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162冊目:パレード/吉田修一

こんばんは、Umenogummiです。


今日は小説です。


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パレード/吉田修一 作





千歳烏山の2LDKのマンションの1室でルームシェアする男女4人(のちに男1人増える)のお話です。
物語は各章5人それぞれが語り手となり、リレー形式で進んでいきます。

良介(大学生)
先輩の彼女に片思い中。家から離れた駐車場に桃子という名の愛車を持っている。

琴美(無職)
俳優と熱愛中。仕事もせず、一日彼からの電話を待ち続けている。

未来(イラストレーター兼雑貨店店長)
毎晩どこかで飲み歩いては酔いつぶれている。サトルをひろった張本人だが、酔っていて覚えていなかった。

サトル(男娼、作中にマンションへと転がり込む)
18歳と同居人の中では最年少ながらどこか達観している。他人の部屋に忍び込むのが趣味。

直輝(映画配給会社勤務)
皆の兄貴分で、趣味はジョギング。マンションは元々は直輝がかつての恋人と暮らしていた家だった。


それぞれの章で、その人の背景、なぜこの家で暮らしているのかや、一緒に暮らしている各人をどう思っているのかが語られ、少しずつ不思議な共同生活の裏側が明るみに出てきます。


楽しそうなルームシェア生活に、話が進むにつれてじわりじわりと深い影を落としていくような、どこか気味の悪い感じを覚えていきます。

発売当初に購入し、面白くて一気読みした記憶があります。男女のルームシェアの日常の話なのね、ふむふむと読んでいたわけですが、それまでの賑やかな生活を一転させるようなラストには驚かされました。いや、この後どうなっちゃうのよ!といったところで、物語は幕を閉じます。

この作品、好きなんですが、なんで好きかはよくわからないんですよね。うまく言葉にできません。先に面白いと書きましたが、面白いとも少し違うような。他人の生活を覗き見ているという好奇心はあると思います。あとは本音を隠しながら、楽しく暮らしている彼らに、不思議な魅力を感じます。


最近久しぶりに読み直しましたが、また不思議な感覚を覚えています。それでもやはり、好きな作品ですね。





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