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創作品集

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童話 ショートショート 短編 詩 など書いたものをまとめました。
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2021年9月の記事一覧

僕と龍の物語 #1 アボリジニ

前回はこちら https://note.com/ume5chan55/n/nad613617d88d 僕が流れ着いたのは、オーストラリアの海岸だった。 目を開けると太陽に照らされてキラキラ光っている真っ白な砂浜に、肌黒い子どもの足が見えた。 「気が付いたみたいね」女の子の声がした。 「ここは何処?」と声を出した自分に驚き、慌てて立ち上がると体が人間になっていて、更に「うわー!」と大きな声を出した。 「どうしたの、そんなに驚いて?」その子が心配そうに僕の顔を覗き込ん

創作童話 僕と龍の物語 #0

「僕と龍の物語」プロローグ 宇宙神社ポールランドは今日も全宇宙からの参拝客で溢れている。 僕は、いつものように身を清めるために、てみずやの水盤に目を向けると、海路(カイジ)が気持ち良さそうに泳いでいる。 この水盤には湧き水が流れて来る。冷たくて清らかなので気持ちいいに決まってる。水盤にはスイカやトマトが冷やしてあるので、僕はよく冷えた真っ赤なトマトにガブリとかみついた。 カイジは青い龍で地球が出来た時に最初にやって来た龍のグループのリーダーだ。人間が現れるずっと前のこ

創作童話 「雨の空の上は晴れ」

「雨の空の上は晴れ」 ある雨の日のことです。 さっちゃんが窓の外をぼんやりとながめながらつぶやきました。 「毎日、雨ならいいのに」 さっちゃんは病気で足が悪くなり、歩けなくなってしまいました。 だから、外で元気に遊ぶことも出来ず、 「雨ならみんなも遊べないから、私と同じ」と思っていました。 その瞬間、さっちゃんは空の上を飛んでいました。 「きゃー。いったいどうなってるの?」と叫ぶとすぐに、 『恐がらなくても大丈夫!』と、どこからか声が聞こえてきました。 さ

ショートショート#2 暗闇の中から

「ああ寒い、一体いつになったらここから出られるのだろう」 ここは真っ暗で、日に数回光が訪れる。 僕はそのたびに「今日こそ生まれ変われる」と胸を躍らせてきたのに、いつも失望する。 そして新しい仲間が入ってくるたびに僕はどんどん奥に押しやられる。すっかり姿を変えて、もう役にたたなくなり捨てられて行った仲間もいた。 「こんなはずじゃなかった。僕は多くの中から手に取って吟味され選ばれた」そう思っていた。 僕が育った田舎は一年を通して天候に恵まれ、山から流れてくる川の水も栄養