くつろぎつつも、実は慌ただしい休日
3月最後の土曜、関東地方は朝から雨だった。
早朝、夫と家を出た。ところが歩き始めて直ぐ、なんて寒い日なんだ!となった。
夫と土曜日に外出するようになって2か月程になる。
お互いに忙しい。ゆえに夕食の時間が遅く、人間ドックではどちらも黄色信号。
そこで、朝ふらりと家を出て街歩きをするようになった。これが意外に楽しい。思った以上によく歩く。家に帰るとへとへとになっていてよく眠れる。
これを毎週繰り返している。
で、今日は寒いということで、急きょ飯能へ向かった。
目指すは温泉。
数週間前、ムーミン・バレーパークに行った際、入り口に日帰り温泉施設があったのが気になっていたのだ。
「ちょっと遠いけど、行ってみる?」と尋ねると「いいね、行ってみよう!」となった。
4、5年程前、我が家に一大日帰り温泉ブームがきて箱根や秩父に毎週出かけた。
そこには訳があった。
夫の仕事がパンパンだったのだ。
夫は神経をすり減らし、家に帰っても考え事が頭から離れず、押し黙ってばかり。
これじゃあ危ないと、土曜に日帰り温泉行脚をはじめた。
それはまるで点滴を打ちに行くようだった。
何ができたわけじゃないけれど、それでもあの温泉行脚で、夫は険しい山を無事に超えられたと今でも思っている。
ただ、精神的にも肉体的にもギリギリだった夫に効いたのは温泉だけじゃなかった。
特急に乗る、それだけで日常から思考が切り離せるのがわたしにもわかった。
特急電車に座ると、疲れているはずの夫は、眠るのではなく、一週間の出来事をぽつりぽつり語りだした。
車窓からは家が消え、どんどん緑が濃くなっていく。
箱根に向かう日は富士山が。秩父では桜や青葉、氷柱が、わたしたちに季節の移り変わりを知らせてくれた。
今度こそはと思って頑張ってもなかなか仕事は上手くいかず、夫はそんな試練を数回繰り返した。
そして振り返れば箱根・秩父行脚は一年半にもなった。
あの頃から、好きな海外旅行には行けなくなったけれど、夫婦で恐ろしく語り合うようになった。
そしてわたしたちは親しくなった。
飯能はその秩父のちょっと手前。
その温泉施設には意外にもたくさんの人がいた。
で、小雨に打たれながら露天風呂に入り、といいたいところだけれど、実はわたしはかなり焦っていた。
3月中にHPをアップしたいけれどもう最終週。
温泉を30分弱で切り上げると待合室でPCに向かった。
夫はのんびり湯に浸かり満足そう。
おかげでHPもだいぶはかどった。
わたしにもどうにもならないほど忙しい時がある。
海外旅行の飛行機の中でもPCに向かっていた頃がある。「あそこで飛行機がものすごく揺れたよね」なんて言われてもさっぱり記憶にない。「あゝ、そういえばみんな騒いでいたのに、君はパソコン打ってたなぁ」なんて言われたこともある。
お互いに忙しい。
そう、夫だけじゃなくわたしも忙しい。
だからこそ、土曜の外出がわたしたちには効く。
夫婦は所詮他人。
幾度も、あゝこの人は他人なんだなと思いながらここまで暮らしてきた。
けれど、その他人であるはずの夫と今では誰よりも親しい、そんな気がしている。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。
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