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松ぼっくりを食べた(日々のトコトコ日記)

生まれて初めて松ぼっくりをたべた。
通学路やよく遊ぶ山に生えている、なんとなく食べれそうな感じのする植物や花を食べてみるような子どもだったけど、松ぼっくりを食べてみようと思ったことはなかった。

食べたのは、ロシアの松ぼっくりの蜂蜜漬けだった。
小指の爪くらいの大きさの小さな小さな松ぼっくりだった。新芽みたいなものなのかもしれない。
くれた人に、どんな味がするんですか?と尋ねると、ベリーっぽい味、そのあとヤニヤニするよ。と言われた。
ぱくっと食べてみると、確かにラズベリーのような味がした。しばらく噛むと口の中がヤニヤニした。けれど、強すぎるわけでもなく、不思議とおいしかった。
もっとちびちびはちみつをつけながら食べるものかもしれない。
はちみつをチーズにつけても合いそうだった。
ジントニックを作って飲んだ。
ジンと松ぼっくりは合っていた。

ずっと前に西新宿で働いていた時に、時々ランチを食べに行くロシア料理のお店があった。
職場のあるビルから少し離れていたからお昼休みの時間にはぎりぎりなのだけど、すごく疲れたり気分が沈んだ時は、ひとりで小走りでそのお店に行ってランチを食べていた。私はそれをレスキューランチと呼んでいた。
今は移転してしまったそのスンガリーというお店は、その頃はスバルビルの一角にあって、穴蔵のようなそこで壺焼きやボルシチを食べるとお腹の中が温かくなってちょっと体が楽になるような気がした。
食後にバラのジャムが添えられたロシアンティーを飲む頃にはお店の扉を開けた時の悲壮感が薄まっていた。
いつかロシアに行ってみたいなと思っていたら、ウラジオストクは飛行機で2時間半で行けるんだよと旅慣れた人に教えてもらって、予想よりずっと近いことにウキウキした気持ちになっていたら、ぜんぜん国外に行けそうにない今になってしまった。
松ぼっくりを食べながら、そんなことを思い出した。




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