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『さよならの言い方なんて知らない。』の世界で生きるには


先日、小説『さよならの言い方なんて知らない。』(河野裕著)の最新刊である第6巻を読了した。

この小説はある一面で見れば、超能力バトルものだ。
1000人ほどが生活する異世界において、身体強化や射撃、あるいは自分で設定したオリジナルの能力などを獲得してその世界での勝者を目指す。
勝者になれば欲しいものをなんでもひとつ与えられると約束され、主人公たちは陣取り合戦のようなチーム戦が繰り広げられるゲームの舞台へと巻き込まれていくことになる。

ただもう一方では、この小説はひたすら「生きるとは何か」を問いかけるような作品でもある。
何のために戦い、何のために生きるのか。
人間として生きていくことにどんな意味を見いだすのか。
生きる理由もわからず、それでもただ生き抜くことこそが大事なのか。
そういった根源的なテーマがここには通底している。

さて、この小説には様々な能力を持ったプレイヤーが登場する。
単純に身体の強さや敏捷さを有しているものもあれば、人に暗示をかける催眠系の能力や死体を戦士として活用させることのできるような能力を個別に獲得したものもいる。
そして主人公のオリジナル能力、「キュー・アンド・エー」と名付けられたそれは、ゲーム世界を支配する”運営”から情報を引き出すためのとても特殊な能力である。

もし私がこの世界に入ったらどんな能力を獲得しよう。
そんな妄想をしてみる。

純粋な強さを追求するのは限界がありそうだ。
元々の運動神経や肉体が良かったり、このゲームが1対1の格闘技戦のような形式だったりしたら有効だろうけど、ただ強いだけで世界のトップに立てるのかはちょっと疑問が残るから。

それではやっぱり特別なオリジナル能力を持つのがいいだろうか。
パッと思いついたのは仲間や自分を鼓舞して潜在的な力を引き出させるような力。ドラクエの「おうえん」とか、ハンター×ハンターのセンリツの能力なんかに似てる感じで、味方にあって損はないサポートスキルな気がする。

ただゲームの世界の中でそこそこの有用性はありそうだけど、トップにはなれなそうだ。
(でもまあ私自身、この世界に本当に入ったところでただ一人の勝者なんて気が重くて目指さなそうだからこのくらいの能力でいいのかもしれない。)

あとは、「生きるための物語」を創造し、みんなに見せる力。
これについては主人公も言及しており、彼は平和的な生へと向かわせるための手段やプレイヤーたちの拠り所としてフィクションを活用できないかと考えている。
いわば、人々に共通の"夢"を見させるための能力だ。
具体的な能力の運用はかなり難しそうだけれど、誰からも認められる一人の人間を目指すならこのくらい必要なんじゃなかろうか。

以上、小説の世界に実際に入りこんだら…という想像力の羽をうんと伸ばした話だった。
みなさんだったら一体どんな能力を持ちたいだろうか。


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