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ITすらも軽やかにネタにする、落語家・桂文珍の凄み

4月7日、京都は久しぶりの土砂降りの雨。ロームシアター京都にて、「桂文珍独演会 JAPAN TOUR ~一期一笑~」が行われた。客席はほぼ満席、2000人ほどが来場したと聞く。
 
桂文珍の落語を生で聴くのは初めて。前座の桂文五郎、あいだに女道楽の内海英華をはさんで、「携帯供養」「夏の医者」「船弁慶」の三席。女道楽とか洒落ていて、いいですね。ちゃんと「芸」がありますね。いくらでも聞きたい。
 
そもそも落語に疎いので、「夏の医者」や「船弁慶」といった古典・大ネタについて、あれこれ語る資格は私にはない。とにかく面白かった、の一言です。
 
私が聞きたいなと以前から思っていた文珍さんのネタがあって、今回はそれを見込んで独演会に行ったのですが、期待通りやってくれました。IT用語が満載の創作落語「携帯供養」です。
 
以前テレビでも見ました。これと同じものではなかったと思うのですが、ともあれそのとき、IT用語を落語へ落とし込んでいるその巧みさが半端なく、度肝を抜かれた記憶がありました。今回は、これが目当てだったんです。
 
「携帯供養」とは、「永代供養」のもじり。亡くなった父の法事を行う寺を探して(ネットでだったかな?)、見つかったのが「ログ院」という寺。「アカウン塔」というのもあった。まあそこで、家族が集まって法事を行うが、なかなかうまくいかず、といったネタです。
 
あと、ネタとは直接関係なかったかもしれませんが(マクラだったかな)、ChatGPTの話題や、自動運転、ホイットニー・ヒューストンの「ホログラムコンサート」に行ったというお話まで(これにはあるオチがあるのですが)、まさに流行の最先端を取り入れたネタでした。
 
もちろん、客席の大半が、50~60歳代、あるいはそれ以上の高齢者。なかにはなんのことかわかっていない方もいたとは思うのですが、文珍さんはそれをかみ砕いてネタにされていた。
 
それで、なによりすごいのは、文珍さんがこうしたIT用語を、なんか知らんけど流行っているから取り入れてみたという中途半端な姿勢ではなく、いずれも深く理解したうえで採用していたと思わせることである。
 
たとえば、シンプルなものですが「ヘッドセット」。見たことがあっても、実際使っている人じゃないと、この言葉って出てこない気がします。それが、まごつくことなくさっと出てくる。
 
頭がいいんですね。まさに落語の秀才という印象です。それに、若さもあります。昔から、全然変わらないですよね。まだまだ聞きたいですよね。
 
ちなみに、私が見た文珍さんのテレビで記憶に残るのは、結構人気があった(と思う)「はなきんデータランド」(テレビ朝日)、西川きよしとの異色のトークショー「目玉とメガネ」(読売テレビ)、外国人が食べて嫌だった日本食を当てる「クイズ地球まるかじり」(テレビ東京)などなど。
 
あと、ファミコンのアドベンチャーゲーム「さんまの名探偵」(1987)で、文珍さんが最初に殺されているのが発見されるという設定は、笑えるけど、ある意味笑えない。
 
では、また次回。(梅)
 

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