作品「冬」。もう少し考えたい作品です。
冬
昨夜の内に線引きされた
秋と冬の境目を
曖昧にしてはならないと
季節の神様に叱られた
遅く咲いた秋色は
線引きの外にそっと置いた
これから感受性が息づく
そんな場所も
冷たい風は
吹きあがるたびに
鋭利な刃物になってくるから
それでは遅いのだろう
庭の冬薔薇は
棘を終い込むのを拒んで
ときどき季節の背中を刺す
庭の隅の方からは
喉元に絡まる咳がする
日本の四季は
季節の不具合の集合体でもある
特に冬になると
指さす辺りは
両の手の指では足りない
*
日本から
遠く離れた国では
今の線引きで満足できないと
ミサイルや戦車砲や
りゅう弾砲が
飛び交っている
春が撃ち落とされ
夏が撃ち落とされ
秋が撃ち落とされ
冬までも撃ち落とされるから
鳥は空を飛べない
人々は飢えている
飢餓を救う手段はないのだろうか
国同士が歩み寄り
線引きし直された場所を戻す
幾分のマイナスは
話し合いで
*
昨夜の内に線引きされた
秋と冬の境目を
曖昧にしてはならないと
でも曖昧にしなくてはならない
そんな場所も
この世界にはある
一つ一つの季節が
窮屈になってはならないが
何か一つ解決できれば
そう 強く思う
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