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陰虚

スポーツ選手が試合で相手からゴールを奪うとガッツポーズをして歓喜する。

チームメイトと我を忘れて手を叩き合い勝利を祝う。

最近ではよく見かける光景だと思います。

でも柔道や剣道、相撲など日本の国技になるとそういった光景は皆無です。日本では古来より感情を表に出す習慣がありませんでした。

その差とはいったいどんなものなのでしょうか。

今回のテーマは東洋医学、陰虚(いんきょ)です。
よろしければお付き合いください。

さて、

陰虚とはその文字のごとく陰が不足している状態のことで、症状は、のぼせ、手足のほてり、盗汗、痩せ、などが代表的なものです。

ところで、気、血、水を陰陽で分けると、動である“気”が陽、その他は静である陰となりますから、血虚というと陰虚という大きなくくりの一つですし、気虚というと陽虚のくくりの一つです。

ネットで陰虚を検索してみると、

陰虚とは、虚熱であるため水分をたくさん摂って体の熱を冷ますことが必要、、そう説明するものがありましたが、これにはさすがに首をかしげたくなります。

陰虚とはそんな単純なものでしょうか。

ここでは、そうした表面的なことではなく少し視点を変えてこれを述べていきたいと思います。

冒頭で私はスポーツの歓喜の時の振る舞いについて述べました。

なぜ、西洋のスポーツでは勝利の歓喜を感情として表に出し、日本国技では勝利をしても歓喜をぐっとこらえるのでしょうか。

それはどちらが正解、不正解ということではなく、それが国民性の違い、文化の違いであるということが大きいでしょう。

歓喜の気持ちとは陰陽でいうと陽のエネルギーです。

東洋医学で喜びという感情は五志の怒、喜、思、憂、恐の“喜”。喜は、肝、心、脾、肺、腎の“心”に該当します。

つまり“心”のエネルギーがあまりに強くなってしまうと喜びが過ぎてしまい、気の緩み、油断を生む原因となると考えます。

日本では古来より「勝って兜の緒を締めよ」という言葉がある通り、歓喜の気持ちがあっても陰の力を使ってぐっとこらえて内に秘める習慣がありました。

それが日本人の美徳だったのです。

こころの中がザワついていても感情を決して表には出さない。
それが逆に凄みとなって存在の大きさを相手にアピールをすることにもなったことでしょう。

しかし、気が散っていたり未熟だったりするとありのままの気持ちを露呈してしまうことになる。

私はこれも一つの「陰虚」ではないかと考えています。

陰の力が足りなくなり、感情を表に出してしまうことを日本ではこころの乱れ、集中力の欠如とみなします。

そうならないために武道、書道、茶道、という一本の道にして修行に励んだのです。

では、実際に私達の体に起こる病態としての陰虚はどう考えればいいのでしょうか。

動のエネルギーを静のエネルギーで制御できないことを大きく陰虚であると捉えると、

例えば、、

自律神経やホルモンバランスの乱れで代謝がどんどん前のめりしてしまうバセドウ病。

振戦(ふるえ)を脳で制御できなくなってしまうパーキンソン病。

理性が弱まり本能が露呈してしまうタイプの高齢者の認知症など。

これらはもしかしたら陰虚の特徴を持つ疾患の一端と言ってもいいのかもしれません。

いかがでしょうか。

最近、病気とまではないけれど、なんとなくソワソワしてしまって落ち着かないな、、、

そう思うようなことがありましたら、心落ち着くような好きな場所に出掛けたり、またはそうした人や物、食に触れたりなど、

そんなふうにして陰を補い、こころの寧静を計って頂くのも一つの養生かと思います。

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