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「獲物を待つ狩人」

「獲物を待つ狩人」

水の湧き出づる小さな洞窟の岩陰にて獲物が網に張り付くのを
気配を殺して微動だにせずに待ち続ける狩人がいるのを私は時
を忘れて見入っているとその狩人も私の事を知りつつ逆に見詰
めているような気がしてきたがそれは私が観ているという意識
を私が意識したからであろうと思いながら凝視し続けていると
そこに小さな羽虫が飛んできて狩人の網を揺らしたが網には掛
からず微かに網が揺れただけだがその時に狩人は殺気を放ちな
がら一瞬一足微かに動いたが直ぐに気配を殺してまた微動だに
しない態勢となりてまた次の獲物を虎視眈々と狙うものへと何
事もなかったが如く静止し続けているのを私自身もその狩人を
観ている内に何やら妙な心持になり始めたのを感じたのだがこ
の先に私が狩人と同化してどのようになるのかという好奇心に
は抗えぬ想いとの奇妙なこの世にあらぬが如き妖しき心持が私
のこころと身体に染みわたり始めると微妙な振動が私の意志と
は裏腹に名状し難き痛みに似た想念が私の肉体を奮わせ始めた
のは極度の意識の集中と疲労からかは判然としないと考え始め
たら私は此処にはこれ以上この場所に居るべきではないとの想
いを感じつつその場を離れるべきであるとの想いが強く湧きた
ちて好奇心は残っていたものの私の足は意志を持っているかの
ように反応してその場を気配を消しつつ静かに移動し始めたの
である。

#エッセイ

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