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「三浦春馬+尾崎豊」なささやき 玉川上水のせせらぎに溶けて流れる

ナイスミドルさんのラジオ新番組「目を開けなければずっと夜」

何日か前の、雨がしとしと降る夕方。帰宅した僕は、雑音のしない部屋であらためて聴き直したいと思って、その日はじめてその存在を知った stand.fm というラジオ配信サイトの、ある番組の再生アイコンを指で触れた。

「目を開けなければずっと夜」 

パーソナリティーは、ナイスミドル  さん。

始まったばかりの番組は、その日の時点で、まだ聴けるのは6分間弱の1本のみ(これを書いている現在は2本聴ける)。半分の3分ほど経過して聴いているところで、友人の shiva さんから電話がかかってきた。ラジオが止まる。

shiva さんは、こうやって時々、これくらいの時間に電話をくれる。

たいてい仕事で移動中の車の中からなのだが、この日のshivaさんは、たまたま玉川上水の遊歩道あたりを散策中だった。

shiva さんの店のインスタのための撮影散策なのか、単なる散策なのかは、その日はなぜか聞かなかった。

とちゅうで途切れてしまった番組の話をした。それからいつものようにとりとめもない話をしばし交わして、電話を切る時、「自分も聴いてみたいから送って。」と shiva さんが言うので、ラジオを LINE に載せて送った。

残りの放送を聴き終えた。

あるコトを「感じ」た。

感じたコトを確かめるように、他の番組をできる限りいくつも聴いてみた。全部、はじめて聴く番組たち。いったいいくつあるんだろう。おそらく数えきれないほど。

しばらくして、shiva さんから LINE が届いた。僕がさっき「感じ」たことと、同じ言葉が、その文面の冒頭にもうあった。

「いい声してるね。この人。___」

僕もつよく「感じ」たコトだ。念のために言っておくと  shiva さんは、いつもこんな風に僕と同感覚なわけじゃない。でも、僕とはまた違う、人の何かを見通すチカラがある。声や音フェチといってもいい僕が、今まで音楽などで見つけてきた魅力ある声の人や曲を、彼にいくら紹介しても、どうも反応が鈍くピンときてないことはよくある。そんな shiva さんをして「いい声」といわしめたナイスミドルさんの声。

ある青年俳優の声のイメージと、shiva さんが季節ごとにいつも見せてくれる数々の写真たちにうつる、玉川上水のきらめく水面や周辺の色とりどりの植生たちの映像が、耳と額に交互に浮かぶ。因みに、この記事のタイトル画像は shiva さんがいつも散策している玉川上水脇の遊歩道、右側に小川のような上水が流れている。これらの写真を撮ったのも彼だ。

しば_遊歩道と夫婦

浮かんできた声の主は、三浦春馬さん。映画「恋空」での高校生から舞台「キンキーブーツ」のドラァグクイーンまで、それこそ玉川上水の花や葉っぱのように色とりどりに表現する。「奈緒子」という映画でランナーを演じた時に、実際にお見かけしたことがあるが、まるで東に向かって延々と続く、この小川に沿って生えた樹々の中を吹き抜ける風のような雰囲気を、ランナーのごとくそのまま纏っていた。

実は、僕はナイスミドルさんの生の「声」を聞いたことがある。ここで名前などを明かすことはできないが、見たこともある。けれど、何度この番組を聴いても、見たことのある「彼」の顔が、浮かんでこない。声を作っているわけでもない。この声は本人の声、作ってないそのままの声だ。なのに、顔が浮かんでこない。三浦さん同様、彼もイケメンだが、番組中はその顔を忘れてしまう。

聴いている時、そこにいるのは、ただナイスミドルさんだけだ。

彼の番組は、他の数多あるフリートーク系や、ビジネス系、自己紹介や日記系のものと違って、一風変わった世界観で自ら脚本として創ったものを届けている。

演じ切っている。

そういうことと、その声質も相まって三浦春馬さんが浮かんでくる人が、僕以外にもきっといるだろう。


香水の香りを表現するときに、第一印象をトップノート、余韻をラストノート という言葉を使うことがある。

三浦春馬さんがトップノートのように聴こえてくるイメージだとすると、もう1人、余韻のように浮かんできた人、歌い手がいる。

その声の主は、夭逝された尾崎豊さんだ。なぜ彼なのか。

実は、この番組の途中で電話をかけてきた shiva さんが、話の流れでいつもとはまったく違う玉川上水の写真をその場で撮って、その電話中に、送ってきた。

それは今にも暮れようとする雨の玉川上水の黒い水面が、向こうのもっと暗い闇に向かって吸い込まれるように流れてゆく写真だった。

画像2

shiva さんのインスタにあがっている玉川上水の明るい写真たちとは正反対のものだ。

玉川上水は、江戸時代に江戸の人々の命の水の供給源として、幕府、現在でいう政府の主導のもと計画され、長期的大掛かりな工事のために、多くの労働者が関わり作った「人工の」川だ。

永きに渡って、大切に保存されてきたからこそ、水は清く、植物が彩りを与え、集まる鳥や虫たちが癒しをくれる場所にもなった。

しかし、命を育むその一方で、歴史的にも、関わった人たちに数奇な運命や苦労があったり、太宰治が入水場所に選んだりと、人々の辛さ、苦しみ、哀しみを受け止めてきた川でもある。

人工でもあり、自然でもあり、哀しみもたたえつつ、命を育む川。

shiva さんの、いつもとは違う玉川上水の写真を見て、もう一度、ナイスミドルさんの声と言葉を反芻する。

ナイスミドルさんも、人の辛さ、苦しみ、哀しみに、番組の中で触れている。

川べりでくしゃくしゃになった朽ちた葉っぱが雨に濡れて薫るように、香水の余韻・ラストノートのごとく、尾崎豊さんの歌の言葉にあるような、寄り添う心が、声の底の方に、ほんのり見え隠れする。

見るコンテンツ、聴くコンテンツが世の中にあふれている現在、僕たちは、ついつい情報としてすぐに役立つかどうかや、自分の日常の世界にある親和性のあるものか否かや、すぐにわかりやすいかで選びがちになる。

「創作されたもの」の向こう側にある、彼の声の「ある部分」、三浦春馬さんや尾崎豊さんを彷彿とさせるからでもない、あなたのための「ある部分」に気づいてくれるだろうか。

人ごとながら、そんなことを思いながら、まずはナイスミドルさんのその「声」を、こころを澄ませて聴いてみてほしいと思っている。



🔹 こちらがその番組です。👇


🔹 ナイスミドルさん紹介するのに、勢いで僕も配信しちゃいました。👇


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