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希望と現実、現実はいつでも今である、 アシスタント時代、最終章。

アシスタント生活も2年目になろうとしています。仕事にも慣れて割と楽しんでいます。お金はなくても、なんとか日々充実しています。

ビルの一階に芸能人の個人事務所の事務の女の子と、仲良くなり夜な夜な赤坂の街へ遊びにいっていました。作品作りは佃島がなんとかまとまってカメラ雑誌に持ち込みしたのですが、もう少し力のある写真が欲しいとのことで再度撮影をしてみたらの返事でした。ちょいと気落ちしてまた、遊び三昧に

師匠がそろそろ独立を考えたほうがいいよと、アシスタント生活が長くなるとずるずるとこの生活をやってしまって気が付いたときにはカメラマンになれない人をみているからね、と師匠はやさしく小言を。

まったくその通りで何も言い訳けができませんでした。偶然にもカメラ雑誌にフォトコンテストの公募がでていたのを師匠が見つけてこれに応募しよう、俺の写真も加えてくれと、さて、テーマというよりどんな写真を撮ればいいのかこれから考えなければ、締め切りまで一か月でした。

それから佃島をもう一度撮影してそれを応募しようと決めました。ところがある朝アパートでなにげなく窓ガラスの向こうに一匹の猫がこちらを向いていました。一瞬これは面白いと反射的にカメラをもってシャッタを押していました。一度目はカメラについている35ミリレンズでこちらを向いている遠景をパシャリ。二度目は望遠レンズで顔のアップ、三度目はそのまま望遠で逃げていく体のショット。三枚しか撮れませんでした。現像してプリントしてみると、これが案外面白い、一瞬のできごとですが、猫のかわいらしさとずるさが写っている気がしました。

今回のフォトコンテストの応募は師匠の写真、佃島の二十枚の組写真、猫の三枚の組写真、この三組で応募しました。応募してから日々の忙しから忘れていました。ある日、郵便ポストから結果の手紙を師匠が持ってきました。

開けてみると、特選の文字が、師匠は自分の作品だと思ったらしく、俺のかなと、題名を見て、あぜんとしていました。私の猫の写真でした。題名は猫のキャットをもじってギャットにしました。突然おどろいてシャッターを押した時の気持ちを題名にしました。なにはともかく、この受賞がカメラマンの出発点だと自分で勝手に決めて、自分の感性を信じて事務所から卒業しました。


                                                                        

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