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忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その10)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◇3ターン目

 1:ブラインド(20)

 2:ニンジャスレイヤー(10)
   遭遇判定振り直し可(恒久)

 3:デスドレイン(10)

 4:ドラゴンチック&タカギ・ガンドー(8)
   遭遇判定振り直し可(恒久)

 5:ブラックヘイズ(8)
   遭遇判定振り直し可(恒久)
   ニンジャスレイヤー、ドラゴンチック、ニンジャスレイヤー?と遭遇した際、
   そのターンをブレードブレイカーに横取りされる。

 6:チキンハート(7)
   ニンジャスレイヤーに対しダイス+2
   デスドレインに対しダイス+2

 7:グロウコブラ(7)
   ニンジャスレイヤーに対しダイス+2
   デスドレインに対しダイス+2
   ニンジャスレイヤー、ドラゴンチック、ニンジャスレイヤー?と遭遇した際、
   そのターンをブラックヘイズに横取りされる。

 8:デスクランチ(7)
   ニンジャスレイヤーに対しダイス+2
   デスドレインに対しダイス+2

 9:リストレイント(7)

10:ニンジャスレイヤー?(6)

11:ブレードブレイカー(5)

12:セルフハーム(5)
   遭遇判定振り直し可(恒久)
   デスドレインに対しダイス+2

:???(-1)(このキャラクターはダイスでは選ばれない。) 
遭遇ブラインド:1d12 = (10)
ニンジャスレイヤー?

「フーッ……!フーッ……!」縄張り争いに負けた獣のような荒い息がタタミ敷きの部屋に響く。壁に掲げられた『忍殺』のショドーは普段ならニンジャスレイヤーの精神に誇りと闘志をもたらすものだが、今この時はそのどちらの感情も傷付いたニンジャ殺戮者に与えてはくれなかった。

『ドーモ、アブナイ・インシデントでしたね』『今の女ニンジャは卑劣ですよ』ニンジャスレイヤー・シンジケート構成員、ハッカーのナブケとエビウミがIRCチャンネルにログインした。『アイサツ作法の無視。虚言を用いての揺さぶり』『いずれも典型的サンシタの手段です。ああいった手合いはそのうち自滅しますよ』

「そのサンシタにいい様にやられたのが私だ。そして奴に引導を渡すのは私の役目だ。ニンジャスレイヤーである、この私のな」『謙虚!実際奥ゆかしい!』『責任感がある!先代との違い!』ナブケとエビウミが安全地帯から称賛の言葉を投げる。

(フン、ニンジャスレイヤーの偉大さも過酷さも知らぬ連中が好き勝手にほざきおって)ニンジャスレイヤーはそう思いながらも満更でもない。『所在もすぐに掴める。罠にハメる。次は勝てます』「当然だ」『今は無理をせず宿屋で体力回復。万全の状態でアタックしましょう』「分かっている」『そうそう、あんまり無理しちゃダメだよ』新しいログイン者。アカウント名はカツラ。

『カツラ=サン、今の態度は少々馴れ馴れしいですよ』ハッカーの中でもリーダー格のナブケがカツラを咎める。「……別に気にしてはおらん。それより情報収集を進めておけ」ニンジャスレイヤーは口ではそう言いながらも眉間に力が入り、皺を寄せている。これは神聖存在である「ニンジャスレイヤー」に対する不遜に怒っているのであって、断じて個人的な感情に由来する怒りではない。

『メンゴメンゴ。ところでこの子、カツラちゃんっていうんだ』

「なんだと?……!」その発言の意味をニンジャスレイヤーはすぐに理解した。そしてその結果何が起こるのかも、ニンジャスレイヤーは即座に察した。彼はアグラ姿勢から発条仕掛けめいて飛び上がり、出口目指して駆け出した。『あれ?カツラ=サンのIPが……』『おかし10いな10電波10が001110……』『3…2…1…カブーム!』

 KABOOOOOOM!

ブラインド『対抗判定:ニューロン+ジツ』:
19d6>=4 = (2,1,1,2,3,5,4,4,5,4,3,5,3,1,2,2,1,6,4 :成功数:8)

ニンジャスレイヤー?『対抗判定:ニューロン+ジツ』:
10d6>=4 = (5,5,4,5,1,3,3,3,2,4 :成功数:5)
ニンジャスレイヤー?体力7 精神力3

◇◇◇

「ンンー、逃げられちゃった。ザンネンムネン」

 ネオサイタマ繁華街、カラオケ・ステーション『タラバー歌カニ』の個室内。ブラインドは茹でたカニの脚の殻をしゃぶりながら呟いた。24時間ハッピータイムの映像を流しているカラオケ・システムのモニターは、今まさに焼失しかけている『忍殺』のショドーを映し出している。

 ブラックヘイズと別れた後、ブラインドはこの『タラバー歌カニ』に訪れ、茹でたカニを数皿食べ、何曲か歌ってスッキリし、利用時間を延長し、カニをもう数皿食べ、カラオケ・システムのUNIXを利用して広域ハッキングを行い、ニンジャスレイヤー・シンジケートの一員であるカツラを発見し、そのニューロンを焼き切り、IPを奪い取ったのだ。

 彼女はそのままニンジャスレイヤーのアジトにアクセスし、そこにあったUNIXをファイアウォールごと爆発させた。それによって今度こそニンジャスレイヤーを仕留めようとしたが、あと少しといったところで失敗した。ブラインドはソファに寝転がり、テーブルに設置されたカニ・ボタンを押す。キャバァーン!

「そういえばニンジャスレイヤー=サン、なんかちょっとイメチェンしてたかな?それにナンシー=サン以外にもハッカーの仲間が出来たんだ。スゴイなー」まるで見当違いのことを言いながら、ブラインドはベルトコンベアを流れてきたカニに醤油をどばどばとかけて貪った。

◇◇◇

遭遇ニンジャスレイヤー: 1d12 = (11)
ブレードブレイカー

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」右!左!右!左!マウントポジションを取ったニンジャスレイヤーの拳が雨のように撃ち込まれ、リストレイントが防御のために掲げた腕に巻かれていた拘束具が破壊される!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」腕の拘束具を破壊されたリストレイントの顔面にニンジャスレイヤーのパウンドが突き刺さる!右!左!右!左!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」ジンジャ・カテドラルの石畳と死神の拳に頭部を挟み撃ちにされ、リストレイントは意識を手放しかける!

 ……だが、その時だ!「イヤーッ!イヤーッ!……!」ニンジャスレイヤーが不意に拳を止めた!「イ、イヤーッ!」「ヌウッ!」カジバヂカラ!リストレイントはその場でブリッジ姿勢を取り、ニンジャスレイヤーを打ち上げてマウントポジションを脱出!傭兵はそのまま連続側転を行い、カテドラルの敷地内から脱出する!

「……」ニンジャスレイヤーはリストレイントの後を追わなかった。彼の視線は逃げ行くリストレイントの背中ではなく、ジンジャ・カテドラルの本堂の方へ向けられていた。「……」ニンジャスレイヤーは静かに、しかし決断的な足取りで視線の先へと向かう。

 ザシ……ザシ……。ニンジャスレイヤーの足音だけがカテドラルの敷地内に痛々しく響く。歩みを一歩、また一歩と重ねるたび、空気が徐々に粘性を帯びていくかのように濁っていく。それは殺気のためだ。ニンジャスレイヤーと本堂に潜む何者かの殺気が合わさり、空気を穢しているのだ。

 ザシ……ザシ……。ニンジャスレイヤーは本堂入り口のショウジ戸の前に立つ。薄いショウジ戸の奥に、敵の影がかすかに見える。ニンジャスレイヤーはその相手を知っていた。ニンジャスレイヤーがショウジ戸を開けようと手を伸ばした……次の瞬間!

「イヤーッ!」KRAAAAASH!「イヤーッ!」ショウジ戸が内側から粉砕され、破片がショットガンめいてニンジャスレイヤーに飛来する!ニンジャスレイヤーは緊急ブリッジ回避からの連続バック転で距離を取り、鋭くジュージツを構えて姿を現した敵と対峙する!

「ようやく見つけたぜ。あのアホ女、傭兵越しの連絡なんぞ横着な真似しくさりやがって……」その男はゴキゴキと首を鳴らし、右手に持ったカタナの峰で肩をトントンと叩いた。彼はこのカタナでショウジ戸を破壊した。切断ではない。破壊したのだ。男はアイサツした。「ドーモ、ブレードブレイカーです」

「ドーモ、ブレードブレイカー=サン。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはアイサツを返しながら胸の内でドラゴンチックに詫びた。この男は片手間で相手取れるニンジャではない。2人のニンジャは殺意に満ちた視線を相手の視線とぶつけ合い、互いの出方を伺った。そしてジンジャ・カテドラルの荘厳なる鐘の音が鳴り響いた瞬間!

「「イヤーッ!」」鐘の音を戦いの開幕を告げるゴング代わりとし、ブレードブレイカーとニンジャスレイヤーはタタミ10枚の距離を一瞬でゼロにして激突した!

ニンジャスレイヤー『対抗判定:カラテ』+
『◉◉タツジン:ジュージツ(2)』+『◉鉄拳(2)』:
20d6>=4 = (2,6,5,5,4,6,3,5,6,5,5,1,1,4,4,1,6,3,6,4 :成功数:14)

ブレードブレイカー『対抗判定:カラテ』+
『◉◉タツジン:イアイドー(2)』+『イチガツ(カタナ)(2)』:
21d6>=4 = (4,6,6,5,6,6,3,2,6,3,3,3,6,5,3,2,3,4,2,1,5 :成功数:11)
ブレードブレイカー体力16

◇◇◇

遭遇デスドレイン: 1d12 = (5)
ブラックヘイズ
oh……ブッダ……

『モシモシ!聞こえてるのかブラックヘイズ=サン!死神に追われている!至急応援を頼む!』「聞こえているし、聞いている。そちらこそ俺の話を聞いているのかね」『なんでもいいから急げ!奴が来る!』「アイ、アイ」

 リストレイントからの救援要請を受けたブラックヘイズは指定された合流地点へ向かってビルからビルへと駆けていた。互いに協力はしない代わりに足の引っ張り合いもしないというスタンスを取っていた筈だったが、死神に魅入られたとなれば仕方のない事であろう。

「可能ならば初手の一撃……アンブッシュで終わらせることが出来ればそれが理想だが……」(アイエエエエエ)「ム……」ブラックヘイズの思考を女の悲鳴が中断させた。声はビルの地下に繋がる階段の奥から。階段横に設置された電子看板には『サイバーゴスクラブ・ミミキモチ』の文字。

(アイエエエエ……)(アバーッ……!)悲鳴に混じって聞こえる断末魔。徐々に後者の方がその数を増やしていく。「……」ブラックヘイズは葉巻を取り出し、メンポの隙間に差し込んで火を点ける。

◇◇◇

「アイエエエエエ!」「アバーッ!」サイバーゴスクラブ、ミミキモチの中は地獄絵図と化していた。蛍光ピンクと蛍光ブルーのレーザーを放つ照明器具はいずれもどす黒い暗黒物質と血と臓物のカクテルに塗り潰され、ミミキモチの象徴とも言えるホールの四隅に設置された巨大スピーカーから流れる優しいリラグゼーション音楽は人々の絶叫に掻き消された。

「アアァアーーー」この悪夢的光景を生み出した張本人……デスドレインはバーカウンターの椅子に座り、アンコクトンの糸で捕えたサイバーゴスたちにぎこちないダンスを踊らせながら、適当にブレンドしたアルコール飲料を口に流し込んでいた。

「アバーッ!」「アイエエエ……!」また一人、ダンスを踊らされていたサイバーゴスがアンコクトンの糸によって手足と首を引き千切られ、黒い汚泥に沈んでいく。生き残ったサイバーゴスたちの顔が恐怖に引き攣る。その頭部から伸びたLANケーブルはそれぞれ隣り合ったゴスたちと直結されている。これによって仲間の死がニューロンを通じて伝わってくるのだ。なんたる恐るべき悪魔的趣向!

「アバーッ!」「アイエエエエ!」「アバババーーッ!」また一人が首を千切られて死亡!その影響で隣のゴスが発狂死!残ったのはついに一人!学校の制服を着てサイバーサングラスを着用した少女のみ!

「へへへ、オメデトー」デスドレインは小さく数回拍手した。青褪めた少女の顔に、助かるかもしれないという僅かな希望の色が宿る。「じゃ、トモダチに合わせてやるよ」デスドレインは暗黒糸で少女の四肢を、首を締め上げる。見せつけるように、ゆっくりと。少女の儚い命が絶望の中で潰えようとした……その時である!

「イヤーッ!」「ア?」ニンジャシャウトがホール内に轟き、デスドレインは右手に感じていた暗黒物質の手応えを失った。デスドレインが億劫そうに首を動かすと、ホールの入り口付近にガンメタル色の装束を着たニンジャが黒色の網に包まれた少女を抱えて立っていた。

「なんだァ?ヒーローのお出ましかァ?」「あいにく俺は無償で人助けはせんタチだ」ブラックヘイズは葉巻をメンポから外し、ゆったりと紫煙を吐いた。「アンコクトン・ジツ、だったか。なるほど厄介なジツだ」

 ブラックヘイズ、そしてリストレイントの2人はリー先生からの情報提供でこの恐るべき死刑囚のに宿ったソウルの名とジツの力を把握していた。神話級ニンジャ、ダイコク・ニンジャ。リー先生からは余裕があるなら捕まえておくように、とも言われていたが。「ちと、割に合わんな」ブラックヘイズは葉巻を指で弾いた。KABOOOOM!

デスドレイン『対抗判定:ニューロン+ジツ』+『★アンコクトン触手(1)』:
17d6>=4 = (3,3,6,2,3,5,2,4,3,3,3,1,6,4,6,4,1 :成功数:7)

ブラックヘイズ『対抗判定:ニューロン+ジツ』:
12d6>=4 = (4,5,1,2,3,4,1,5,1,4,4,4 :成功数:7)

 ……葉巻に偽装したグレネードの爆風によって巻き上げられた粉塵が晴れた時、ブラックヘイズと少女は既に姿を消していた。ミミキモチのホールには死体の海と、暗黒の樹木。やがて樹木の表皮がボロボロと剥がれ落ち、中から無傷のデスドレインが現れた。

「ハァー」デスドレインはブラックヘイズを追いかけるでもなく、逃げられたことに腹を立てるでもなく、バーカウンターの上に行儀悪く寝転がって伸びをした。「なんだかなァー、何か足りてねえんだよなあ」デスドレインは両手を頭の後ろで組み、足をカウンターの上から出してぶらぶら揺らす。

「何が足りてねえんだろう……酒?女?それとももっとド派手に暴れて……いや、そっか。そうだよ」デスドレインは何かに気付き、勢いよく身を起こす。「せっかくネオサイタマに来たんだから、誰かに案内してもらわねえと。出会いだよ、出会い。イチゴイチエだよ……へへへ」

 デスドレインは姿の見えない誰かに話しかけるように呟き、出口へと歩いていく。ホール内を満たしていた暗黒物質がずるずるとスライムめいてデスドレインの身体を這い上っていき、顔中の穴から彼の体内へと吸い込まれていった。

◇◇◇

フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その11)へ続く