見出し画像

梅林家の日常#2

父が笑うと嬉しい。

父はあまり喋らない。寡黙なタイプ。
食卓で口を開きはじめたとしても、母に会話の主導権を奪われるのがオチだ。そして、それを嫌がる風もなく楽しそうにしている。

家族でしゃべくり7を見ている時も、エンタの神様を見ている時も、声をあげて笑うことはそんなにない。家族の会話の方が、父を笑わせる。
普段、あまり笑わない父が顔をほころばせるのを見ると心が弾む。

そんな父だから、
私も母も、父を笑わせるのが自分たちでないと、少々の敗北感を感じる。

今朝、私と母は洗面でリビングから父の笑い声を聞いた。
「なんか笑いよるよ、パパ」
「今、笑ったね」
私と母は目を合わせる。

「なん、なんで笑いよると?」
「なんか、面白いことあったと?」
私と母は食い気味でリビングにおしかける。

「なに、なに」
父は顔をほこらばせながら、こちらを向く。
液晶画面の上では、近江アナと博多花丸大吉が、朝ドラ後のコメント中。

急に詰められた父は、上手く言葉がでない。
「ねえ」と弟に助けを求めるが、
Youtubeに夢中になっていた彼は、
「うん、そうかもしれない」
と、意味のかみ合わない相槌しか打てない。

母も私も、不服だが仕方ない。
再び、二人とも朝の洗顔と歯磨きに戻る。
梅林家の日常。

~余談~

「家族の会話の方が、父をよく笑わせる」と書いたが、その中でもエースは母だ。

私も父を笑わせたいのだけれど、母には勝てない。
母の常套手段は、イジリだ。

トイレに入ると、決して返事をしない父を「サイレンスこういち(父の名前)」と呼んでみたり、父の日常の挙動を面白おかしく再現してみせたりする。

しかし、私が母のマネをしてみても上手くいかない。
21年、生きてきて気づいたことは一つ。この問題の根幹は、父が母に惚れているというところにあるということだ。

母の父に対するイジリは、「父が母に惚れている」という前提のもとで効力を発揮する。

父は母が大好きだ。母の要望はすぐ聞いてあげるし、カラオケでは、いつも私ではなく母に森高千里の「渡良瀬橋」を歌ってもらいたがる。(父は森高千里のファンだ)

娘の私が父をいじっても、ナマイキな子供の域をでないのかもしれない。
父を笑わせる、私なりの戦略を考えていきたい。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?