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ジャーナリストとメディアの役割


昨日、ジャニーズ事務所の記者会見の様子を目にして、もやもやとした気分が残り、会社法をベースに、あの事務所の人事で一体何が起こっていたのかについて書いてみた。


その記者会見を受けて、今回の騒動の引き金になったBBCのドキュメンタリー番組『Predator - The Secret Scandal of J-pop』を配信したBBCはいったいなんといっているのだろう。

BBCは、

ジャニー氏は性犯罪者だった。彼はスターメイカーであり、J-POP界の大物たちの指導者であり、権力と成功、何百人もの少年たちの夢を握っていた

と書いている。

そのBBCが、ジャニー氏とハリウッドのHarvey Weinsteinを並べて書いている。実はわたしも同じことを思った。なぜなら、今回の事件が米国のエンターテイメント界でおきた事件と実によく似ているからだ。

世界中を震撼させたその事件は、映画『She said』で2022年に放映されている。

それは、米国の映画界で起こった、前代未聞の性暴力事件だ。


その加害者であるハーヴェイ・ワインスタイン氏は、強姦罪で有罪判決となり投獄され、確かハリウッドから追放されている。

けれど、BBCではジャニー氏について、

疑惑のいくつかは民事裁判で証明されたが、彼が起訴されることはなかったことを忘れてはならない

と述べている。

わたしは法律家ではないけれど、常々、法律とは、その国の特色をベースに作られていると捉えている。なぜ起訴されなかったのかについては、調べていなくて申し訳ないけれど、それでも、米国と日本、欧州と日本とでは、法律が異なることを忘れてはいけない。

わたしの印象では、日本の法律、中でも民法は、いまだに封建的な色が濃く残る。その典型的なケースが夫婦別姓問題だ。日本では、夫婦が別姓を名乗ると、古き良き家族の形が損なわれるという考えが今も根強い。その中に、子どもは結婚してこそ生まれるべきだという考えも含まれる。

そして、BBCでも、

日本の性的虐待に対する恥辱と沈黙の文化もまた、なぜこのような大規模な虐待がこれほど長く続いたのかを説明する要因のひとつである

と書いている。

けれど、わたしは以前観た『She said』で、この部分では、若干BBCとは異なる印象を抱いている。

たとえ自由の国、米国であっても、性的被害者は恐ろしく傷つく。そして、被害者自身が自分を責め沈黙を守る。その人間の心を熟知した、卑怯でパワーを持つ人が、そこにつけ込み、人をコントロールしようとするのがこうした事件なのだと思う。

ニューヨーク・タイムズ紙は、超大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件の告発記事を出した。 

そこから、世界は大騒ぎになった。

興味深いのは、大手メディアではあるけれど、このプロジェクトに関わっていたのはわずか4人。実際に被害者に会い、記事を書いたのは若き2人のママジャーナリストだ。その記事が潰されていたら、この事件は世には出ていない。

それでも世に出たのは2017年で、まだ最近のことだ。それまでこの事件は噂はあっても誰も追求できていなかったということ。

そう、日本が特別ではないことが、このことからもよく分かる。

米国であっても、こうした事件はなかなか表には出ない。それほど、性被害者は心に深い傷を受けるということだ。

だからこそ、この2つの事件は、よく似ている。

今回、BBCがジャニー氏の報道をしたけれど、その情報を収集したのも若き2人のジャーナリストだった。その一人は、幼き日を日本で過ごしたイギリス女性。その人はジャニーズが好きだったそうだ。さらに、もう一人の男性も日本へやってきて被害者に直接会って証言を集めている。そして作られたのがあの報道番組だったのだ。

そう、性被害者は自らは決して語れない。それは日本だけではないということだ。そして、どこの国にも、それはおこり得るということ。

だからこそ、ジャーナリストを支えるメディアが必要なのだ。横並びの報道では、決してこのような告発はでてこない。

それでも、日本には、性被害者個人が抱える恥辱と沈黙意外に、社会全体にそうした考えを強要する空気が今もある。それが、被害に遭ったのはあなたにも非があったにちがいないという圧となり、被害者を再び大きな力で苦しめることになる。

今回、BBCは、新社長になった東山氏に対して、

東山氏自身も、性的違法行為の疑いで追及を受けている。 この申し立てに対する彼の反応は、「はっきりとは覚えていない。起こったかもしれないし、起こらなかったかもしれない。思い出すのが難しい」だった。

と書いている。


わたしは昨日、100%の株を持つ元社長が選ぶ代表は、彼女のお気に入りだと書いた。もちろん、新社長が、100%の株を持つ元社長以上の力を持てるはずもない。

旧態依然とした企業の内側が、革新的に変われることがあるとするなら、それはエンターテイメントに関わりのない企業人がトップに来ることだろう。関りがないからこそ、新鮮な目で、古い体制をチェックできるだろうし、誰も触れなかった悪しき慣習だって崩せることがある。

ジャニーズ事務所に長く君臨してきたトップの一人が、事務所のトップになった。そんな人を信頼して、不安な気持ちを安心して吐露できる被害者が果たしているのだろうか。

こうした事務所の動向は、メディアだけでなく、ファンもしっかり見守ることが必要だと思う。その力が、エンターテインメント界で活躍する個人を守る大きな力になるとわたしは思う。


※最後までお読みいただきありがとうございました。


※スタエフでもお話ししています。

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