見出し画像

ナメクジの行く先

母は、当時の私に「集中力がない」「堪え性がない」と言って叱った。
一つの事に集中しなさいと。

母が私を教育しなければならないと考えるに至った経緯は、おそらく小学校の通信簿で「先生のお話しを注意して聞く」に「○」がついていなかったためだと思われる。
ちなみに小さい頃は、お人形遊びが大好きで、日がな一日、近所の子からもらったお古のリカちゃん人形でずっと遊んでいた。
(両親からリカちゃん人形を買ってもらったことはない)
集中力がない方ではなかったと思うが、授業より周りの友達と遊ぶ方が楽しかったんでしょうね、当時の私。
ADHDなどの傾向もあったと思うが、高学年になる頃には、通信簿のこの項目はクリアできるようになっていた。

ともあれ、母は当時の私に、初夏のガマン大会を仕掛けてきた。
お題は「このナメクジがどこへ行くのか最後まで追いかけなさい」だった。
聞いたところによると「ご近所の子」は、なんかすごい集中力で、何かの観察をしたとか何とか。
そこで思いついたのが、ナメクジの観察だったのだろう。

みなさんご存知、ナメクジは超スローな動きの生き物だ。
おそらく秒速なら1mm程度?
当時、頭の中では「何言ってんの?自分は絶対やらないでしょう。なんでナメクジ?」と思ったが、ひとまず母の言われた通り、しばらく我慢することにした。
母は家に帰ってゆく。
私は暑い庭で一人、ナメクジが移動する先を見続けた。

だいたい20センチほど移動した頃、「ナメクジって全然進まない」と悟った私は、ナメクジの進行方向から芝生へ向かうだろうと推測し、指先でちょいちょいと芝生へ追いやり、母に「ナメクジは芝生の中へ消えていった」と報告した。
母は「本当にそう?お母さんはアンタが途中で投げ出したと思ってる」と、100%疑いの目で私を見ていた。庭が見える窓から私を見ていたのかもしれない。
その後のやりとりは、はっきりとは覚えていないが、当時の私には夏の日差しの下、庭で虫にさされながら観測するナメクジに一体何の意味があるのか、理解もできなければ興味も全くわかず。
ナメクジがどこに行こうが、本気でどうでもよかった。
お人形遊びなら朝から夜までずっと遊べるのにね。

今、子育てをされているお父さん&お母さん方へ。
あなたのお子さんに、ADHD(注意欠陥・多動性障害)もしくは、その傾向が疑われた時。
集中させたい、ひと所に落ち着かせたい、と思って、教育されているかもしれない。
だけれど、その子がナメクジに全く興味のない子なら、ナメクジの観察なんて全く意味がない。
どうぞ、その子が面白いと思うもの、興味を持つものを全力で応援してあげてください。

で、私の場合は強制されなくても、学年が上がると、自然とADHDは治っていきました。
焦らないで見守ってあげてください。

(なお、このエピソードはかなりライトな方です。ハードなお話しはまだ今度。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?