記憶

 私は、まるでカメラマンのよう。ずっと大切な人を見ていたい。笑顔も、泣き顔も、怒った顔も、ご機嫌で歩く姿も、静かに寝る姿も、あなたの全部を記録したい。あなたを誰よりも熟知した、専属カメラマン。

 毎日がたくさんの感情で溢れていて、揺れ動く感情は本人にしかわからない。
 出来事を感情が彩って、記憶として残る。同じ出来事を体感しても、それに肉付けされる感情は人それぞれ。だから、同じ一瞬でも、その人だけが見た景色になるから、記憶は宝物。そんな宝物も、いつか忘れてしまうのかもしれないけど、例えば、辛いときに思い出して生きる力にしたい。

 いつ、どこで、どうやって死ぬかもわからない、平和な国。その中にある幸せは、いつ終わるかもわからない幻想。見えていたはずのものが消えて、見失ってしまうこともある。そんなとき、記憶が鮮明になる。そのときが、記憶が生きる糧になる瞬間。

 あなたは私の専属カメラマン。私の多くを知っている人。つまり、どんなに離れていても私のことがはっきりとわかる人。どんなときも私のことを思い出して、忘れないでほしい。

 私も哀しい。でも、少しでも明るくいたいから。
 「またね」










(NOMELON NOLEMON「フイルム」を元に書いてみました)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?