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閉鎖病院入院(超雑記)vol.2

☝︎前回の入院の話はこちらです。

まさかvol.2を書くことになるとは夢にも思ってなかった。
涙を呑み、もう戻らないと誓ったあの病棟に一年足らずで戻ることになるとは思っていなかった。

入院の理由は前回同様、自殺念慮など。

人って簡単に変わらないんだなと思った。
ただ、大きな自殺未遂はしていない、これは確実に進歩である。

前回はHCUからそのまま入院だったし、HCUの入院の手続きや同意なんかは全部他人がやってくれてかなり楽に入院したのだが、今回は入院の前に診察を受けたり、受付に行って書類を出したり貰ったり、検査をしたりなど色々大変だった。

ちゃんとしたルートの入院は今回が初めてだったので、社会経験を積めたのではないかな?と思った。

外来から病棟まで案内してもらい、前回とおんなじように、閉鎖病棟の灰色のドアではなく、その横のナースステーションの奥にある部屋に移された。

今回担当してくれる看護師さんは前の入院で見たことあるなぁ程度の関わりの人だった。
勝手に怖い人なのではないかな?
と思っていたのだが、話すとむしろ真逆で、明るくて面白いギャルのお姉さんだった。

私の行動ひとつひとつにツッコミを入れて、笑わせてくれた。
採血の時もずっと話しかけてくれてたので、生まれて初めて採血が怖くなかった。

諸々の手続きを終え、荷物チェックや身体測定も終えて、いざ...1年ぶりの病棟へ。

ギャルの看護師さんが、
「どう??笑 戻ってきたー!って感じがする? まあそんな戻ってきて嬉しい場所じゃないか笑」

と言った。本当にその通りだった。
戻ってきた喜びはなかった。そして戻ってきたー、という気持ちもなかった。
まるで昨日までここで生活してたのではないか?と感じるくらい、懐かしさがなくて、安心感があった。

ここでしばらくは安全な生活ができると思うとすごくホッとしていた。
普段の生活で自殺念慮を覚えてしまうと、木も手すりも首を吊るために存在してるように見えるし、刃物は全て私を傷つけるためにあるように感じられるし、高いところに行けば飛び降りなきゃいけないような気がしてくる。

病棟にいればそんな気を起こしても実行に移してしまうことはなくなるので安心できる。

部屋は前の部屋の近くで、窓際の部屋だった。
前は廊下側だったので暗かったが、窓際だと明るい日差しが常に入り込んでくるので、精神衛生上良さそうだった。

前にも入院したことある病棟だったので、病棟案内はなしで、すぐに入院生活がスタートした。

ものの、入院の前の日、私は色々な緊張から一睡もすることができなかったため、病室に到着するや否や爆睡した。
そんな私を見てギャルの看護師さんは呆れていた。

前回の入院で、「ストレスの対処方法を探しなさい。」と何度も言われたので、今回の入院では、看護師さんたちにストレス発散を聞き込み、メモすることにした。

昼過ぎになってようやく起き上がり、ギャルの看護師さんに、「お話ししたいです!」と声をかけると快諾してくれた。
部屋の近くにある個室で1時間くらい話をした。
その看護師さんが本当に本当に面白くて笑いの絶えない時間だったし、ストレス発散方法もちゃんと聞くことができた。

入院の滑り出しは順調だった。

夕方くらいになり、以前お世話になった看護師さんたちに、「いや〜実は...また入院になっちゃって〜。よろしくお願いします。」と挨拶をした。

「懐かしい顔だ〜!どうしたの?」
「あら!また会った時話しかけさせてもらうね!」
「久しぶり!」
と言ってもらえた。
看護師さんたちは私のことを覚えてくれていてすごく嬉しかった。


入院1日目の思い出はこれくらい。
前回同様、3ヶ月いたので細かく書くとキリがないので、印象深かった出来事だけ書いていく。


入院2日目になると、1日目にはいなかった看護師さんに挨拶したり、ストレス発散方法を聞いたりしていた。
3人分集まったので、ギャルの看護師さんに言うと、「まだ3人?笑」と言われ、さらにはナースステーションで他の看護師さんと
「まだ3人らしい笑 先は長いね笑」
などといじられていた。
(※悪口ではなく、私のキャラクターや看護師さんの関係性の上でのいじりなので、全く問題ないし、嫌ではないです。むしろ友達のようにいじってもらえて嬉しかった。)

また、どうやら私が面白いらしく、ナースステーションの前を私が通るたびに謎の笑いが起きていた(らしい)。
そういう話を聞いて前の入院とはまるで違うなぁと思った。

ギャルの看護師さんのことは一瞬で大好きになったので、何度も話していたし、向こうも何度も話しかけてくれた。
話す内容があまりにも普通なので、入院しているのを忘れるくらいだった。
その看護師さんが勤務しているとすごくハッピーな気持ちにった。

入院してからほぼ1週間がたったある日、ギャルの看護師さんが、夕方の挨拶にきて、そのついでに、「実は私、今日で最後なんだよね。」と言った。

頭の中が真っ白になった。
最後?最後?最後という言葉の意味も、それが何を示しているかもわかったのに、言っていることが全く理解できなかった。
反射で、「え、やだ。」と言った。

「春から異動で、違う科に行くんだよね。」
と言われた。
そのあと、何を言ったのか覚えてない。
嫌がってた記憶はあるが、それくらいしか覚えていない。
気がついたら部屋で1人泣いていた。
友達や看護師さんに渡す用にかった便箋を取り出し、1週間分の感謝を綴った。
あとで渡そうと思った。

夕食も終わり、ギャルの看護師さんが夕食後のお薬を持ってきた。
さっきまで止まっていた涙が再度溢れ出した。
笑って見送りたいなぁと思っていたのに、顔を見た瞬間に、涙が溢れ出ていた。

その看護師さんは泣いている私をみて、すごく驚いた。そして泣いている理由を尋ねてきた。

私は「いなくなるって言ったから。」と泣きながら答えると、大笑いされた。

「まだ早いよ、まだ勤務時間結構あるよ??」とか
「退職じゃないんだから〜!」とか、
「泣くなんていい奴だな笑」とか言われた。

そんな言葉も耳に入らない、悲しくて寂しくて仕方なかった。

さっき書いた手紙を渡すとすごく喜んでくれて、夜の8時ごろに一緒に病棟の廊下を散歩することになった。
その看護師さんは手紙を片手に、もう片方の手で私の腕を掴み、組んでいつも通り明るく話しながら廊下を歩いた。

下らない話をしながら歩いた。本当に記憶に残らないくらい下らない話だった。でもそれが1番嬉しかった。

話の途中で寝る前の薬を配るから一緒にいこうと言われ、ナースステーションの前で少し待ち、一緒に部屋まで行った。
最後の夜だと思うとすごく悲しくなってやはり泣いてしまった。
私が泣いていたら、他にも業務があるだろうに、泣き止むまでずっとそばにいてくれて、それがすごく嬉しくて、これがなくなるのかと思うと余計に寂しくてまた泣けた。
部屋から出る時に、
「友達に、○○(私)みたいなタイプ周りにいないから新鮮!」と言われた。

その日は泣き疲れてすぐに寝てしまった。

次の日の朝、6時くらいに窓のブラインドを開ける音がして起きたら、開けていたのはその看護師さんで、急いでまだ眠っている身体を叩き起こして、部屋から出る看護師さんを頑張って追いかけたけど見失ってしまって、しょうがなくまた眠った。

朝食が運ばれて、朝の服薬が終わり、夜勤終了の時間になった。前の日に、
「9時になったら会いに行くね。」
と言ってくれていたので、9時ごろに部屋の外で待っていた。
窓の外をボーッと見つめていると、約束通り会いにきてくれた。
もう泣かないつもりだったのに、顔を見た瞬間に涙が溢れていた。
そんな私をみて、昨日のように笑っていた。

そして昨日のように腕を組んで、廊下をぐるぐる回った。
ただ昨日とは違い、泣きながら廊下を回った。
本当に悲しかった。
号泣しながら廊下を練り歩く私を見て他の看護師さんが驚いていた。
この日もまた、最後なのに下らない話をした。
やっぱりなんの話をしたのかは覚えていない。

ラスト1周ね!となり、部屋までゆっくり、ゆっくり帰った。
部屋に戻るとすぐに行っちゃうんだろうな、と思い、部屋に戻るのが嫌だったのだが、部屋に戻ってからも長い間そばにいてくれた。

最後に、
「患者と看護師じゃなくて、普通に友達として出会いたかった。」
「頑張れ、○○(私)ちゃん、バイバイ!」
と言って手を振りながら病室から出ていった。
最後まで見送った。

その看護師さんがいなくなってからはもう喪失感に塗れながら部屋で枕を濡らしていた。
どのくらい泣いただろう、どう頑張っても涙が止まらなかったので、気分転換に部屋の外に出た。

そうしたら、まだいた。いなくなったと思っていたはずなのに、まだいた。

でももう夜勤終わりからはだいぶ時間が経ったし、話しかけられるのもしんどいだろうと思い、遠くで泣いていると、私を見つけ、「まだ泣いてるの〜」とか言いながら歩いてきて、私の頭をポンポンと撫でた。

それがその看護師さんと最後の会話だった。

今も同じ病院内で働いているらしいが、一度も姿を見ていない。
私を大切にしてくれた人、元気で働いているといいなぁと今も願っている。

その看護師さんがいなくなり、ずーーっとずーーっと泣いていると、他の看護師さんたちが何度も慰めに来てくれた。
「大丈夫だよ、私はまだいるから☺️」
と言わせてしまった。申し訳がなかった。

ギャルの看護師さんがいなくなっても、入院生活はまだまだ続くし、他の看護師さんとの関係も築かないといけないので、1日だけ泣いて、その後は切り替えていこうと思った。

とはいうものの、やはり寂しい気持ちは残っていたが、徐々に、徐々に喪失感が薄れ、他の看護師さんとも話せるようになった。

前の入院の時、よく他の患者さんとお話ししていた色の白い、かわいい看護師さんがいた。

以前私も少しだけ担当してもらったことがある人だったので、話しかけやすく、よく相談に乗ってもらった。
相談に乗ってもらうだけではなく、お互いの好きなブランドの話をしたり、アイドルの話をしたりした。
自分の好きなものの話を共感して聞いてもらえるということがすごく嬉しかった。

2回目の入院ということもあり、他の看護師さんとの距離も縮まったため、廊下で、色の白い可愛い看護師さんや歳の近い看護師さんたちとすれ違うと、お互いじーーっと目を見て、そしてニコッと笑う謎の習慣みたいなのもできた。

前の入院ではそんなことができなかったし、他の患者さんは看護師さんとすれ違っても笑い合ったりしていなかったので、まるで秘密の合図みたいで嬉しかった。


色の白い、可愛い看護師さん以外の看護師さんともたくさん話せるようになり、
「前の入院では全然喋らなかったから、静かな子だと思ってたのに、まさかこんなにも話すなんてね〜!」
と色々な看護師さんに何度も言われた。

前の入院では人と話しても意味ない、と突っぱねていたのだが、この一年で人との関わりが増え、自分自身も成長したため、一年前では考えられないくらいオープンになった。

前の入院でお世話になった、一つ上の看護師さんにも、
「本当に成長したよね、あの頃とは全然違う。あの頃は私が話しかけても全然反応してくれなかったのに、今ではいろんな人とたくさん話せているし、何より考え方が本当に大人になったよ!すごいね!」
と言ってもらえた。本当に嬉しかった。


いまだに精神科病棟での虐待がニュースになることもあるが、私のいた病棟ではそんなこと全くなかったし、とにかく嬉しい、幸せ、生きてて良かったと感じることが多くて、本当に素晴らしい病棟なんだなぁと再確認した。

普段話さない看護師さんも、私がしんどくなってうずくまっている時は、一緒に横に座って話しかけてくれたし、私がうまく助けを求められない時は、そのことを察してくれて向こうから助けてくれたし、本当に本当に今までずっと救われなかった過去の私も今の私も本当に救われた。


入院中は、ずっと体調が安定していたわけではなく、苦しい日もあったが、概ね平和に過ごすことができ、退院が見えてきたそんなある日、色が白くて可愛い看護師さんが、夜勤が終わったあと、私の部屋にやってきて、「退院後、ちゃんと生活していくために、一緒にケアプランを作ろう!」と言ってくれた。


看護師さんや先生、心理士さんなどの支援者の方と一緒にワークシートを埋めるということに謎の憧れを抱いていた私はまるで夢が叶ったような気持ちになり、すごく嬉しかったしワクワクした。

ただ、そのケアプランはプリント10枚からなり、完成させるにはかなり時間がかかりそうだったし、看護師さんは常に忙しそうだし、しかも私はその看護師さんの受け持ちの患者ではあるが、プライマリーではないため、最後までできるのだろうか?と少し心配になった。

実際、なかなか一緒になってケアプランを考える時間が取れなかったため、その看護師さんは、日勤や夜勤が終わったあとに私を呼びにきて、30分から1時間くらい時間をかけてケアプランを一緒に作ってくれた。

プライマリーでもないのに、残業してまで一緒に考えてくれて、すごく嬉しかった。
今思い出しても幸せな気持ちになる。
一緒に考えたケアプランの内容も大切だが、それ以上に一緒に考えてくれた時間が私にとっては本当に大切な宝物になった。

私なんかに大切な自分の時間を使ってくれたことがすごく嬉しかった。


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3週間かけて考えたケアプランも完成し、いよいよ退院の日がやってきた。

前の入院の時は、退院の数日前から寂しくて寂しくて仕方がなくて、退院したくない...と思っていたのだが、今回の入院では、やり残したことは何もないし、入院する時に決めた目標も達成することができたのでやりきった感でいっぱいで退院したくないという気持ちにはならなかった。

いよいよ退院の時。
たくさんお世話になった、色の白い、可愛い看護師さんが呼びにきてくれて、そのまま一緒に退院の手続きをした。

今回の入院もたくさんお世話になった人に見送ってもらうことができて、我ながら運がいいなぁと思った。

荷物を抱えて一緒に病棟の外に出た。

さっきまでは寂しくなかったのに、急に寂しさが込み上げてきて、涙が出そうになった。

私が泣きそうになっていると、「大丈夫だよ。」
「○○(私)さん、できることたくさんあるんだからね、忘れないでね。大丈夫。」と言いながら、私の手に優しく触れてくれた。

入院中に何度も言ってくれた「できることたくさんあるんだからね。」という言葉を聞くことがこれで最後になるのはすこし悲しいけれど、その言葉を信じて、胸に刻んで生きていこうと思った。

最後に「もらったお手紙、大事にするね!」
と言いながら手を振ってくれた。

最後の最後まで嬉しくて、私も笑顔で手を振った。

病棟の近くのエレベーターに乗ると、今まで以上に寂しさが込み上げてきて、喉がギュッと痛くなったが、前を向いて生きていく覚悟を決めたので私は泣かなかった。


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