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放し飼いと脱走

 うちは猫を放し飼いにしている。
 田舎ではなく、都市近郊のマンション1階で。事故の可能性や心ないヒトからのいじめ、外猫とのケンカ。たくさん問題があると知っていながら放し飼いにするなんて飼い主の資格がないと言われても仕方がない。そんなデメリットの多い放し飼いだが、一つ「メリット」がある。

 それは、脱走して戻ってこない心配がほぼないことだ。

 「え、逆じゃない? 放し飼いしていると脱走しやすいでしょ」
 いえいえ、それが違うんです。

 まず、放し飼いといっても避妊手術をする8カ月頃までは断固外に出さない。それから1歳頃まで見張りながら庭に出し、よその家(マンション隣の庭)に行こうとしたら止めて、ここがテリトリーなのだとしっかり覚えてもらう。その後、徐々にうちと外を自由に出入りできるようにする。今まで20年間、それで4匹ともちゃんと戻ってきた。

 猫って脱走好きじゃないですか。
 うちみたいに自由に出入りさせていても、ちびは玄関ドアを開けるたびに脱兎のごとく飛び出して行った。まーくんとみーちゃんは北側の部屋の網戸を頭突きして破って出るのが大好き。
猫も「悪いことをするのが楽しい」のだと思う。

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マンション庭にて

 室内飼いのコが脱走して戻ってこない。
 飼い主は必死になって探すだろう。ただ、猫自身が外に出るのに慣れていて、うちへの戻り方がわかっていれば、たぶんきちんと戻ってくる。オスは正直、なかなか帰ってこないことも何回かあった。とくに若い頃はヒトと同じように外をほっつき歩きたがる。けれど、半日後にはなに食わぬ顔をして「ただいまー」。

 きちんと帰ってくるのは、うちがラッキーなだけなのだろうか?

 私はそうじゃないと思う。
 猫も外は危険だと理解していて、ご飯のもらえる家をきちんと認識していて、安心なホームがどこかわかっている。頭の中にはちゃんと地図がある。そう思うようになった理由は……。

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ちぴちゃん

 玄関ドアから脱走するのを生きがいにしていたちびは、ある日を境に全く脱走しなくなった。理由をしばらく考え続け、ハッと気づいた。それはちびが高齢になったからだ。ちびは脱走しても、いまの体力では家に戻れないと理解したのだ。年老いて体が劣り、自分にできること、できないことを正しく判断して、危険なことはしない。そう決めたのだ。

 ぶーもそうだった。
 ぶーはマンションの庭から前の道路に出るのが好きで、元気なときはよく遠征していた。しかし16歳も過ぎると庭だけで過ごすようになり、そのうち庭にもほとんど出なくなった。体力のあるコだったので亡くなる前日まで歩いていたけれど、外出は極端に減った。つまり外出が体調のバロメーターだった。

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ぶーちゃん

 私は猫の能力を信じる。
 彼らは、ちゃんとわかっている。自分の体がいまどんな状態なのか。できないことは何なのか。ヒトよりきちんと把握していて無理はしない。無理をしたがるヒトは動物としてお粗末なのかもしれない。

 放し飼いは、脱走対策へのある意味最強の解決策ではないだろうか……。

 これを読んだからといって、当然ながらいきなり放し飼いにしない方がいいし、基本はやはり室内飼いがいいと思うし、全国の迷い猫ちゃんが一日でも早く飼い主の元に戻るよう祈ってる。

 最後に環境省の、たぶん2003年に作成されたと思われる「ねこの飼育状況に関するレポート」をあげておく。
 それによると、2003年当時の猫の放し飼い率は約24%だそう(上記リンク先P3参照)。うちも放し飼いだけど、この質問で選択するなら「主に室内で飼っている」になるかな。一日のうち外に出ている時間は多くて1〜2時間だし、10歳すぎるとほぼうちの中にいるので。

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上から、みーちゃん、まーくん、ちびちゃん


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