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童話 笑美ちゃんのひな人形


3月3日はひな祭り、この日を笑美ちゃんはどんなに楽しみに待っていたことでしょう 。
生まれながらに目の見えない笑美ちゃんが、3歳のひな祭りの時に、 お母様はひな人形を一つ一つ笑美ちゃんの手に触れさせて、

「これが親王様よ。凛々しいお顔をなさっているわ」
「これが内親王様よ。優しいお顔をなさっているわ」
「そしてこれが3人官女よ」と言うように一つ一つのお人形を説明して下さいました。

笑美ちゃんは目は見えなくてもすべてのことを光の波動として感じることが出来るという、不思議な心の目を持っているので、優しいお雛様の様子がまるで見ているように感じられました。


笑美ちゃんが生まれる前に神さまと相談した時のことです。

「どんな体に生まれたいかな?」と神さまに聞かれて、

「本当に大切なものは目に見えないものだから、心の目で見られるように それをみんなに教えてあげたいので、目が見えない体に生まれたいです」と答えました。

「それは大変なことじゃよ。自分だけではない、ご両親にとっても大変なことなんじゃよ」

「ええ、分かっています。ですから私は一生懸命にどんな困難にも負けない父と母をみつけるつもりです。」

そう力強く答えました。 そうして願った通りに見つけた仲の良い本当に愛情のある両親の元に生まれて来たのです。

笑美ちゃんが生まれた時、二人はどんなに喜んだことでしょう。 笑美ちゃんはいつもニコニコして、声を出して笑うとその声を聴いた人はみんな嬉しくなり笑顔になりました。


あるひな祭りの夜、笑美ちゃんが寝ていると 「笑美ちゃん、起きてよ」と、どこからか声が聞こえました。 笑美ちゃんが心の目であたりを見てみると、笑美ちゃんのベットの周りにひな人形がくるりと笑美ちゃんを囲んでいました。

声をかけたのは3人官女の梅の着物を着た梅子さんでした。 ベットの柵にちょこんと腰かけて足をぶらぶらしています。

「まあ、みんなどうしたの?」笑美ちゃんは驚いて聞きました。

「ほらもうすぐ私たちとお別れでしょ」と桜の着物を着た桜子さんが言いました。

「1年に一回しか会えないんだもの。また私たちは仕舞われてしまうのよ」

「お嫁に行けなくなるからさっさと仕舞いましょうと言われたりするわ」と松の着物を着た松子さんが言いました。

「松子ねえさんはもう行けそうもないけどね」と梅子さんが言いましたら、
「また余計なこと言ってあんたは」と松子さんが怒ったように言いました。

そのやり取りを聞いて笑美ちゃんは声を出して笑ってしまいました。

「さあ笑美ちゃん、一緒に踊りましょう」そう言って、見たこともないような それは美しい金色の羽織を笑美ちゃんに着せました。

そうしてベットの上で五人囃子の賑やかに鳴り響く音を受けてみんなで楽しく踊りました。

隣のベットで寝ていたお母様は何だか騒がしいので目を覚ましました。

いつものように笑美ちゃんの方を伺うと眩しい光が一面に広がってびっくりしてしまいました。 その瞬間お内裏様のお二人がお母様に魔法をかけて又眠らせてしまいました。

翌朝のことです。

「私はなんと美しい夢を観たのでしょう」と昨日の夜の出来事を夢だと思われたようで笑美ちゃんに話してくださいました。

それを聴きながら笑美ちゃんは心の中で楽しかった昨日のことを思い出していました。

「お母様、来年のお雛祭りの日にもまた美しい夢が見られるといいですね」と笑美ちゃんはニコニコしながら言いました。

      
                         おしまい


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このお話は、「僕と龍の物語3」に出て来たモエのお話です。

3年前の18歳のお誕生日に贈りました。去年の7月にnoteを始めたので、

季節的に掲載を待っていたら、あっという間に3月3日が過ぎてしまいました。

今日が3月の最終日。まあ、ギリセーフって事でお許し下さいね。

絵は昔描いた絵手紙です。

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