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1つの魂のお話 9(ラスト)

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人間の近くで10年位生きて、僕は思った。
やっぱり人間は苦悩だらけの生き物だ。
人間の心はとても複雑でコントロールが効かないとても恐ろしい機能だと思った。
近くにいて、人間の苦しさを十分理解した。
次の生まれ変わりでは、絶対に人間にさせられる。
あぁ嫌だな。。
嫌だな。。
どうにかならないかな?

神様の列に並んでいる時にあれこれ考えた。

いよいよ生まれ変わりの時がやってきた。

「神様!聞いてください。私は人間にはなりたくないです。人間になったら、心があって悪い事をしてしまうかもしれません。だから人間になりたくないし、神様が望まない事をたくさんしてしまうと思います。だから人間にはなれません。」

「ちょっと君は列から外れてくれるかな?話は聞いてあげるけど、他の魂がまっているからね」
そう言って、私は列を外れて神様の横で、どんなに人間になりたくないのかを力説した。
「それでも、君は人間になるしか道が残っていませんよ。前回の命では、人間の命を救うという素晴らしい功績があるからね、次の命は人間以外の道はないのだよ。」
「それでも人間にはなりたくないのです!」
「それじゃあ特別に性別を選ばせてあげよう。男の方が苦悩が多い。女の方が比較的ラク。どちらがいい?」
「それは女の方がいいです!でも人間にはなりたくないのです!絶対に嫌なのです!」
「ふむ、では特別に辛い時期を選ばせてあげよう。人間は誰しも辛い時期がある、その時期は本当は選べないけど、君は前回の命で素晴らしい事を成し遂げたからね、特別に選ばせてあげよう。人生の前半と後半、辛い時期はどちらがいいのか選びなさい」
「それは、難しいです、どちらも嫌です。」
「生まれてから数十年辛いのか、死ぬ前の数十年が辛いのかどっちが良い?どんな人生を送ったとしても死の間際に成し遂げる事を完了すれば、この輪廻転生から抜け出せる。逆に死の間際が最悪な状態ならば、今よりももっと辛い所に行くことになる。そしてそこに落ちたら戻って来るのは大変で、ほとんどの者が戻って来られない。」
「終わりがよければ解脱の可能性もあるなら、人生の前半が辛い方がいいかもしれません。」
「ふむ、では女として生まれて、人生の前半は辛いけど後半は良い人生になる。このような筋書きでよろしいかな?」
「神様!違うんです!私は人間には生まれたくないのです!絶対にいやなのです!どうか考え直してもらえませんか?」
「そうは言われても困るな」
神様と会話をしている最中、何万もの魂が地球に向かって産まれていった。
しかもその魂達のほとんどが人間になりたくて神様に懇願していた。
「私は人間に産まれて何をするのですか?」
「犬の命の時に、父親にしたような事をすれば良いのだよ。君が守らなければならない魂が近くにいるから、その魂を守って、できればその魂が幸せになり、その魂が成長する事があなたのの使命ですよ。」
「その魂はどこにいるかわからないかもしれない、見つからないかもしれないじゃないですか?」
「いやいや、生まれてすぐに出会えるから大丈夫。出会えない事なんか絶対ないから大丈夫ですよ」
「神様そうは言っても、とっても怖いです。絶対嫌なんです!!」
「これは本当は言っていけない話なのだが、特別に教えてあげよう。人間は何十年も生きるけど、君が守らなければならない魂は君の死によって救われる。だから普通の人間の命より短く終わるんだよ。だから人間でいる時間は比較的短く終わるのだよ」
「人間が終わったら、私はどうなるのですか?」
「それは、君が守るべき魂の成長によって変わるね。その魂がものすごい成長を遂げれば、君は輪廻転生から抜け出せる事だって可能だ。でもそれはちょっと難しい話だね。」
「神様、もし私が人間にならなければならないのなら、輪廻転生から抜け出して2度と人間にならなくて済むようにして欲しいのです。」
「それは、とっても難しい事なんだよ。君の魂が人間界でそれを成し遂げる事ができるのか、君自身の努力が必要だよ。」
「どうかそのチャンスをいただけませんか?人間に産まれるのは今回が最後にして頂きたいのです。」
「本当は、こんな事してはいけないのだが、君は前回犬の時に人間の命を救ったからね、特別に、輪廻転生から抜け出せるように大物に出会う筋書きに変えてあげよう。
もし仮に、輪廻転生から抜け出せなくても、君の死によって、君が守らなければならない魂は救われるから、どちらにしても功徳は積めるようになっている。これでどうかな?人間になる気になれたかな?」

「はい、希望がもてました。」
「素晴らしい筋書きになっているから心配しなくても大丈夫だよ。何があっても絶対守ってあげます。私や他の神様も総出であなたの魂を守り、応援してあげますので安心して行ってきなさい。」
「はい。」
「よろしい、では人間界に行ってきなさい、人間としてしっかり命をまっとうし、1つの魂を救いに行きなさい。あわよくば、多くの魂を救いなさい。そのチャンスは十分に用意しました。」

そして1つの魂が人間界に降り立った。
その魂は、ある1つの魂を救うためだけに降り立った。

降り立ったところは、日差しが強いベビーカーの中
日差しが突き刺さって肌が痛い。
身動きも取れないし、日除けをしてくれる人もいない。
お世話をしてくれる2人の人は、あまり気が利かないみたいだ。

犬の時みたいにあまり可愛がってくれない。
お世話をする人は面倒くさそうな顔をよくする。
あ〜体が重いし、心も重い。
そうか、これが人間か。あとどのくらい続くのだろう?早く帰りたい。

そんな中、私の事を大好きに思っている魂を見つけた。
お世話する人の近くにいる小さな人。
白い丸い顔に黒い目が2つこっちを見ている。

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私の頭を叩いたり、体を押したりしてくる。
嫌がらせをしているつもりのようだが、好きが溢れている。
私が救わなければならない魂はここにいた。

今もその2つの魂は地球にいる。

おしまい

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