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スイートピー~門出の花~



中二から不登校になったむすめが中学校を卒業した。

クラスメイト。。。と言っても三年生になってからは一度も登校したことがなかったから一度も顔を合わせたことのないクラスメイト達が午前中に卒業式をすませた
やわらかな安堵感と春霞のような不安が残っているような午後の体育館に
限られた少人数の先生方と同じように学校に来られなかった数名の生徒とその父母が集まり小さな卒業式が行われた。

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校門まで来ると腹痛が起こり中に入ることができなかった中学校の校舎
あんなに嫌がっていた校舎に入れたことだけでも
すごいこと。

それがどんなにすごいことかっていうのは
本人と本人のことを知っている人にしかわからない。

むすめは壇上に上がることができず
卒業証書だけもらって帰った。

どんな思いを抱えているのかわからないけれど
帰り道「行くんじゃなかった」とつぶやいた。


わたしは一人で行くことを考えていたし
「行きたくなかったら行かなくていいよ」とどちらにするか自分で選ばせた。
むすめは迷って迷ってわたしについてきた。

迷って迷って学校に来たものの
やはり嫌なものは嫌だったのだろう

複雑な十五歳の心境はよくわからないけど

つらいし
くるしいし
抜けたいけど抜けられない
そんな感じの重たいものが心の中にある
ということはよくわかる
でも
どこがどんなふうになっているのかわからない
どうしてあげたらいいのかわからない

本人すらわかっていない。


なんだか悲しい気持ちになってきた。
とりあえず卒業証書はもらったものの
わたしの中にも
もやもやしたものがあることに気が付いた。

もやもやと一緒にいた
もやもやを感じ続けた。

わたしは卒業証書をもらって
むすめが嫌で嫌でしかたなかった中学校から
わたしも卒業したかった。


だから今日は
気持ちよくさようならをしたかったんだ!


もうこれで決別する!

私の中から「おめでとう」と声がした。
ここまでよく来たね、ご苦労様。

もっと自分にやさしくなっていいんだ。
もっともっと自分を讃えてもいいんだ。
よくやったんだよ、ってね。


むすめの重さにひっぱられることなく
わたしはわたしに
おめでとうをたくさん言った。

むすめにも言ったけど
むすめ以上に自分に伝えた。

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ケーキ屋さんに行ってケーキを買って
花屋さんに行って花を買った。


赤いスイートピーの花。

スイートピーの花言葉は門出。

心に春が来た日に。



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昨年の3月から5月まで緊急事態宣言で学校が休校になり
夏までは分散登校、マスク着用、体育も音楽も制限されて
たくさんの行事が中止になり修学旅行も中止。

コロナの影響だけではないかもしれない
他にも理由があって、
コロナが引き金になって増えたのかもしれないけれど

むすめのように登校できなくなったお子さんが今年はとても多かったようだ。

みんなと同じようにできない子供たち

というのはみんなと同じにできないだけで、
個性もあるし学力もある才能もある
不登校の理由もそれぞれだけど

これ以上傷つかないように
小さなつぼみを
自分という花が咲くために
子供たちはつぼみを頑なに守っているんじゃないだろうか?


いつしか「自分」という美しい花を咲かせることができるように
自分なりの守り方で。

子供たちが必要以上に
自分を守ろうとすることなく
自分を責めることなく
自分をののしることなく

花を咲かせることができる
やさしい世の中になりますように。
やさしい人たちがたくさん増えますように。



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