囀る56話感想

↓↓ 以下本誌読後(ネタバレ) ↓↓



囀る公式アカの『お時間をしっかりとってご堪能ください。』というアナウンスは正しかったですね。
24ページを何度読み返したことか。


百目鬼の執念

読後のまず思ったのが、56話の最初から最後まで、百目鬼の執念が滲み出ていたな、と。
4年前の失敗を繰り返すものかという強い決意。
何があろうとも矢代さんの側にいたいという一貫した意志。
そのためなら何でもするという絶対的な覚悟。
直接的に語られているわけではないけど、56話に百目鬼の真意や意志がギュッとまとめられていた気がします。


4年前のトラウマ

冒頭の「感情を押し殺してきた この人が 逃げないように」というモノローグ。
これ、感情を出したら矢代さんが逃げると思っているという心理の裏返しですよね。
目的達成のために、本心を伝えることよりも隠すことを選んだ。自分らしい自分であるよりも、状況に合った自分であることを選んだ。
矢代さんに捨てられた後の百目鬼の逡巡を考えると、毎回すごく苦しくなる。


逃す気は、ない

井波からインポのことを知らされて、どんな風に矢代さんに確認していくんだろうと思っていたんですが。
想像の50倍くらいストレートかつ具体的に詰め寄って、矢代さんの挑発も嫌味もかわして、心理的にも身体的にも逃げ場をなくして。
進め方が上手すぎやん。これが4年分の成長…!!

百目鬼が、矢代さんの両足の間に自分の足を入れ込むシーンが個人的にお気に入りです。
多分車中の時点で矢代さんを捉えるつもりだったに違いない。


言葉の真意は

「酷いの 好きでしたよね」からの「好きだよ」
56話の中で、一番ゾクッとするシーンかもしれない。でもこのシーン、百目鬼も矢代さんも真意がわかりかねる表情してませんか?

百目鬼は、
「酷いの好きでしたよね(だって4年前優しく抱いたら逃げましたよね、俺を捨てましたよね)」って怒りも含んで言っているように見える。

矢代さんは観念したようにも、歪んでいるようにも見える。
「(百目鬼に酷いことをして欲しいとは思ってないけど、自分のスタンスが崩れるから言えるわけねえ)…好きだよ」なのかな。
それとも単純に「(百目鬼が俺の好みを覚えてた)…好きだよ」とか。わからない。

百目鬼を捨てたという事実があるからには、その前提を覆すのは難しいのかな。それとも虐待の歪みから脱却できないが故の言葉なのかな。

なんにせよ、矢代さんの口から「好きだよ」という言葉が出るのは破壊力半端ない。百目鬼が一瞬虚を突かれたような表情になるのも当然…(からの、着火)


名言 「これ、何のセックス…?」

百目鬼が矢代さんを繋ぎ止める手段としてセックスを選んでるのは4年前と同じだけど、中身が全然違う。4年前は愛情を理由にして、今回はセックスそのものを理由にして。

体の相性がいい、ただ矢代さんとやりたいという百目鬼の言葉は一応事実は事実なんだろうけど。それをメインの理由に持ってきて、あのシチュエーションで咄嗟に言えるあたり、本当に建前が上手になったな…。

2人の間にはセックスだけじゃなくて愛情もあるのだと互いが知るのはいつでしょうね。
実際「酷いの好きですよね」って言った直後のくせに抱き方は甘いじゃん…。
陥落する矢代さんがかわいすぎる。

一通り気持ち良くなったあと、ふと「これ、何のセックス…?」って疑問を素直に口に出すのもかわいすぎるんですが、そんな疑問が湧くくらい矢代さんにとっては予想外の展開だったということですよね。

百目鬼の「俺は節操がないので、ただやりたいだけです」という返事はちょっと賛否両論というか、読み手の反応が割れそうだなと感じましたが。個人的には、矢代さんに受け入れてもらえそうな言葉を百目鬼が選んで発言したんだろうと解釈しています。

私も一瞬「そんな台詞言うなんて井波と一緒じゃん、セフレじゃん」と思ったんですが。
百目鬼としては、まず井波を追い払いたかった(=セフレのポジションを奪いたかった)のでは…?
その視点で考えると、今回の流れは目先の着地点としては合格ラインかと。
そして、矢代さんの心も身体も全部自分のものにしたいし自分だけを見てほしいと思ってる独占欲強い百目鬼がセフレの立ち位置で満足するわけがないので、百目鬼の中では矢代さん攻略の算段の続きがあるはず…(たぶん)


やりたいからやる、やりたい人とやる

9巻終わりまで来てようやく「やりたいから、やる」というすっごいシンプルな同意が2人の間で作られたわけなので。歪でもここまで辿り着いたかとちょっと感慨深い。
百目鬼の方もやりたいと思っている、この事実は矢代さんにとって嬉しい(もしくは安心する)んじゃないかな。

次回はこのセックスの続きが見れるのかな?
見たいです(素直)

でも甘々な展開の後は重たいヤクザ話に戻ったりするよね…



余談

56話の私の脳内BGMは大森元貴さんの『French』です。
ミセスの『Loneliness』も合う。



ひとまず、今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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