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「奇妙なる光景」

「奇妙なる光景」           

               
                     
おれの眼前に繰り広げられる奇妙な光景が奇異に感じたのを今では薄れた記憶のなかにしか見いだせぬのはこれこそ奇異なことではないかとも思うのだがそれすらも自分の記憶なのか現実に見たものであるのかの境界が曖昧模糊とした状態であるのは今のおれには確かめるための基準すらあやふやなのでただ眼前にあいもかわらず定かならぬ形やら動きやら色いろなるものらの様々な音調とも軋みとも呻きとも判別しがたい音響の空間に漂うばかりのおれの意識はかろうじて痛みやら臭いとかの感触でなんとか区別はついているもののこの感覚すら最近はますます稀薄になってきているような気がするのはおれの気のせいかもしれないなどと考えるのだがこの考えるということも果たしてこのおれが考えているのかどうかもよく考えるとあまりおぼつかないというのも慣れからくるのか麻痺し始めているのかこれまたあいまいなもので確たる確証となるべき尺度やら規範やら視点やらがなにもかもいっしょくたにくっついたりはなれたりさてはぐちゃぐちゃに混ざりあったりしてどうにもこうにも何処から手を付けていいものやらそれすら分かりかねるのはやはり自分のせいであろうと思うのだがそれすら定かならぬ状態に甘んじたくはないと思いつついつしか同化してしまうのではないのかとも考えてはいるのも一体おれのだかまわりのだか考えるだに奇妙な気分になるのではもう何も考えまいと思うようになってくるのははたしてどうしたものであろうと思うのであるがそれすら最近は朦朧となりつつあるのをどうしたものかと思案にあけくれてはなりゆきにあけくれてもいるのであるもののこれ半端な情というもののこれ喪失したればしびとのごときなればと想いつつもあやとりのあやしき日々

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