傾いた天秤

 恋愛関係に愛情の天秤があるのなら、それは釣り合っているべきだ。
 ただ、曖昧な関係のままでは絶対に釣り合わないことも知っていた。


 「わざわざ付き合わなくてもいいよ~」
 そう言い放ったら、友達の目には戸惑いの色が浮かんだ。当然の反応だから驚かなかったが、わかってくれる人がいない事実を改めて突き付けられ、少なからず傷ついた。
 ただ、理解できない人が普通だと思う一方、私が間違っているとは思っていない。お互いが必要としていれば、付き合うなんて幻想は必要ないだろう。わざわざ関係に名前をつけてお互いを縛り付けることはない。
 今までは、そう思っていた。
 ずっと体の関係のままでいたが、最近、お互いにはっきりさせたくなってきていることに薄々気づいていた。ただ、それが話題に上がることもなく、私は今の状況を愉しんでいた。
 愉しんでいるとは言いつつ、他の女がいることが恨めしい。毎夜、肌を合わせられるのに、寂しさは一向に埋められない。
 常に側にいないからだろうかと考えたが、違う。
 私だけのものになっていないからだった。
 それなのにあなたは、私の気持ちなんて露知らず、「寂しくない」と自分の気持ちに嘘をついて、強がりながら生きている。あなたは、そのつまらない意地をいつまで保てるのだろうか。
 欲望を満たすことはできても、心を満たすことはできない。両想いの状態になってようやく、心も満たされるはずだと私は信じている。互いに求めているから、快感に浸っていられる。
 まともな恋愛じゃないけど、片想いは嫌いだ。
 きっと私は、あなたに会うたびに魔法がかけられるという呪いにかかっているのだろう。
 私の寂しさと独占欲は、理性では抑えられなかった。
 冷えた指先でなぞった胸元も、暑さで汗ばんだ背中も、恍惚とした表情も、全て憶えたい。時間なんて考えずに、ずっと触れていたい。あなたと肌が触れている瞬間の安心感と充実感に溺れていたい。
 互いに快楽の引き金を引く。最終的に私が一方的に引き続けることになるのだけど、それでいい。男は限界があってかわいそう。湿気で役に立たなくなった銃を弄んだときの、波打つ体や苦しそうに昂った顔が愛おしい。こうやって、ずっと、私のために尽くしてくれないだろうか。


 私は、0時になっても解けない魔法にかけられたシンデレラ
 この呪いを強くしたいなら、両重いになって、私を快楽に誘ってね
 マイ・ダーリン♡








(NOMELON NOLEMON「タッチ」を聴きながら)

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