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鳥は飛べるか幸せか 『逢沢りく』

ツバメの子が落ちていた。
やけにピャピャ声が聞こえて、上見たらもちろん巣があって、そこに3羽というか3匹の仔ツバメがいる。ふと下見ると、ぴゃーぴゃー叫ぶのが1匹。

巣は高い。私の背じゃ届かない。そもそも、コツバメを拾いあげるのもままならない。近寄って手をかざしただけで、上からのピヤピヤ声が3倍になる。落ちた子も、羽を広げて後ずさる。何度か間合いを詰める。一瞬羽に触らせてもらえたけど、これで私が彼ないし彼女を手の平におさめたところで、何をしてあげられるのか。巣にも戻せないし、家に連れて帰るには遠すぎる。結局彼が歩道を跳ねるように歩くのを見て、立ち去った。


家に帰って、本棚を眺める『逢沢りく』が目に留まる。『きょうの猫村さん』を書いたほしよりこさんの長編、っていっても文庫本2冊のマンガ。裕福なパパ、オーガニックなママ、美しい娘。完璧な家に育っているはずの美少女だけれど、悲しい気持ちがわからない。しかし、わちゃわちゃした関西の親戚のうちに住むことになり…
飛べない鳥に見立てるのはあまりにも陳腐かもしれないが、連想しちゃったもんはしょうがない。


いまの季節のツバメ、あまりにも生きようとしていて胸がいっぱいになる。あれだけ全力で口開けてピヤピヤ鳴いてエサ待って。道のツバメもどうか、飛んでいけますように。


うめざわ
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