「祈り」によせらせた曲におくる
先日書きました水底のおはなしについて。
水底は、私自身にとってはいろんな影響を受けて私の好きな要素を詰め込んでいますが、その特異性故に、実際に読まれた時にどんな反応が出てくるのか不安であったし、覚悟もしていました。分からなくても当たり前だと思って、分からなくても大丈夫だと思いながら要素をちりばめ、ファンタジーとしての部分を割り切りながら書いていました。
しかし結果的には、ありがたいことに、曲を書いていただいたり、絵を描いていただけたり、感想を伝えていただいたり、とても恵まれた場面となりました。
今までの三曲は、創造にまつわる曲であり、特に柱となったものを集めました。今回は、そうして生まれた創造物から生まれた曲について、創造の先についてです。
その曲がこちら。
119話を読んで浮かんだということで。思えばなんだかんだ長いお付き合いになってきたようで。そもそもはマジバケでの繋がりだというのに、不思議なもので。
なんというか、曲について下手に言葉にするのも嫌だなあと思うのですが、なんでしょうね……長く続けていると様々な出来事に出逢いますが、書いて良かったとしみじみ考えさせられるきっかけになりました。
最初のシンプルな旋律が、どんどん、低音と高音に大きく広がっていき、動きも増えていって、ずっとゆったりとしたリズムなんだけれど厚みは増していって。和音による響き、ピアノの音がしずかに、しかしたえることなく心を揺らす。ピアノというのは、なんと豊かな楽器なんでしょうか。激しくも寂しくもあれるし、たった一つの楽器で同時にたくさんの音を発して響いていく、まあ、当たり前っちゃ当たり前のことなんですけど、改めて豊かな楽器だなあと思うのです。
はじめ聴いた時はあらゆる感動(単純に曲がたいへん良い、そしてその良い曲が自作からインスピレーションを受けたというのが信じがたい・ありがたい・嬉しいなどなど、そしてベースラインとして連続更新を終えたばかりで昂ぶっておりあらゆる感情がオーバーフロー)で思わず落涙してしまいました。泣くまでいたることってあんまり無いですよね……。いただいた直後はただただ驚いて、それからリアルで深呼吸を繰り返して、指を震わせながら再生ボタンを押して、ピアノの繊細な旋律が聞こえてきて、あとは聴き入るばかりで。うまく言葉にできないけれど感動していて。
今まで三曲この場を借りてご紹介してきましたが、この曲たちに限らず様々な曲に支えられたり影響を受けたり発想元にさせてもらったりしてきました。私自身、そんなに音楽には詳しくはないし世間の歌にもめちゃくちゃ疎いですし、プレイヤーとしては向いていないなと思うこともあったりして足が遠のいて随分になりますが、音楽を通じた楽しかった瞬間のことはよく覚えています。それは身近なカラオケだったりするし、ポケノベの音楽好きとのセッションだったりするし(ピアノ囲んだりしてね。覚えてますか?)、マジバケの音楽祭だったりするし、もっと個人的な思い出だったりもします。そして、自作に贈られた曲たちだったりする。あるいは、影響を与える・与えられたという意味では自分の文だったりするし、動画だったりするし、イラストだったりするし、動画を考える妄想だったりします。他の人の小説や、誰かの本だったりもするわけです。
文も絵も、映像も音楽も、ゲームも、広告も、様々な創造物は、表現方法が異なっているだけで根本的な部分では同じだし、心を震わせる驚くべきパワーを持っていて、その瞬間というのは作り手のたましいと受取手のたましいが強く共鳴したからに他ならないような気がしています。
Twitterで繰り返していますが、私が小説を書くうえで理想としている文章は、「読み手の想像・イメージが文章を超えて広がっていく」ものです。私も読み手としてさまざまな文を読んでいますと、ものすごく想像力を刺激される場合もあればまったくそうでないつまらない場合もあります。技術も問われますし書き手からしてみれば最終的には技術でどうにかするしかないんですが、結局のところ文章の価値は読み手の感性や好み、その時の精神状態に大きく左右されます。なので私の掲げる文章の理想型は、私一人では成り立ちません。作者自身が大きな読者の一人でありつつも、他者の感性に触れることを目指して書いていたいと思っています。
そのうえで、情景描写を厚く書き特定の心理描写を抑えた続キリ編の、とりわけ幻想的な部分でありなにか一つ光が見えたようなこの場面がこうして誰かの想像力を刺激し、新しい創造がなされたというのは……公開して人目に触れて生まれる奇跡というものは、すごい。書き手だけでは決してできないことです。私一人では作り得ない世界の拡がり。なので、人の繋がりというか、作品を通じた交流というのは……力が満ちているのだと実感しています。
大好きな曲であり、大切な曲です。
敬愛をこめて。
たいへん喜びます!本を読んで文にします。