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木を植えた男


※『木を植えた男』の
内容についての記述(あらすじを含む)があります


▫︎▫︎▫︎


“あまねく人々のことを思いやる
すぐれた人格者の精神は

長い年月をかけてその行いを見さだめて
初めて、偉大さのほどが明かされるもの。

名誉も報酬ももとめない
広く大きな心に支えられたその行いは、

見るも確かなしるしを地上に刻んで
はじめて、けだかい人格のしるしをも
しかと人びとの眼(まなこ)に刻むもの。


ジャン・ジオノ『木を植えた男』より”



『木を植えた男』
先日長男が学校から借りて来て読んでいた本
私も後から読みました



「木を植えた男」は
南フランスの荒地に住む年老いた農夫

彼はかつて農場で家族と暮らしていた

しかし突然一人息子を失い
妻もその後を追った


その後世間から身を引いていたが
何かためになる仕事がしたいと考え
思い立ったのが
不毛の土地に生命の息吹を
よみがえらせること


彼は数十年かけて
カシワの種を蒔き
ブナの苗木を植え
カバの木立を育てた


世界で二度の戦争が起きている間も
荒れ果てた地にたった1人で
黙々と種を蒔き続け
時に全ての苗が全滅し
絶望のふちに立たされた時も
淡々と木の苗を植え続けた


そしてついには水と緑に満ちた
活気溢れる村を蘇らせたのだった


ただその変化はとてもゆるやかだったので
人々の目を驚かすことはなかった


森林の調査に来た人は
森がひとりでに育つなんて
初めて見たと言った


そうしてたった1人の男が成し遂げた偉業は
誰の目に止まることもなく
日常の風景の中に溶けていった


年老いた彼は
南フランスの静かな町の養老院で
やすらかにその生涯を閉じた





この話はフィクションですが
作者の生い立ちや様々な経験と出会い
南フランスの叙情的な風景の数々が
色濃く反映された作品であるとされています


作者は書いています


「戦争という、
とほうもない破壊をもたらす人間が
他の場所ではこんなにも、
神にひとしい仕事を
成し遂げることができるとは」


「まさしくそれは、
努力がもたらした
驚くべき連鎖のしるし」
だと


そして
「魂のいだいさのかげにひそむ不屈の精神。
心の寛大さのかげにひそむたゆまない熱情。

それらがあって、はじめて、
すばらしい結果がもたらされる。

この神にも等しい創造を成し遂げた
名もない年老いた農夫に
限りない敬意を抱かずにはいられない。」




この本を読んで
私は春馬くんを想った


『僕がいた時間』の撮影に臨んだ時
「皆さんの心に突き刺さる演技がしたい」
と言っていた春馬くん

身を削るような役作りをしながら
それを有言実行した春馬くん


春馬くんは
その表現をもって
人間の運命の残酷さ
人生の過酷さを描き出すと同時に

一人ひとりの心に
そしてこの世界に
希望、想像力、知恵、思いやり、勇気の種を
蒔き続けた人だと思う

木を植えた男と同じように
不屈の精神と、たゆみない熱情をもって…



春馬くんの蒔いた種は
いつか必ず芽を出す時が来るだろう


その芽はいつか大樹となって
私たちの心の大地を潤し
豊かなものにしてくれるに違いない


日差しを柔らげる木陰
風に揺れる葉の微かな音
みずみずしい空気
地中深く伸ばした根が湛える清らかな泉

そんな自然の力が
傷ついた心を癒してくれるように


春馬くんの残してくれたものは
いつも私たちを優しく
包んでくれるだろう


そしていつまでも
私たちの心の中で
微笑んでいてくれるだろう


春馬くんが残したもの
そして彼の人格、その精神は
どんなに歳月が経っても忘れ去られる事はなく

むしろ歳月が経つほどに
輝きを増していき
歴史の中で光を放っていくに違いない


この本を読んで改めて
そう思いました


冒頭の一節を
春馬くんに捧ぐ


“あまねく人々のことを思いやる
すぐれた人格者の精神は

長い年月をかけてその行いを見さだめて
初めて、偉大さのほどが明かされるもの。

名誉も報酬ももとめない
広く大きな心に支えられたその行いは、

見るも確かなしるしを地上に刻んで
はじめて、けだかい人格のしるしをも
しかと人びとの眼(まなこ)に刻むもの。


限りない敬意を抱きつつ



本の挿絵に2頭の馬
美しい絵


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