掌編小説「夜景」
夜景がとても綺麗。
都会の夜景とは違って地元は光がまばらだ。
建物が照らし出されることもない。
でも、そこに誰かがいるんだろう。
誰も乗っていない電車に揺られながら、
星のように光る街の明かりをただ見とれている。
もうすぐ終点だ。明日はどうしようか。
そんなこと考えもせず、ただ見とれている。
君はこんな夜景の中に身を隠しているのだろうか。
私がこの暗闇に身を隠しても見つかってしまうだろうか。
昔はこんな明るくなかった。
夜道なんて歩けたもんじゃない。
今は違う。
歩く道を誰とも知らぬ光が照らしてくれる。
捜し物はすぐに見つかってしまう。
こんな夜道でさえも。
私が消えようとしても、光は容赦なく照らす。
誰かにとって、それは救いで、あるからこそ、そこにある。
「ああ、なんで、」
そう思っても、その光を壊せやしない。
遠くに見えるあの光は、いつか誰かの命の火。
手折ることなど、出来やしない。
誰かの優しさが私を惨めに救い出してくれる。
それがどうしようもなくやるせないんだ。