2019年度前期非常勤第1週目(+読書記録:蓮見音彦,2008,『福武直――民主化と社会学の現実化を推進』東信堂.)

 新年度が始まり、新しい仕事も始まった。昨日は神奈川県の南の方まで、片道2時間ほどかけて出講した。普段電車通勤をしているわけではなく、ほんの少し体に堪えた。あいにくの大雨でダイヤがかなり乱れていたようだ。乗り換えでもたついていたら思いの外時間がかかってしまった。

 大学に到着後、出講先の先生から控室、機材利用の手続きなどを教えてもらう。控室、機材利用の受付場所、教室がそれぞれ別の建物にあり、覚えきれない。

 出講先の先生の部屋でしばらく時間を潰す。事前に履修登録した受講者を確認すると、3・4限は11人、5限が1人だった。いきなり数百人担当するよりは、ほどほどの人数の方がやりやすいとは思う。しかし、5限の1人(しかも事前に履修登録した学生ではなかった)というのは、不開講の恐れもあり心配だし、受講者がごく少数となった場合、講義の組み立ても工夫しないといけないかもしれない。

 初回講義はスライド20枚を用意し、余談を板書で簡単に説明していくかたちにした。ガイダンス含め60分ほどで終了した。これだとおそらく事前につくるスライドを30枚弱に収めれば良いのかもしれない。

 教科書で引かれていたマートンの「予言の自己成就」の話を、自分用の資料を用意したうえで補足説明したが、なかなか伝えることが難しいと感じた。銀行の取り付け騒ぎの話は比較的わかりやすい例えだとは思うのだが……。

 また、思いつきの余談で曖昧なことを話してしまうことがあったので、来週改めて補足する必要がある(調査倫理の今昔、人物紹介等)。反省したい。調査倫理の話は、学部が心理学の強いところでもあるので、自分の専門以外のことも少し調べておいた方が良いかもしれない。

 一回の講義で伝える〈メッセージ〉は絞った方が多分良い。また、事前の準備にたくさん時間をかけることもできないので、ここも講義の建付けの工夫のしどころだと思う。

 帰りの電車はほとんど立ちっぱなしだった。行きの電車では蓮見音彦,2008,『福武直――民主化と社会学の現実化を推進』東信堂.を読んだ。
福武の同族結合(東北型農村)、講組結合(西南型農村)の議論の背景には、日本の農業経済学の蓄積があるようだ(蓮見 2008: 52-3)。

・山田盛太郎,1934,『日本資本主義分析』岩波書店.
・山田勝次郎,1942,『米と繭の経済構造』岩波書店.
・戸谷敏之,1949,『近世農業経営史論』日本評論社.

 以下は個人的なメモである。
 山田勝次郎(1897-1982)は蝋山政道(1895-1980)の弟である。
 戸谷敏之(1912-1945)は大塚久雄(1907-1996)に指導を受けていた。


 戸谷は大塚とわずか5歳しか違わず、英仏独語の読解力を有し、『資本論』もドイツ語で読むなど極めて優秀であったことから、両者は指導教員と学生というよりも対等な立場で議論する関係であったという。(齋藤 2017: 53)

 また、福武の農村に対する「構造分析」の射程の限界については(なんとなくではあるが)気になった点である。

 福武グループの場合、地域開発調査などにおいては調査対象を地方都市にまで拡大したが、新たな方法論を整備することなく、構造分析の方法を模した調査手法で調査研究を推進した。それが不充分なものであることはメンバーの間では自覚されていたので、後になって、蓮見と似田貝香門などが、広島県福山市や兵庫県神戸市などの調査を行う過程で、構造分析の発展としての研究方法論の整備を意図した。(蓮見 2008: 123)

文献
蓮見音彦,2008,『福武直――民主化と社会学の現実化を推進』東信堂.
齋藤英里,2017,「比較経済史の誕生――大塚久雄『株式会社発生史論』に関する一考察(3)」『武蔵野大学政治経済研究所年報』15: 47-63.https://www.musashino-u.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00007175.pdf&n=02_saitou.pdf

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