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とある「小説書き」の場合【小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問】

 小説を書く人は、ある日、突然生まれる。

 人が、初めて誰かに読まれるための作り話を書き始めたとき、それは「小説書き」が生まれる一歩手前だ。まだ「小説書き」ではない。ではいつ生まれるのか。たとえ短くても、書き始めた作り話を最後まで書き終えて最終の句点を打ったとき、その人は「小説を書き」になる。最終の句点を打った作り話は「作品」と呼ばれるようになり、そうやって生まれたばかりの「小説書き」は、さらなる自分の満足を求めて新たな作品に着手する。

 わたしがそうだった。小説を書くことは簡単ではないのに、つらいことが多いのに、白髪が増えるのに、なぜか書き続けている。さながら狂人である。

 同じ小説書きとして、noteで健筆をふるっている青豆ノノさんが、そんな人たちに向けて【小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問】を考案して下さった。これは青豆ノノさんの「孤人企画」だという。(ユニークなネーミング!)

 そこには、わたしが答えられそうな質問が並んでいた。青豆さん自身の答えと重なるものもあった。質問に答えながら、自分は紛れもなく「小説書き」なのだと思った。狂人、いいではないか。この素敵な二十問のすべてに答えられるわたしは、誰かにそんな称号を与えられたとしても喜んで受け入れるだろう。

 この二十問の最初から最後まで、心から楽しませて頂いた。青豆ノノさん、ありがとうございました。

◇◇◇

【小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問】

回答 海亀湾館長


Q1、あなたは、目的なく大きな書店へ立ち寄った時、まずはどのコーナーへ行きますか?

大きな書店であれば、もっとも確認したいコーナーは海外文学の品揃え。


Q2、好きな本の装丁を見せてください。もしくはその本のタイトルを教えてください。

『氷炎』髙樹のぶ子 講談社 (1993)

撞着語法による秀逸な題名と、表紙の繊細な美しさに震撼した。

装幀 菊池信義
装画 竹内浩一
着氷の白が引き立つ美しい装画



角度によっては文字が青く輝く
見返しの部分は金箔のような輝きをみせる


Q3、内容を知らない小説(文庫本)を手に取ったら、まずどこをチェックしますか。

  • 文庫の帯と裏表紙などに記載された本の紹介文を隈無く読む。

  • 書き出しを読む

  • 書き出しの文章が自分好みだと感じたら、あとがきや解説にも目を通す。


Q4、もう死んでしまいたいと思う夜に書いた物語。誰に読んでもらいますか。

正気に戻ったあとの自分にまず読ませたい。


Q5、パートナー、もしくは親友が書いた官能小説を読んでみたいですか。

読みたい。


Q6、自由に使える20万円、作家として何に使いますか。

東京を主とした懐かしの関東を訪れて、自分の中で止まっていた時間を動かしたい。


Q7、小説の執筆に没頭している時、体のどの部分を使っていると感じますか。

脳内スクリーン。
使いすぎると本当に脳が痺れてくる。


Q8、小説を書く上で、自分のこういう特性(性格)がプラスに働いているなと感じることがあれば教えてください。もしくはその逆。マイナスに働いていると感じること。

自意識過剰。妄想癖。むっつりスケベもプラスに働いている。


Q9、一週間だけ改名して新しいアカウントで好き勝手書きます。筆名と書く小説のジャンルを教えてください。

陸亀湾館長に改名して、毎日違う異性に振り回されてくたくたになる嘘の一週間を書いてみたいが、読む人がまったく訪れない寂しいアカウントになるだろう。


Q10、小説とエッセイを交互に投稿しているあなた。圧倒的にエッセイの方が読まれています。そんなあなたは他人から小説家と認識されたいですか?それともエッセイスト?

小説書き。(まだ小説家とは名乗れない)


Q11、体の一部を美容整形してその経験をもとに小説を書くなら、どこを整形しますか。

耳。
坂口安吾の『夜長姫と耳男』に登場する耳男のような耳にしてもらい、その耳を切り取られそうになる状況を小説にしたい。


Q12、作品を発表したとき、この人が読んでくれたら嬉しい、と頭に浮かぶ読者はいますか。それは誰ですか。

まずは毎回読んで下さるフォロワーの読者さま全員。


Q13、素敵な喫茶店でコーヒーを頼んだら折りたたんだメモが添えられていました。メモにはなんと書いてありますか。

「次の謎解きをすべて正解したら、お好きなパフェかケーキをサービスいたします。第一問……」


Q14、小説のアイデアが浮かぶ瞬間の状況を教えてください。

まったく関係のないいくつかの事象が有機的に結びついて、今まで見たこともない形となって眼前に展開するときが稀にある。書ける! と思う。


Q15、最高に辛い出来事と最高に幸福な出来事のどちらかを数日後に経験するとしたら、作家としてのあなたはどちらを選びますか?

一周回って最高に幸福な出来事を選択。


Q16、書くことに集中して疲れた時に5分休憩するとしたらなにをしますか。

執筆中に流していた音楽のCDを交換する。


Q17、一ヶ月の監禁生活の中で長編小説を書き上げなければなりません。最低限の生活必需品の他に三つ、好きなものを持ち込むことができます。なにを選びますか。

(ノートパソコンとスマホは用意されているようなので)

  • 書籍

  • コーヒー

  • 監禁場所と外を自由に出入りできる人馴れした猫がいると嬉しい


Q18、執筆のために取材できるなら誰に、もしくはどんな場所で話を聞きますか。

  • 救急救命士

  • ライフセーバー


Q19、新たな物語を生むために一日だけ透明人間になるなら何をしますか。

小、中、高、大学を次々とハシゴして、現代の授業風景や休み時間や昼食時や放課後などを、生徒のみならず教職員も含めてつぶさに観察したり会話を盗み聞きしたりしたい。


Q20、あなたは小説で賞を受賞し、本格的に作家デビューが決まりました。今まで執筆してきたことを伝えていない友人や家族にどのように伝えますか。

最初は自分から積極的に知らせることはしないが、風の噂としてデビューが広まるものであるなら、どのように周囲に伝搬していくものなのか知りたい気持ちがある。

◇◇◇

 以上、退屈な回答にならなかったことを祈りつつ、ここまで読んで下さった方に心からのお礼を申し上げます。

 ありがとうございました。


追記
記事内で紹介した『氷炎』の本は、わたしの日頃の管理のいたらなさで日焼けしたり変色したり染みになっていたりしています。本来はもっと白くて綺麗な装丁になっていたことを申し添えておきます。




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