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株価の6つのドライバー(無料記事)

私の記事を読む方は、おそらくハイテク株の決算に興味があるかと思います。twitterなどでも「この決算すげー」とかそういう呟きをみかけることがありますが、「すげー決算」と「株価が動く決算」は必ずしも一致しません。

私は一応投資家なので、「株価が動く決算」に興味があり、メディアやtwitterで持て囃される「すげー決算」でも、「株価的にはクソ決算」である場合は、多々あります。

私が決算をチェックする中で、どういう点を見ているのか。

言い換えると、どういう点が株価のドライバーになり得るのか。

この記事ではそこに焦点を当てて紹介します。無料記事です。

基本的なキーワードは「成長」であり、その成長を下記の4つの尺度で見ることです。

あと、大前提として「会社予想に対する実績」「アナリスト予想に対する実績」これをクリアしてるかを見ます。

米株の主力株ほど「アナリスト予想に対する実績」もしっかり見ますが、日本株の小型ハイテクの場合そもそもアナリストカバレッジがなかったり、あっても数名なので、日本株の場合はほぼ無視。

1.売上

特に米国では最も重要であろう指標が売上成長率。規模が大きくなればなるほど、同等の成長率を維持するのは難しい。ゆえに「成長率の再加速」はその企業に何か大きな変化が起きつつあることを示しており、株価の一段上の成長が見込めます。

鈍化の場合も、急激な鈍化と緩やかな鈍化の2種類あり、急激な鈍化の場合は株価叩き売られたり、S安までいくこともあるでしょう。

売上成長率の重要性は日米ともに変わりませんが、米国ハイテク株だと50%、日本ハイテク株だと30%が超グロース株の指標と私は定義しており、共に市場で意識されているラインに思えます。

売上で注目すべき点:売上成長率(とその再加速)

2.営業利益(EPS)

次は営業利益です。米株の場合はEPSでモニタリングするのが一般的。

営業利益は売上と比較すると相対的に「作る」ことができます。広告費や人件費といった変動費を絞れば営業利益は増やせるのです。

特に米国の中小型ハイテクグロース株では「利益を出すなら先行投資して売上成長率を追求せよ」というカルチャーがあります。下手に黒字で売上成長率30%よりも、赤字で売上成長率50%の方が評価されます(PSR比較すると一目瞭然)

しかし、そのカルチャーは実は金融相場でのことであり、今後テーパリングが発表され金融相場が縮小し、業績相場へ移行する際には利益の重要性が金融相場より増す。と私は考えています。

SaaSであれば売上成長率単体よりも、+営業利益率で見る40%ルールを満たしているとか、そういった指標です。

ここ数ヶ月、米国で30%前後の成長率の黒字企業が新高値を連発していますが、その背景には業績相場への意識があると推察します。

赤字企業であればEPSをアナ予想ミスしても、許されることが米国市場では多々ありましたが、今後は黒字企業のEPS成長率が評価される可能性が出てきています。

日本株では謎の黒字信仰が根強く、一旦黒字転換した企業がまた赤字転落すると、嫌気されて株価下落しやすいです。一旦黒字転換したら、しばらくは黒字を続ける覚悟を持った方が、株価は維持されやすいでしょう。

営業利益で注目すべき点:EPS成長率(米株)、黒字転換、赤字転落、黒字幅赤字幅の縮小拡大

3.YonY

Year on Year、前年同期比の略。

一般的に注釈なく「成長率○%」と記載される際は、ほぼYonYのこと。

YonYも単純に高いと良いとかではなく、前年同期にイレギュラーな要因がなかったかをしっかり確認。例えば、2020年4-6月期は広告系はコロナショックで決算が悪かったので、2021年4-6月期のYonYは異常値的に高く出やすい。的な。

各QでのYonYをトラッキングしていくのをお勧めしますが、「今回のQはすごい高い、すげえ!」という場合は、前年同期に悪かった要因があるのかに要注意。M&A実施で連結されたため、YonYが異様に高めに出ることもあります。オーガニック成長かM&A成長か。の場合分けも大事。

あと例外的に、会計認識方法の変更により、成長率が変わったりする。FY21Q1のメルカリはUSの会計基準変更の影響で、高い成長率(50%台)が出たが、従来の会計基準だと30%程度となり、いつもの成長率と言える。

YonYで注意すべき点:前年同期のイレギュラー要因、成長の種類(オーガニック、M&A)

4.QonQ

Quarter on Quarterで前四半期比較。

QonQはさほど一般的に重視されている指標には思えず、特にメディア系、コマース系は季節要因が明確にあります。広告出稿は10-12月が多い。アパレルは冬服の方が夏服より単価が高いから冬の方が売上が増える。など。

よって、メディアとコマースのQonQを見てもあまり意味がない場合もある。

一方でSaaSはサブスク比率が高ければ、積み上げなわけですから、QonQで見る意味は大いにあります。SaaSのQonQが加速しているのか減速しているのか。YonYで見るより、よほど意味ある数値かと思います。

あとゲームは2021年4Qのサイバーのウマ娘のように「QonQ減収減益」もあるので、その場合はいくら通期決算の数字がすごくても「ピークアウトの可能性高いね」という判断になるので、株価は軟調になります。

QonQの重要性に気づかないと、「サイバーの決算、めっちゃすごい!買いや!」といって買ったけど、全然上がらない。という目に遭います。これがウマ娘のQonQが増収増益だったら、株価上がったと思います。

QonQで注意すべき点:SaaSの場合、加速か減速か。減速角度を見極める。一応、季節要因は考慮する

5.(日本株のみ)通期ガイダンス進捗率

米株では通期予想の進捗率を気にするというカルチャーはなく、毎Qが勝負という感じで、ガイダンスは次のQを出すのが基本で、たまに通期も上方修正を出す。調子良い企業は、毎回上方修正出す感じ。

日本株は通期ガイダンスを開示するケースが多く、決算説明会資料でも、通期に対する進捗率がどうか。という点にフォーカスしたスライドが散見される。

この進捗率が、上場後に歴史ある企業の場合、例年より良いか悪いか。で株価が反応する。進捗率が良ければ、次決算での上方修正期待があるし、悪ければ未達リスクを感じる。

上場直後の企業の場合、例年のデータがないので、投資家の判断で「このビジネスモデルと季節要因の有無から、このQだとこの程度の進捗率は欲しいよね」みたいな感覚から、少しでも足りないと、暴落していく。

2020年IPOのロコガイドが暴落していったのはこのパターンだと私は思っている。進捗率が悪い場合は、悪いなりの丁寧なIRをしないと、投資家は逃げていく。

通期ガイダンス進捗率で気にすべき点:例年と比較して良いか悪いか。新規上場の場合、ビジネスモデルと季節要因からそのQまでにあるべき進捗率の仮説を持つ

6.イベントの有無(M&A、公募売出、自社株買い、一時的な利益)

最後にイベントの有無です。イベントは一過性のものですが、株価がアクションする大きなドライバーになり得ます。

まずM&A。米株ではよくありますが、大抵は発表後にM&Aする側が株価下落します。特に、M&Aする側の時価総額に対して、比率が高い企業であれば下落する確率も高い。のれん償却などもありますしね。小粒なM&Aの場合、影響が軽微なことも多々。

稀にIRが上手い場合は、M&A発表後でも株価高騰します(例.2021年2QのSQによるAPAY買収)M&Aは噂だけでも出来高つけて暴騰します(例.2021年10月のPYPLによるPINS買収の噂)

次に公募。大抵は発表後に株価下落。数%〜10%程度新株を発行するわけで希薄化するわけですから、よほど業績の好調な変化がない限りは、1株あたりの価値が下がるのはロジック的に当然です。

しかし、日本のマザーズ企業の場合、株価高い時期に公募をやって、1年もしないうちに株価半減。というケースもあります。特に日本企業で時価総額1,000億前後の企業に多い(例.2021年GAテック、メディアドゥ)一方で稀に公募発表後に株価上昇する場合もある(例.2021年8月マネフォ)が、ロジック的には1株あたりの価値が下がるわけで、公募発表の直後は下がるのが普通。

そして売出。売出は公募と異なり、新株発行はなく、経営者やVCなど既存株主による売却。主にIPO直後の企業によるイベント。一時的に供給過多になるので株価下落しやすいが、本質的には業績変化がなければ株の価値は変わらない。売出による下落は、公募による下落より回復が早いと思われる。(例.2021年8月ZI)

対策としては、その企業の株主構成から、将来的な売出圧力がどの程度あるかをあらかじめ把握。理想としては、特に日本企業の場合「海外売出」と称して、売出を発表するも、引き受ける先がほぼ海外機関投資家と握れているディール。

ファンダやストーリーに自信があれば、売出による下落は押し目買いのチャンスともいえる(2021.10月DLOの公募下落後はいかに)。PE比率が高い銘柄は、将来的な売出圧力が高いので上値が重い(例.2021年6月IPOのPAコンサル)

自社株買いもたまにあり、発表されると株価が上がることが多いですが、グロース株ではあまり見かけないアクションです。「1株当たりの当期利益」が増加するため、1株の価値が上がるので株価が上がるというロジック。(例.2021年9月のグリー、2021年10月のFB)

最後に一時的な利益。株式市場では、持続可能性に対する評価が高く、ゆえにSaaSが今高いバリュエーションが許容されている。

ゲーム(例.2021年4Qのサイバーのウマ娘)やキャピタルゲイン(例.2021年1Q2Qエムスリーの中国案件の数百億円の利益)は一時的要因と判断されがちで、これらによる一時的な利益は、実は株式市場からはあまり評価されない。

一時的な利益はスルーとして、M&Aや公募も一時的に株価は落ちる確率が非常に高い、将来の成長のためには必要なアクションであり、中長期で見ると回復していく場合も多々あるので、長期で見るとノンホルダーにとって、M&Aや公募での下落は押し目買いのチャンスだが、そこから長い年月浮上してこない銘柄もある(例.2020年8月TDOCによるLVGO買収)

以上です。正直私は米国株の場合、これらの数字を見ただけで、ビジネスモデルを詳細な点まで理解してなくても、取得したりします。

株式投資で利益を出すための決算の見方は、企業の変化に気づくことです。

その変化を、売上、営業利益(EPS)、YonY、QonQ、(日本株だけ)通期進捗率、という5つの尺度で計測します。

このいずれかが持続可能性が高い理由で伸びていると、その企業が次の成長フェーズに入ったと判断され、株価が動きやすくなる確率が上がります。

そして6のイベントの有無で、時間軸によっては売却したり、新規でエントリーすることを考えます。

まとめ:時間ない人はここを読もう

最後のこの記事の重要な点として「決算はここを見ろ」という点をまとめると

1.売上:成長率と再加速の有無、減速の速度

2.営業利益/EPS:成長率と黒字転換赤字転落、黒字幅赤字幅縮小、米株は赤字企業なら無視でもOK

3.YonY:特殊要因を除御した成長率

4.QonQ:SaaSのみ見よう

5.通期ガイダンス進捗率:日本株のみ。例年比較と、IPO銘柄の場合はセクター特性を踏まえたあるべき数値の仮説を持とう

6.イベント:M&Aと公募はロジック的に1株あたり価値が減少する可能性が高いので、確率論的に短期では下げる(≒売り)、売出は一時的に下げても1株あたり価値は変化しないので、リバウンドはM&Aや公募よりは早い。一次的要因の利益に惑わされない

以上です。

あくまで、会社予想とアナ予想を実績決算でクリアするのいうのが前提。

他にこの指標見るべきでは?という指摘ありましたら、是非。

書き終わって気づきましたが、メディア企業の場合「KPI」も見るべきで、MAUやAPRUが予想に若干未達なだけで株価暴落することがあります(例.2021年5月PINS。売上EPSはOKで、MAU少し足りなかったけど大丈夫かな?と思いきや、暴落でした。)

他セクターでも銘柄によって重視するKPIがあり、SaaSだと「NRRが上昇」とかは良い兆候です。

本記事は無料ですが、10月から決算シーズン始まりましたが、主にこれらの指標に照らし合わせて、決算の「良い悪い」を分類していく記事を新高値投資マガジンでは毎週金曜は日本株、土曜は米国株を更新しています(開始して1年経った)

「サプライズ好決算」に分類することもありますが、この場合は特に米株では会社orアナ予想と実績のGap率が売上の場合10%以上あるとか、EPSのGapやYonYやQonQでの伸び率が異様とか、そういう場合に「サプライズ」判定としています。黒字転換とかもサプライズになる場合も。

私はこういう指標をもとに判断しつつ、あとは注目されてる短期トレンド(今だと脱炭素)とか、決算数字に現れてないストーリー(今だと旅行系がアフターコロナで戻ってくるはず)とか定性的な話も付記して、投資判断をしています。

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