211冊目:山月記/中島敦
こんばんは、Umenogummiです。
今日はこちらの短編小説です。
山月記/中島敦 作
あらすじ
隴西の李徴(りちょう)は、若くして科挙の試験に受かるほどの秀才でしたが、大官に屈することを潔しとせず、早くに退官してしまいます。
その後は家にこもり、詩を書いて名声を上げようとしますが、上手くいきません。
数年の後、妻子を抱えながらも困窮に陥った李徴は、仕方無く地方官吏の職を得ます。
しかし、かつては歯牙にもかけなかった同輩たちが、自分よりも位の高い職につく、彼らから拝命を受けることは、李徴にとって屈辱的なことでした。
ある公用の道中、ついに李徴は発狂し、そうして山へ入ったまま行方をくらませてしまいます。
1年後、監察御史の袁慘(えんさん)という男が、勅命を奉じ、遣いの道中泊まった宿で、「人喰い虎が出るから移動するのは白昼がよい」といわれますが、袁慘は忠告を聞かず、宿を朝早く旅立ちます。
そこで虎に襲われかけますが、虎は草むらに隠れ、「危ないところだった」と呟きます。袁慘はその声に聞き覚えがあり、虎に声をかけます。
「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
温和な袁慘は、李徴にとって数少ない友人だったのです。
感想
国語の教科書、虎、尊大な羞恥心でお馴染み(?)の作品ですね。
このあとの虎となった李徴と袁慘の会話はとても切なく、哀愁があります。
以前書いた、カフカの変身のように、異形のものになってしまったやるせなさや後悔の念が美しい文章で語られています。
中島氏はカフカから影響を受けていたという話もありますね。
でも李徴はちゃんと話してくれる友がいてくれて、良かったですね。変身では、家族にすら相手にされないかわいそうな主人公でしたからね…あれは辛かった。。。
姿が見えないとはいえ、やはり哺乳類である虎と、黒光りする巨大な何かでは、恐怖の種類が違うからでしょうか。いずれにせよ、人以外になるのであれば、ある日突然というのは嫌ですね…せめて生まれ変わってなら或いは。
山月記はすっきりしない部分はあるものの、何とも言えない、でも変身のような嫌な感じはしない読後感があります。
舞台が中国ということで、少し耳慣れない言葉も多いですが、さっと読めるのにもかかわらず奥が深く、生きることについて考えさせられる一冊です。
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