2019年度前期非常勤第2週目(+読書記録:廣瀬雅代・稲垣佑典・深谷肇一,2018,『サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法』岩波書店.)

 今週は千代田線で代々木上原まで行き、そこから小田急線に乗り換えて出講した。どのみち1時間半かかるのだが乗り換えの負担は多少楽になった。大学の最寄り駅に着いてからはバスに乗った。歩けば15分~20分はかかるだろうか。途中、上り坂が続くので、よほど余裕があるとき以外は歩いていくことはないと思う。

 大学に到着してから非常勤講師控室で出勤簿にサインをする。昨年度まで出講していた大学とは異なり、割と大部屋である。印刷をしようと思ったが、備え付けのパソコンがどの出力先につながっているのかわからずに断念した。(結局、学科のコピー室で印刷をさせてもらった。)

 講義用に使用するパソコン、プロジェクター用のケーブル等を受け取り、教室に向かった。講師控室、パソコン貸出部屋(事務室)、機材貸出受け付け、教室の4つそれぞれが別の建物なので、まだ少し混乱している。

 講義では、次のスライドに移るのがはやく、受講者のなかにはメモを取り切れない方もいたようだったので、少し工夫が必要そうだ。(一応、大学のwebシステム上に講義資料は講義後にアップロードしている。)毎回、重要な箇所だけ空欄になっていて受講者側に穴埋めしてもらうようなレジュメ(スライドをもとにした)を印刷して配布するのも手間なので悩ましい。
 
 2コマ連続の講義であり、1コマ目は教科書の解説という形を取った。2コマ目には、『最強の社会調査入門』から1章分その場で読んでもらったりした。1コマ目には簡単なワークシートを用意したのだが、2コマ目にはなぜか(?)文献を読んでもらったにもかかわらず、ワークシートも質問も何も用意しなかったので、迂闊といえば迂闊だった。いずれにせよ手探り状態がしばらく続く。

 行きの電車では、廣瀬雅代・稲垣佑典・深谷肇一,2018,『サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法』岩波書店.に目を通した。岩波科学ライブラリーの1冊である。著者3人はいずれも統計数理研究所に在籍している、30代・若手の研究者である。それぞれ、統計学、社会学、生態学と異なる専門分野を持つ。詳しく内容を解説したり、感想やコメントを述べる力が無いので、簡単におもしろいと思った点だけ書き残しておきたい。
 
 なお簡単な目次は次のとおりである。


第1章 サンプリングの有用性――その科学的根拠
第2章 世の中の動向を捉える――社会調査とサンプリング
第3章 生物を数える――生態学におけるサンプリング

 水槽にある黒いBB弾の実数を推測してみるという例示は、わかりやすいイントロダクションの試みだと思うし、自分の遊びの経験や生活経験に照らしてみて理解を進めるための手がかりになると感じた(多分、あくまでも手がかり、立ち戻る際のヒント)。とはいえ、大数の法則や中心極限定理のくだりは込み入ってくる感じもする。仕方ないといえば仕方ない(おそらく、きわめて簡単に書きようがない)。「あ~アレでしょ、アレ。聞いたことあるわ」で終わらずに暗唱するしかない。

 第2章のコラムに「サンプル数」と「サンプルサイズ」の意味の違いについて解説されていた。例えば、上記のBB弾のサンプリングについてみると、1000人がそれぞれ1回ずつサンプリングをするとして、1000回サンプリングが行われたことになる(はず)。すると、1000個のサンプルが集まったことになる。というわけで、「サンプル数」は1000になる。各サンプルに含まれているBB弾の集まりを「サンプルサイズ」と言う。300個のBB弾をすくい上げるのであれば、「サンプルサイズ」は300となる。混同しないようにしたい。

 再び2章について。この章で例として用いられているのは、「日本人の国民性調査」だった。統計数理研究所が行なっている調査である。「この名前を初めて聞く人も多いでしょうが、国民性調査は日本における社会調査の方法的基礎の構築に、多大な貢献をしてきた重要な調査です。」(p.51)とその重要性をかなり推しているようで、著者のこだわり?を感じた。

 第3章。野生生物の個体数を知るにはどうすれば良いのかということで、リンカーン―ペテルセン推定量というのが紹介されていた。「18世紀には人間の社会の人口を調べるためにも用いられていた」(pp.83-4)らしい。社会調査と生態調査の大きな違いということで、サンプリング台帳を用意することができるかできないか、というのが書かれていた。

つまり、社会調査では母集団からの標本抽出の手続きが厳密に統制されているのです。決められた手続きによって抽出された標本を扱う限り、無作為抽出の前提が満たされていないことを心配する必要はないといえるでしょう。
 一方、生態調査では、対象の個体を一覧できるサンプリング台帳を用意することは不可能です(そもそも、もしサンプリング台帳が存在するなら、わざわざ個体数を推定する必要はないのです)。(中略)社会調査とは異なり、母集団からの標本抽出の過程を厳密に統制することができないのです。(廣瀬・稲垣・深谷 2018: 93)

 専門が異なる者同士の共著なので(用いる方法は同じとはいえ)このような違いにも配慮できるのだと思った。

文献
廣瀬雅代・稲垣佑典・深谷肇一,2018,『サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法』岩波書店.

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