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「嘔吐」J.P.サルトル著


「嘔吐」J.P.サルトル著


サルトルのこの哲学的文学は彼自身の世界観が如実に書かれている。 実存主義とは「無意味が意味である」が人生の意味とされている。 この世界観の元祖的人物がニーチェである。 通常の思考による考察の限界は虚無に至る。 虚無とは相対的意識であり、あらゆる事物を偏見無く観るという一視点にすぎぬ。それが世界観と化せば「虚無的世界観」となる。 物質界の足場が消失すれば生きる意味や方向性も見出すことは出来ない。 「嘔吐」に書かれているのはあらゆるものが得体のしれぬ、単なる無意味な「もの」と化した。観念的虚無である。

実存主義的世界観は今日の唯物論的世界観が蔓延する世界には都合の良い世界観である。 殆どの哲学、心理学、文学等々。カミユの「異邦人」も然り。 相対的意識の方向性のない世界観に人は魅了された。 個々人の都合の良い解釈が可能になるからである。 得手勝手な主観的自由、多様性云々。理屈はどうとでも付く。 この状況は依然として変わってはいない。 人々の魂に麻薬のように骨の髄まで浸透している。 彼らの表現したものの責任は頗る重い。 だが、肉体がある限り、この世界観は魔力を持つ。人類進化の途上とはいえ、如何ともし難い。

「嘔吐」J.P.サルトル著
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