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本気には敵わない

現在、少し早めの夏休み中。

実は今回の旅行は母も一緒だ。

凡そ1ケ月半前、母に行きたい場所を尋ねてみた。

すると、富士山と箱根に行きたいとのリクエストがあった。とはいえ、その頃、母は家の中で転倒し腕を骨折していたはず。

「行けなかったら母さんはショートステイね」

とも告げた。介護をしている方ならご存知だとは思うけれど、ショートステイは介護施設に短期間だけ泊めてもらうシステム。

わたしにはありがたくても、

「楽しかった?」

と聞いても毎度母は、笑っているだけ。どんなに親切にしてもらっても家がいいのだ。

ちょっとドライかな?と思うけれど、夫にもわたしにも気分転換が必要なのだ。

母はもう90歳、昨年寝たきりになり、わたしも絶望するほど忙しかった。母は、

「こんなことになってごめんね」

を繰り返していた。

けれど家中に手摺をつけ、掴まれる簡易の柱を数本立てて介助を繰り返していると、なんと一人でトイレに行けるようになった。

それから、運んでいた食事をダイニングで摂れるようになり、

一緒に風呂に入れるようになった。

転倒を繰り返し、何度も振り出しに戻ったけれど、その度回復した。

これは母の努力の賜物としか言いようがない。今、母は体に筋肉がついている。リハビリの先生に褒められて頑張っているのだ。

そして、旅行にこれた。

なにしろ、旅好きな人だ。昨日も、

「わたしはこの富士山をどの方角から眺めているの?」

と尋ねられて笑った。知りたがりなのだ。そして本物の旅好きだ。


今回は快気祝いを兼ねて、観光はなしでホテル時間を楽しむことに。

わたしたちはお茶をしたけれど、母はお昼寝。

温泉に誘っても、寝てるわと笑。

そして今、夕食を終えて、母と温泉に浸かりリラックスしたところ。

もう母はわたしの手を振り払わない。温泉でも、車の乗り降りでも右手を出してしっかり握る。

親子って面白い。

ちょっとしたことに随分傷ついたりしたけれど。

いま、わたしは母に生き方を教わっているのかもしれない。

父も最後まで生き抜いたけれど、母もきっとそうなのだろう。

今夜は夕食は完食だった。


※最後まで読んで頂きありがとうございました。

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