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美輪明宏『正負の法則』にモヤモヤする

ボーダーレス:人類がめざす最終目的 
ってのがこんなに似合う人もいなかろう (『乙女の教室』美輪語辞典より)最強人類…


「理解に苦しむものはみんな 化け物扱いですからね」
自他を分けることの不条理という〈負〉を思いっきり浴びせられてきたから、この神々しさがあるということか。本を読み返す。

この本で美輪さんが説いているのは単純明快で、「この地球上の出来事はすべて〈正〉と〈負〉によっている」ということ。

地球がぜんぶ南だけで、暖かいだけだったら、これは〈正〉だけでしょう。月のように冷たかったら〈負〉だけでしょう。しかし、地球というのは何から何まで〈光〉と〈影〉なのです。

人の生き死にもすべて正負の法則でできていると、モーツァルトから織田信長、マリリンモンローまでさまざまに例を挙げながら、「天才は夭折する」「美人は薄命である」「権力者は孤独」みたいなことを書いている。
美人編をちらっと見てみると…

・ダイアナ妃は、夫と離婚して、富や名声や地位もそのままに、最愛の恋人まで手に入れたから、欠けるものがなくなって亡くなるしかなかった。
・マリリンモンローは、不幸な出生や薬漬けの日々、大統領も巻き込んだ大スキャンダルの果てというさまざまな〈負〉を払ったから、死後何十年も経ってもグラマラスな女の象徴でいられる。
・グレタ・ガルボ、原節子は、絶世の美女で天下の大女優であったけれど、人気絶頂のときにさっと引退するという〈負〉を選んだから、大禍に見舞われずプラスマイナスゼロになったのであろう。

この流れでいうと、今ならメーガン妃に対してなんていうのか聞いてみたいとこだ。
ものすごーくざっくり言えば、「いいことばかりの人生なんてありません」「『腹六分』の人生がいちばん幸せなのです」ってことなのでしょう。

高い所へ登った人ほど、落ちた時には大怪我か即死です。
低い所にしか登れなかった人は落ちてもせいぜい軽いカスリ傷か怪我くらいですむのです。
それが《正負の法則》ですから仕方がありません。

◆ ◆ ◆

うーーーーん。うーーーーん。

この、ははーとしか言えない感じってなんだろう。私は美輪さんは菩薩だと本気で思っているのだけど、この本はどう扱ってよいかまだわからない。反証不能だよね。
「どれだけ輝いて見える人にも、あなたの見えない負があるんですよ」って言われちゃうわけだし。よくないことがあるから、いいこともあるのです、みたいに一般化されちゃうと、そんな薄い話?と思っちゃうのだが。

んーーーーむ。でも美輪さんが「地球大学つまり人生のカンニングペーパーです」と、わざわざアンチョコを手渡してくれるわけだから、もっともっと深い意味があるんだろうと食らいついてみるのだが。

多少わかるかなと思うのは、「ツケを払う」という言い方だ。たとえば、若いうちにむやみに富や名声など〈正〉を欲しがるものではない、と。「不幸や命と引き換える覚悟があればいいのですが」と反語調で書いてあって。

なんとなく自分の言葉に落としてみると、「驕るな」ってことだと思うのね。ぜんぶ自分の力だと思うな、身の程を知れ、とか。もっと言うと、調子に乗るな。おだやかな言い方をすれば、まわりに感謝しなさい、かなあ。

美輪さん風にいえば、我々人間は「地球大学」という「〈心〉〈精神〉〈魂〉の、〈修行〉〈修練〉〈試験場」〉にいるわけなのに、それを飛び越えて、われこそは創造主!われこそはすべてを手に入れるのだ!みたいに思っちゃうとまずいよってこと?か? わからないー。

うめざわ
*『ああ正負の法則』が文法解説なら、『乙女の教室』のほうは女性むけ例文集。これは女性誌MOREに連載されてたものだけど、美輪さんがたとえばプレジデントなんかに書いたらどうなるんだろう…
http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/080826_book01.html

*舞台「葵上・卒塔婆小町」絶世の美女役から、しみったれた「ちゅうちゅうたこかいな」な老婆役の振れ幅も化け物ばり。https://natalie.mu/stage/pp/kindainogakushu


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