思わぬ成果

子どもが幼い頃、旅行から帰ってくると、見違えるほど成長している部分を発見して、毎度驚いたものです。

ほんの少しだけ日常から離れ、知らない環境に身を置き、初めての食事を口にして、

たったそれだけのことです。

けれど、そんなことが、どれほど人に刺激を与えるのか。

大人のわたしでも、もちろん気分が恐ろしく変わって、続きの日常が新鮮に感じられたりはするのですが、

そうした、目に見えて何かが成長するような手ごたえまでは感じにくいような気がします。

ところが、９０歳になった母は違います。

7月の旅行でそれは感じていました。

これほど、元気がでるのなら、また旅行を企画しなくてはと本気で思った程、母はやる気、といいますか、生きる力が湧いてきたような気がするのです。

嬉しかったのは、自分でシャワーが浴びられるようになったことです。

この作業が、わたしの暮らしから消えたことで、どれほど自由になったことか。

加えて、日々運動を続け、まるでアスリートのように暇さえあれば体を動かすようになりました。

そして、先日の旅行は、さらに母に変化をもたらしました。

聴力が衰え始めているのは少し気にはなりますが、

動きが機敏になったような気がするのです。

今では、一時間ほどかけて一人で入っていたシャワーが、45分ほどでドライヤーまで済ますことができるようになりました。

それから、寝相が悪くなりました笑。

両足と臀部に筋肉が付いたおかげで、寝返りが自由に打てるようになったためでしょう。

我が家にやってきた当時の母は、一晩中、左足を下にして寝ていました。いつも同じ向きで寝るので、寝るのも一苦労でした。

ところが、今では、夜中や朝方に母の部屋を覗くと、寝ている母が驚くほど動いているのです。まるで若者のようにクルクルと向きを変え，ちょっとだけ寝相が悪かったりして、

なんだかほほえましいのです。

今日は、

「あら、黒い髪が生えてきたわ、見て！」

と嬉しそうです。

見てみると、おでこの生え際の辺りに、黒い伸びかけの髪があるような、ないような。それでも、本人が喜んでいるのなら、それはなによりなのです。

旅はきっといいのです。

※最後までお読みいただきありがとうございました。