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スタートアップの評価基準(無料記事・約1万字)

ウメキワークスでは毎週金曜にその週の資金調達案件を列挙し、勝手にレーティングしていくというありがた迷惑?なコンテンツが中心となっています。

IPO記事の場合はレーティングはないのですが、未上場の資金調達では「A〜D判定」を付けています。

スタートアップを評価する際にどのような要素や指標をみているのか体系的に教えていただける記事があったら拝見したいです。

読者からこのようなメッセージをいただいたので、一度まとめておくと良いかもしれないと思いこの記事で紹介します。

あくまでも評価基準の話なので、ウメキワークス格納記事ですが、本記事は無料とします。未購読者の方も、こういう基準で見てるのね。と参考にしていただきたく。

本記事の対象読者:各ビジネスモデルやスタートアップへの評価ロジックを知りたい、経営者、投資家など

おさらい:レーティングの意味

ウメキワークスではA,B,C,Dのレーティング基準があります。これは昔は各記事の冒頭に注記していましたが、昨今は割愛しています。あくまでも「そのラウンドで出資した投資家のリターン」がどうなるか。という基準での判定となります。

A:投資額2倍以上で回収可能
B:投資額1-2倍以内で回収可能
C:投資額元本割れ濃厚
D:回収不能

ウメキワークスは2016年2月から執筆しており、もう丸5年ほどになります。近年の傾向としてはD判定が激減しています。流石に0円回収というのは、実例としてもあまり多く聞かないため。

ただし、事実上リビングデッド(辛うじて生きてるが成長してない)企業も多く、こういうスタートアップへの資金を投資家はどう回収するのか。ファンド満期までに、ダウンラウンドでも売却して少しでも回収する必要があります。C判定はリビングデッド候補と言い換えることもできます。

そういった結末に終わった投資案件は、特にニュースバリューもないので、メディアで見かける機会はほぼないでしょう。

A判定はアーリーステージの場合はまだ2倍以上でのバリューアップでM&Aの可能性がありますが、シリーズB以降でのA判定は基本的にIPOを想定。

B判定が一番多いですが、絶対跳ねる!までは思えなくても、そんなに悪いとも思えない。どちらつかずの考えなので、ニュートラルよりはポジティブめにしておこう。という思惑が働きやすいです。

2018年頃から「ダウンラウンドM&Aで優先株式で元本が保護されるのでB判定」という記載も多用するようになりました。優先株が主流な現在において、ダウンラウンドでのM&AはOrigamiとかにならない限りは、優先株株主の元本は返ってくるケースが多く、ゆえに「1〜2倍」の倍率が実現する可能性が高い。

元本回収ができなかったM&Aは、今後おそらく暗語で「Origamiになった」と言われるのではないでしょうか。「Origamiする」という動詞が、回収不能だったことを意味します。

ただし、近年はスタートアップのM&Aが減少しています。スタートアップ全般のバリュエーションの高騰と、過去の国内スタートアップM&Aが高い確率で大幅な減損となり回収不能だったことから、スタートアップのM&Aに積極姿勢な買い手が減ったことが主な要因と考えます。

特に100億以上のバリューで買収できるプレイヤーは国内では限られており、50億以上の買収でも年に2,3件あるかないかです。シリーズAでポスト10-15億程度のスタートアップを20億前後で買収するプレイも最近はほぼ見かけず、M&Aの出口はかなり閉じてきている印象があります。

よって、2021年の国内スタートアップをめぐる環境は「IPO or 事実上Die」という状況で、小粒で草コインになっても「上場努力義務」を果たすためのIPOをするか、M&Aで売却することも、清算もできずにリビングデッドか。の2パターンへの大別が進んでいると思われます。

今後東証の市場区分が変更されるとはいえ、IPO件数が今の2倍になるとかそういうことはないはずなので、スタートアップの数は増えているが、出口の数は比例して増えているわけではないので、「出口難易度」は上がっている印象です。

海外プレイヤーによるM&Aが増えてくると良いでしょうが。

起業家評価

投資家がスタートアップに投資する際には「プロダクト(事業領域)」と「経営者」この2つが主に見る項目のはずです。

経営者評価に関しては、ウメキワークスでは今まで積極的に字数を割いてきませんでしたが、その背景をお話します。

前提として、その経営者のことを「知っている度合い」がかなり異なるので、特に「知らない経営者」のスタートアップの場合は、知らないので、事業領域のみで評価します。

「知っている経営者」は知っている度合いが異なり、下記のレイヤーです。

1.1on1で1時間程度以上話したことがあり、FBフレンドにいる
2.ピッチとかを見たことがある
3.メディアで見たことがある
4.SNSで見たことがある

上から「知っている」順であり、1時間程度以上話したことがある場合、最低限ではありますが、どんな性格なのか。手堅い系なのか、ホラ吹き系なのか。ジジ殺し系なのか。など、その起業家が持つ特性を把握します。

例えば、delyの堀江氏などはこの3つの要素を全て持っていると、五反田のミート矢澤でランチした際に最初から感じ取りました。強気なことを言って、バリュエーションがすごい高まることがあっても、手堅さも持ち合わせるので、なんとか帳尻を合わせてくるはず。みたいな。

注:「ホラ吹き」は必ずしも悪口ではなく、スタートアップ起業家が「大風呂を広げる」ことはある種の常識です

このように、直接話したことがある起業家だと、一次情報として性格を感じ取ることができます。

私は起業家の話したことを全て真に受けて信じることはないので、話半分に聞くのですが、その後言っていたことが実現されていると、すごいなと感じますね。クックパッドが自滅した感が強いとはいえ、delyはバリュエーションではクックパッドより上で、打倒クックパッドは果たしたね。的な。

2のピッチでの説明の仕方やQ&Aの応答でもある程度キャラが見れます。

3はメディア露出が多い起業家は良くも悪くも目立ちますので、その露出の仕方が自社の採用やプロダクトを伸ばすのにプラスになると思ってやっているのか、承認欲求を満たすために、自社のためになるという建前を主張して露出しているのかを見極めます。

昨今はあまり多くないですが、後者の場合は、滲み出る承認欲求の強さを感じてしまうので、結構気付きます。そういう場合、社会のためというよりは自分のために事業をやっているので、あまりグロースしなそう。

4はSNSで影響力が高い起業家はマーケティング力に長けているともいえ、自社の認知や採用力向上に寄与しているので、SNSが弱い起業家よりも評価できます。一方で、ディ・ブランディング(マイナスブランディング)になっている場合もありますし、NewsPicksでのコメントが的外れだったり、「俺凄いだろ?」系の怪獣オレガーだと、社員が辟易してそうと想像して、マイナス評価になります。

その起業家への印象が「ポジティブかネガティブかニュートラルか(というか情報なし)」が1-4の経験を踏まえ無意識的に反映されます。あくまで私個人の印象でしかないので、会ったことなくて3,4で「この起業家微妙だな」と思っても、実際に会うと「凄いいいやん!」と思って評価が変わることもあります。

ウメキワークスのレーティングはそこまで影響力があるとは思いませんが、たまに「次のラウンドに影響する」と言われることもあるので、起業家のみなさんは機会があれば私とお話ししてみると、C判定がA判定に覆ることは容易にあると思います。(偉そうに聞こえたら申し訳ないですが、イベントはBDashCampだけ昔は行ってて、そこでお話しした情報とかがレーティングには反映されます。あまり個別アポは受けてないです)

1.SaaSの評価

ここからは各ビジネスモデルにおける評価を詳細にしていきます。

まずは現在の主流となるSaaSからです。

前提として私は、特にここ1-2年は上場企業のカバーを強化し、国内と米国のハイテク上場企業の動向に詳しくなり、スタートアップよりそちらの方が詳しくなっている気もします。

よって、未上場から上場市場を見据えて、そこから逆算した上での評価の精度が上がっているはずです。

一方で国内の投資家、特にVCは未上場の専門家であり、上場市場の動向までしっかり把握しているVCは数少ないと思われます。SaaSに限っていうと、SaaSに強いVCは上場SaaSの動向にも強いと思われますが、オールジャンル系VCだと上場市場のカバーが弱いのではないか。という感覚値があります。

VCにとって上場市場への感度が低いと、EXITプランを見誤り、もっと高いバリュエーションで売ることができたのに、利幅を取り損ねることになりかねないので、もっと上場市場への感度を上げることをオススメしたいです。

上場市場への感度、という点で良い踏み絵となるのは「フリーの時価総額5,000億円をどう思うか?」という質問です。

ほとんどのVCは「高すぎる」と答えるはずですが、上場株投資家はそう考えていないので、5,000億円のバリューが付いているのです。

前提の話が長くなってしまいました。SaaSの評価に関しては、下記のロジックです。

シリーズAまで:対象市場の規模感>プロダクト優位性の想像
シリーズB以降:MRRと対象市場の規模感と推定解約率

ざっくりこんな感じで、Aまではその市場でそのプロダクトってどれくらい使われそうかな?を想像し、「凄い使われそう!」ならA判定、「まずまずニーズありそう」ならB判定が多いです。SaaSでC判定以下は少なそう。

B以降はトラクションの一部が開示されていることもあるため(導入企業数など)、そこからMRRを予想します。

そして各VCに聞いているわけではないですが、謄本なども照らし合わせると、バリュエーションはフォワードPSR(今期予測)で10倍程度が未だに相場なのではないかと思います。この点、異論ある方いたらぜひ突っ込んでください。

海外のSaaSは売上成長率50%以上だとPSR30倍以上が現状は相場であり、PSR10倍以下はよほどポンコツ企業です。日本のSaaSも大抵は10倍を超えています。

スタートアップの場合は上場企業より売上規模が小さいので、売上が大きい上場企業と横並びで評価するのは妥当とは言いません。

しかし、売上成長率50%以上でもPSR10倍というのは、ちょっと割安すぎる気もします。

SaaSの場合は一番数字が読みやすいこともあり、バリュエーションを予想した上で、そのスタートアップがIPOに到達できるのか。IPO後のバリュエーションはどれくらいになるか。を想定した上で、自信ある場合はA判定、ちょっとわからんなという場合はB判定にしていることが多いです。

実際のバリュエーションは謄本を取らないとわからないので、バリュエーションが思わぬ高値なことも稀にありますが、SaaSに限っては未上場でオーバーバリュエーションな案件は、2021年時点ではあまりないと感じます。

参考までに、2021/1/4時点の国内上場主要SaaSの時価総額/PSR/予想売上成長率は下記の通り。

フリー:5,000億円/52倍/+40%
ラクス:4,300億円/23倍/+26.5%
AI Inside:2,800億円/62倍/+181%
マネフォ:2,400億円/16.5倍/+31%
Sansan:2,170億円/13.5倍/+20%
プレイド:1,300億円/25.3倍/+30%

多少バブル的な銘柄もあるとはいえ、SaaSの場合は解約率が低ければLTVの予想がしやすく、よってその分上場市場では急速に将来価値を織り込まれやすいのだと思います。

SaaSは数字が読みやすく安定性が高い。これは、投資家からすると非常に重要なことで、その安定性の高さは株価に多少のプレミアムを支払っても良いほどのものです。

なので、シリーズCやDで売上20億以上あるようなSaaSは成長率が50%以上ならフォワードPSRが10倍以上、たとえば15倍とかは許容しても良い気がします。

ですが、シリーズC以降の資金供給プレイヤーが限られているので、投資家側にバリュエーションを上げるインセンティブがなく、結果として人気ディールでも、好調な上場株並のPSRは許容されていないはずです。

2020年代のハイテク市場は国内においてもSaaSが最もホットでIPO件数も増えるはずです。私は「解約率の低そうなSaaS」は極力高評価でプッシュするようにしています。低評価にして将来IPOしたら、恥ずかしいので。

VCも主幹事も、未上場ラウンドからもっとSaaSのバリュエーションは上げて良いと思う。上場市場との評価に乖離があるので、公募とセカンダリーの株価の差が広がりやすいのではないでしょうか。

VCにとってバリュエーションが釣り上がるのではリターンの低下を意味するので本望ではないはずですが、発行体や上場市場の視点で考えると、もっと強気で良いのではないか。

2.B2Bの評価

ここでは「SaaSモデルではないB2Bスタートアップの評価」について。

SaaSはサブスクリプションですが、言い換えると悲SaaSはスポット案件が多く、それが大企業からの少ない件数を受けるのか、中小企業から多めの件数を受けるのか。という違いで、私の表現の仕方としては「大企業向け」「SMB向け」と呼びます。

大企業向けは正直外からは評価できないことが多いです。ソフトバンクから2億円程度の案件があるかどうかは、外からは全く金額感も想像できません。ソフトバンクから3Q累計売上1億円で全社売上比率60%で上場したのが、ニューラルポケットです。

こうした大企業からの受託で数億円の売上が立ち、AIなど株式市場で人気テーマだと、IPOの座組み次第で株価がすぐ吹き上がるので、結果として未上場ラウンドの投資家はきっちり回収できます。

しかし、そういう案件になるかどうかを未上場時に見極めることは難しく、強いていうならばそのスタートアップは扱うテーマ(AIやブロックチェーンなど)と経営陣の政治力やセールス力から推計して判断する程度です。

株式市場でのSaaSと非SaaSの評価の差は歴然としており、大抵の非SaaS案件は過剰に絞り込んだ流動性で初値高騰を演出しますが、チャート的には上場ゴールです。HEROZ、RPAなどがこれに当たります。

受託ではないB2Bモデルもあり、B2Bのマーケットプレイス型事業の場合は、GMVのグロースポテンシャルとプロダクト優位性を見て判断します。

例えば、建設系だと市場が大きいのでGMVポテンシャルある。みたいな感じで。

3.コマースの評価

コマースもパターン分けする必要があります。

1.マケプレGMV手数料型(ex.メルカリ、BUYMA)
2.仕入れ販売型(ex.ZOZO)
3.D2C型(ex.北の達人)

収益構造がそれぞれ異なり、マケプレはメルカリの手数料10%みたいな。仕入れ販売型はグロス計上かネット計上かで異なりますし、マケプレとミックスされる場合もありますが、「ユーザー購入価格ー仕入れ価格=粗利」、D2Cの場合は自社で製造販売が一貫しているので、普通の仕入れ販売型よりローコストで粗利率確保しやすい。となります。

上場市場を見ていると、仕入れ販売型はバリュエーションの上昇速度が特にコロナ以前は緩やかというか、あまり評価されていませんでした。理由としては、仕入れにせよ自社製造にせよ一定の原価が発生するので、いくら売上がスケールしても、利益率の改善がSaaSやメディアと比べるとしょぼくなりがちだからという点が主な要因かと思います。

率直にいうと、他セクターと比べて、投資家目線では特にVCが考える回収期間である5-7年程度のリターンで考えると、魅力が薄いです。

コマースは薄利なので評価されにくい。という大前提がある中で、スタートアップのEC関連サービスは仕入れ販売型かD2Cのどちらかが多く、ここ2,3年はD2Cが流行りです。

D2Cは特定商材に絞り込むことで立ち上げやすいということもあり、TAMが限定されがちです。理想としては特定商材で強いブランドを作った後に、横展開でTAMを拡大することかと思いますが、いくら仕入れ直販より利益率が高いとはいえ、SaaS的なPSRを許容するには無理があります。SaaSより利益率低いし、安定性もないので。

D2Cに対する評価としては、サブスクと相性が高いものだけ、数字が読みやすいので、私は評価を高めにしています。化粧品、シャンプー、サプリなどはサブスクと相性が良いです。

SaaSはバーティカルなものが立ち上がりやすいですが、コマースはGMV勝負になると総合型がスケールしやすいので、Amazonや楽天が強い。とはいえ、ニッチ領域も成立はするのですが、SaaSほど細分化されないので、数少ないプレイヤーが相当な時間をかけてポジショニングを確立する市場だと判断しています。

ある程度市場規模がある分野で、ナンバーワンになれるポテンシャルがあるか。がスタートアップのコマースを評価する上でのポイントです。

4.メディアの評価

特に国内の上場市場を見ると、メディア企業の方がコマース企業より数が多いです。2倍以上あります。

コマースと異なり原価が比例しないのでスケールするとすぐに高利益体質になることが主な要因と考えられます。例えば、ミンカブは売上40億営業利益7億、売上成長率43%で時価総額500億あります。利益率が高くても、売上成長率低いと時価総額は下がっていきますが。

メディア企業のマネタイズは「広告」か「課金」に分かれますが、基本的には広告モデルが主流です。メディアの評価の公式としては下記を考えます。

売上=ユーザー数(対象市場の大きさ*訪問頻度)*ARPU(対象市場の広告価値)

言い換えると、対象市場は大きい方が良いし、毎日使われる方が良い。子供対象よりも、富裕層対象のような単価が高い領域が好ましい。と言えます。

例えば、音声だと対象市場はほぼ全人類となります。ARPUが低くても、ユーザー数が多いプラットフォームになれば勝算が見えます。

一方で一休を例に上げると、高級旅館に絞っているので対象ユーザーは減りますが、高APRUを維持することで高い収益性が見込めます。

ユーザー数を取りにいくか、ARPUを取りに行くかという話で、多くのメディア系スタートアップは実は中途半端なポジションニングになっていることが少なくなく、それゆえIPOしても売上が伸びずにバリュエーションも中途半端(500億以下)になっているケースが多々あります。

ユーザー数*ARPUの最大化のバランス構築が上手いサービスが、株価を伸ばしている気がします。

あくまでそういった理論上ではありますが、stand.fmのような音声メディアはユーザー数最大化ポテンシャルがあるので、ARPUが低くても高粗利企業になる可能性があります。クラシルのdely、コスメのLipsは、その領域のスマホ最適化なので、市場からの逆算としてはそれぞれピーク時のクックパッド、アイスタイル程度のアップサイドポテンシャルは最低限ある。

こういった話を踏まえて、メディア系スタートアップの評価ロジックの話に戻すと、対象市場がニッチなものは、高ARPUの可能性がないと評価しづらいです。

例えば、美容整形のトリビューなどはニッチですが高ARPU(厳密には高単価アフィ?)なので、成立すると思います。ニッチ市場だと純広告よりはアフィになりがちで、その際にはアフィ単価が売上のアップサイドを大きく左右すると見ています。

5.FinTechの評価

まだ日米共に上場企業は少ないですし、スタートアップ企業も少ないですが、今後重要になると思うのでセクターとして独立して取り上げます。

既存の金融業は「銀行」「証券」「保険」「決済」などがありますが、基本的には預かり資産額やトランザクション(GPV=Gross Payment Volume)がKPIになるはずです。

なので対象市場の規模がまず重要ですが、大抵はかなり巨大な市場を狙うプロダクトであることが多いです。

昨今沸騰の仮想通貨市場はBTCの時価総額の上昇と共にGPVが増えますから、売買の場となる米国で言うとVenmoを提供するPYPL、CASH APPのSquare、上場が噂されるCoinbaseなどは価値が高騰しやすい。国内ではマネックス子会社のコインチェックに上場観測があります。

ただし、仮想通貨市場の場合はボラティリティが激しいので、冷え込めばGPVが落ちるし、構造的に現状はさほど儲からないのでは?というbitFlyer加納さんのツイートもありました。(各取引所のPL比較ツイートのソースを探せなくなってしまった)

資産運用市場でいうと、規模も大きいですし、ウェルスナビが12月にIPOしたばかりですが、公募価格から一時は3倍になるほど沸騰しています。これはロボアドで毎月積み立てを選択するユーザーが多いという事実上サブスクの性質があり、解約率も1%程度なのでSaaS的なバリュエーションが可能と見ます。

売上成長率も56%程度を見込み、PSRで50倍程度付いています。12月決算なので、2月決算で今期予想が出て、PSRはもう少し落ち着くと思いますが。

同じ資産運用市場でも、ウェルスナビのようなサブスク的な性質があるのか、仮想通貨取引のような積立比率が低くGPVボラティリティが高いのか。投資家視点では、前者の方が安定性が高いのでプレミアムを支払いやすい。

決済に関しては市場規模が相当大きいので、時間をかけてGPVを積み上げていけば、バリュエーションが上がっていくことをGMOPGが証明している。

なのでFinTechはある意味メディアビジネス的な捉え方で「ユーザー数最大化」*「低ARPU」の市場がオーソドックスな勝ち筋ですが、「少ないユーザー数」*「高ARPU」の成立も気になっていて、この辺はファクタリングのOLTAとかが高粗利でハイバリュエーションを付けることができるか?に注目しています。

方程式的には、メディアの考え方と近い気がしました。少し自信ないのでw 有識者の方のツッコミがあればぜひ。

6.シェアリングエコノミーの評価

今後IPOが増えそうな分野で、米国では12月にAirbnbとDoordashがIPOしたばかり。先発組のUBERやLYFTに加えて「シェアリングエコノミーセクター」が成立しつつあります。

これも本質的にはネット上で何かを買っているということで、コマースになります。そして、ほとんどの場合はプラットフォーム型なので、GMV手数料モデルです。よって、GMV最大化ポテンシャルがどれくらいあるか。が一番の評価基準になります。

個人的な判断としては、自宅の空き時間をシェアするAirbnbはともかく、広めのスペースをシェアするスペースマーケットのGMVポテンシャルはさほどない気がしていて、それならばフードデリバリーでUBERやDoordashがIPOしているので国内だと最近愛用しているチョンピーとか、単発バイトをスマホアプリ最適化したシェアリングであるタイミーとかが市場としては大きめでアップサイドポテンシャルがあると見ます。


以上です。こんなことを考えながら、レーティングしてます。

もちろん、投資家によって見方も違うと思いますし、特にそのプロダクトがリーチする市場や浸透率の考え方にはズレがあると思います。

そして大前提として、私はVCとしてそれらの案件のデューデリをしているわけではないので、あくまで公開情報からサイトやアプリを少し触ったり、リリース記事にあるファクトを元に数字を組み立て、ざっくりした推論による判断に過ぎません。投資案件としてしっかりデューデリした場合は、また違った結論(レーティング)になることも多々あるはずです。


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