2019年度前期非常勤第5週目(+読書記録:戈木クレイグヒル滋子,『実践グラウンデッド・セオリー・アプローチ――現象をとらえる』新曜社.)


 5週目。今週の講義は、質問文の作成の仕方についてであった。当座、ダブルバーレル質問、キャリーオーバー効果、イエス・テンデンシー等、重要な用語含め、教科書に載っているNG質問文のどこがまずいのかを逐一解説するかたちを取った。例によって、作業シートも書いてもらった。難しい言葉も、曖昧な言葉も、できるだけ使わないようにしないといけない、ということを考えると、質問文作成のハードルはおそらく想像以上に高いのだろうなという気がする。本来であれば、車座になって、作ってきた質問文にダメ出しをし合うものなのだろうか?規模の大きい調査グループに属して調査企画を立てた覚えがなく、このあたりは自分の経験からこうした方が良いと言えることがないため、少しもどかしい。

 行きの電車では戈木クレイグヒル滋子,『実践グラウンデッド・セオリー・アプローチ――現象をとらえる』新曜社.に目を通した。先に同じ著者の『ワードマップ グラウンデッド・セオリー・アプローチ』を読んでおいた方がよかったかもしれないが、「このように研究を進めていくのだ」という雰囲気を少しつかめた気がする。とはいえ、電車のなかで本書で挙げられている語りのデータを切片化し、プロパティやディメンションを導き出し、さらにはラベルをつけ、それをもとにカテゴリー分けをし……という作業をすることはできないので、あくまで雰囲気をつかんだだけ、である。ちゃんとやろうとするなら腰を据えてひとつずつやらないといけないのだろう。

 「グラウンデッド・セオリー・アプローチでは、データを1つ収集したら、すぐに分析して、カテゴリー関連図を作るところまで進み、比較と理論的サンプリングを基にしてつぎにデータを収集すべき対象と内容を決めてからデータ収集に行きます」(戈木 2008: 110)と書いてあったが、先に大量にデータを収集してから分析を行うわけではない、ということについては肝に銘じるポイントかもしれない。「すでに大量に収集されたデータでは、現象が拡散している可能性」がある(戈木 2008: 145)。手元のデータをきちんと分析してから次に行くことが重要ということである。

 ところで、筒井淳也・前田泰樹,2017,『社会学入門――社会とのかかわり方』有斐閣.は、同じトピック(「出生」から「死」まで)について、いわゆる量的方法、質的方法からアプローチをしていく構成を採用している。質的方法にもいくつか代表的なアプローチがあるように思うが、ひとつのトピックについて、複数の質的方法からアプローチをし、その知見を比べてみる、という教科書があれば知りたい。

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