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【ゲーム感想文】『龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル』~ファンタジーよりも異文化な快男児逆転劇~


評価:★★★★☆

先日、PS5版『龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル』をクリアーしました。
『龍が如く』と言えばナンバリングタイトルや外伝も含めて、日本のゲーム業界が誇る長大な人気シリーズなのですが、実を言うと自分が遊ぶのはこの『7』が初めてになります。
その理由を幾つか挙げると……

・PSプラスに入っているので無料でPS5版が遊べた。
・『7』はアクションアドベンチャーからRPGにジャンルが変更されたので、最新のコマンドバトルRPGが遊びたかった。
・新主人公に変わったので逆に入りやすかった。
・次回作『龍が如く8』にあのガチャピンとムック、そして『ラブライブサンシャイン』の浦の星女学園のスクールアイドルAqoursのリーダー高海千歌ちゃん役にして、今やラブライブシリーズを牽引する沼津のスクールアイドルことリアルのAqoursのリーダーでもある「あんちゃん」こと伊波杏樹さんがご出演されると聞いて、居ても立ってもいられず予習として初めてみた!

文字量数からして、どれが一番重要だったのかは言うまでもありませんね。
任侠物にもましてや以前の『龍が如く』にも大して興味のない自分が楽しめるのかと言う不安はありましたが、エンディングまで一時も飽きることなく駆け抜ける事ができました。すげぇ楽しかった!
後述しますが自分にはどうしても合わない点が幾つかあり、それがこのゲームの売りにもなっていると言う事で、自己評価は4/5点(良作)としました。




異世界よりも近いのに遠い、ヤンキー・ファンタジー

ゲームを始めて真っ先に感じたのは、「同じ日本なのに異世界よりも驚きに満ちている!」という異文化体験でした。

先ず主人公の春日一番が元ヤクザのチンピラで、しかも40代という年齢設定。ゲームの導入部からヘビーな刑務所暮らしが描かれ、序盤はホームレス生活から始まると言った具合に、同じくリアルな現代を舞台にしたゲームと比べても、何から何まで異色な世界観なんですよね。

舞台となる複数の町も異様にリアルで小汚い中年男性の描写から、町の一角に看板を構える風俗店やお水の店構えのディティールなど、オタク向け作品や洋ゲーに傾倒していた自分としては「そこ追求する⁉」と驚くばかりの着眼点でした。
一言で言えば、この『龍が如く7』はヤングマガジンとかを好んで読んでそうなヤンキーもとい陽キャが好きそうな「ファンタジー」で出来た世界なんですね。
そう考えると街を歩く時に通行人にぶつかるのは、ヤクザ者のロールプレイの一環だろうし、微妙にブサイクな女性を集めたキャバクラで豪遊しながら、理想の女性像はOLや受付嬢などの清楚系の美人ばかりという偏りも納得が行きましたね。

また本作と言うか「龍が如く」はバイオレンスかつシリアスなメインストーリーの一方で、トンチキ度の高いサブイベントやおまけ要素が売りのシリーズでもあります。
本作『7』でもメインストーリーを除けば、コントを見ている様なおふざけとトンチキなパロディが満載なのですが……一部のギャグセンスが合わなすぎて笑えないどころか、「え? これで笑えと仰る?」とドン引きする様な描写を見せられる事もあり、それも含めて異文化に触れている感が強かったですね……

例えるならばアニメやゲームの学園モノが好きな人に『魁!男塾』を勧めたり、きらら系の学園モノギャグが好きな人に『行け!稲中卓球部』を勧めるようなもの。
同じ舞台と時代なのに嗜好や世界観が違いすぎて、異なる世界に踏み込んだようなギャップを味わう……自分にとって『龍が如く7』はそう言った異文化体験満載のゲームでした。
つか映画館をテーマにしたミニゲームで『映画鑑賞は眠くなるもの』が前提とか、そんなん考えた事もねーよ! 


任侠物だが任侠物に留まらない、痛快無比の逆転劇

ゲームの世界観や根底に流れる文化・センスこそ異文化体験でしたが、メインストーリーは文句なしに面白かった!
ドラマの主軸は任侠物(というか渡世の義理人情)ですが、主人公の春日一番が元ヤクザでゲーム中はカタギという事もあり、任侠物の枠組みを跳び越えて、社会の落ちこぼれやはみ出し者たちが巨悪に立ち向かい、痛快無比の大逆転を果たすという社会派サスペンスでもありましたね。

主人公だけでなくその仲間達もまた魅力的で、画像中央に写っている足立さん(声も姿も大塚昭夫さんでしかない愛すべきオッチャン)を始めとして、男性陣は40オーバーの愛すべきオッサンぞろいだし、後半からはクセの強いイケメンも増えて、彼らと実在の店で飲み食いしたり、アクティビティで遊んだり、くだらない話で盛り上がったりするのは本当に楽しかったです。
キャバクラは…良く分からん。何が楽しいんだあれ?
もちろん仲間には女性もいるのですが、影が薄いというかテンプレなヒロイン枠でしかなかったので、やはり男同士のワチャワチャがムチャクチャ楽しいし印象的でしたね。

また秀逸だったのはストーリー展開だけでなく、そこで描かれる「社会のグレーゾーン」というテーマも、今と言う時代だからこそ考えさせられるものがあったと思います。
少しだけネタバレすると劇中には「ブリーチジャパン」という、極端な主張の市民団体が登場しますが、彼らの存在が単なるカリカチュアではなく、現実に対する痛烈な皮肉になっている事は、果たして喜んで良いものなのかしらん……。

それより何より春日一番という快男児よ。

いやもうメッチャ好きだわ、春日一番。
『龍が如く』と言えば、ヒーローとしてのヤクザを極めたような主人公「桐生一馬」が看板でしたが、本作からはジャンルの変更だけでなく主人公も春日に交代してしまったので、シリーズのファンからすれば胸中複雑だったと思います。
でも良い奴なんだよ春日一番。こんなにも胸がすく快男児は久しぶりだわ。

見るからに三枚目で桐生一馬とは正反対のキャラクターに思えますが、義理人情に篤く、弱きを助け強きを挫くヒーロー性は健在。
見た目ほどチャラくもないし、仁義を重んじて礼儀作法もしっかりしている点も好感が持てます。
前述したようにこれが初の『龍が如く』だった自分には、彼のまっさらな経歴と視点のおかげですんなりとゲームに入り込めた感もあるので、余計に愛着が湧きましたね。

ちなみに劇中では潰れかけの弱小企業を立て直して、横浜一の大企業にまで成り上がるサブゲームがあるのですが、そのCM(風ムービー)に出てくる一番が、自分の一番のお気に入りだったり。


RPGとしても楽しい散策と脇道

最後にコマンドバトルRPGとしての本作の評価でしたが、これまた良く出来ていたと思います。
海外のオープンワールドゲームと比べるとフィールドは小さいですが、その分密度は満載で、様々な寄り道やアクティビティがキャラクターの育成と蒐集に密接に絡んでいるので、メインストーリーもやり込み要素も楽しんでプレイできました。
虚無でしかなかったキャバクラも、クリアの為に触れる必要はなかったのでその点は助かりましたね。

物語としてはきれいにオチが付きますが、春日一番の活躍はまだここからだし、劇中にも登場した前作までの主人公「桐生一馬」の運命が、次回作で本格的に交差するようなので、個人的にも俄然楽しみになってきました。

いやぁ今から楽しみで仕方ないぜ、ドンドコ島が!!


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