そのためにも、この女は殺さねばならん)ニンジャスレイヤーはモニターに視線を移す。ドラゴンチックが目にも止まらぬ速度の回転蹴りでアンコクトンの触手を弾き返している。なるほど。確かにそこそこはやるようだ。だが勝てる。問題無い。なぜならば、自分こそがニンジャスレイヤー。ニンジャを殺す者なのだから。

『位置情報特定な』『ルート表示します』そこでちょうどハッカーたちの調査が終わり、ニンジャスレイヤーの持つ携帯UNIXにドラゴンチックのリアルタイム位置情報が送られてきた。ニンジャスレイヤーは「忍」「殺」の字が書かれた黒鋼メンポからジゴクの瘴気めいた息を吐き出し、工場から姿を消した。

フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その9)へ続く