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世界思想ゼミナールの『○○の社会学』シリーズについて雑感

 5月は翻訳の作業と依頼報告の準備、非常勤の準備と講義で終わってしまった。どうして……。
 依頼報告の準備の過程で昔の某雑誌にざざっと目を通すことがあり、そこで見つけた昔の広告が個人的にとても興味深かった。

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 上は1988年、下は1991年の広告(右端が切れているのはご容赦)。『○○の社会学』タイトルがずらっと並んでいる。ある意味絶景?この『○○の社会学』シリーズは一体何なんだ……。

 そう思い、試しにCiNii Booksで「世界思想ゼミナール」で検索をし、出てきた『○○の社会学』について、人力と根性でコピーアンドペーストをおこなった。新版や第2版、増補版については対象から除外した。社会学関連の書籍だと思われるが『○○の社会学』のタイトル形式を採っていないものも除外した。「社会学」が書籍タイトルに入っていても、『○○の社会学』のタイトル形式を採っていないものも除外した(例えば、『「広告」への社会学』『現代日本の宗教社会学』など)。別途検討する機会があれば加えたい。なお、サブタイトルに「○○の社会学」と入っているものについては対象とした。加えて、公式サイトについては今回は参照していない。

 取りこぼしがある可能性は高いが、一応n=102とする。
・1970年代刊行の点数:5点(1977年がはじめての刊行)
・1980年代刊行の点数:30点
・1990年代刊行の点数:35点
・2000年代刊行の点数:28点
・2010年代刊行の点数:4点
・2020年代刊行の点数:0点

 「社会学」関連の「世界思想ゼミナール」のタイトルは、2010年代においては『○○の社会学』の形式を採用しなくなったのだろうか?これは、『○○の社会学』以外の社会学ジャンルの「世界思想ゼミナール」を洗い出したり、「世界思想ゼミナール」自体の刊行点数の推移をみないとなんとも言えない。

 タイトルをざっと眺めて思ったのは、「社会学、なんでもあり?」ということで、特に文化現象(と言っていいのか)に対する懐の深さがあるように感じた。加えて、医療、逸脱(社会病理)なども、特徴的な気がした。このあたりは、タイトルを分類コードに基づいて分類すれば、なんらかの傾向が出てきそうな気がする(自分ではやる気なし)。

 文化について、すべてではないが、タイトルから適当に拾ってみると「遊び」「テレビ」「盆栽」「日常経験」「マス・メディア」「ライフスタイル」「レジャー」「ことば」「笑い」「地域文化」「風俗」「テレビ文化」「生きられる文化」「スポーツ」「高校野球」「ユーモア」「サッカー狂」「変身」「ギャンブル」「スポーツファン」「地方文化」「サブカルチャー」「文化伝達」「クイズ文化」が目につき、このシリーズの強みが文化の社会学にありそうに思った。上記の目についたもので、「文化」に該当しないものもあるかもしれないが……(ギャンブルは「逸脱」の方に入らないか、とか、スポーツは別個にした方が、とか)。

 医療や逸脱、社会病理についてまとめて。「暴力」「非行」「犯罪」「薬害」「しつけ」「医療」「タバコ」「少年非行」「現代医療」「児童虐待」「医療神話」「社会問題」「家族臨床」「健康不安」「病気と医療」「現代青少年」「ひきこもり」「ドラッグ」「先端医療」などが目についた(網羅的に拾ったわけではない)。

 著者について。最初の10数名だけ(最終的な)所属先を検索したら、だいたい京阪神の大学に所属先が集中していた。なんとなくであるが、『ソシオロジ』同人と執筆者が重なっているように思う。単純に世界思想社は京都創業の出版社ということで、周辺の大学に執筆の依頼をしているのかもしれないと推測した。

 なお、世界思想社は正式には「世界思想社教学社」の学術書・教養書担当部門(?)であって、併設されている「教学社」は赤本を出版している部門ということはよく知られているとおり。

 本社所在地の近くに大学が多くあるのかなと思ってGoogleストリートビューを見たら、本社の右隣にブックオフが位置しており、「赤本が並んでそう……」と思った。実際はそうでもないと思うが。

 世界思想ゼミナールの『○○の社会学』の影響について。例えば、1995年から刊行が開始した『岩波講座 現代社会学』シリーズには井上俊氏が名を連ねており、なんらかの連続性があるのかどうか、というのは少し気になった。

 特にオチもなにもありませんが、気力があれば追加で調べてみたいですね。続きません。

(参考)世界思想ゼミナール『○○の社会学』関連リスト


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