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【ゲーム感想文】『ペルソナ3リロード』~名作リメイクの最適解~

評価:★★★★★

先日、PS5版『ペルソナ3リロード』をクリアーしました。
今もなお名作として人気のある『ペルソナ3』(P3)の発売から大体18年後の今、満を持して現行機向けにリメイクされたのが本作『ペルソナ3リロード』(P3R)になります。

自分はペルソナシリーズのファンで、ナンバリングタイトルは初代『女神異聞録ペルソナ』から全てクリアー済みなのですが、個人的には『ペルソナ4』(P4)、『ペルソナ5』(P5)と比べると、P3は思い入れがやや少ないタイトルでした。
いや当時はその斬新なシステムや哲学的なテーマを体現したストーリーに感動して、P3が名作と称される事に異論はないのだけれど、「好き」の度合いはP4、P5が上回ったと言うだけの話。
だから今回のリメイクを機に「もう一度ペルソナ3と向き合ってみよう」という気持ちで、本作を遊んでみました。

その結果……個人的には異例とも言える、発売から一ヶ月も経たない内にクリアーするくらいハマってしまい、「ペルソナ3ってこんなに面白かったんだ!」と再確認する事ができました。
ゲームとしてはオリジナルとは別物レベルで手が加えられていますが、それでも「P3らしさ」とでも呼ぶべき本質はキチンと残されていて、ペルソナシリーズの最新作としても、またオリジナルのリメイクとしても文句の無い出来だったと言う事で、自己評価はもちろん5点満点の名作としました。



時代とともに変わったもの


過去一顔が良いP3主人公(愛称はキタロー)

さて本作P3Rとオリジナルの大きな違いは大きく分けて二つ。
一つはビジュアルで、もう一つはゲーム中で「タルタロス」と呼ばれるダンジョンの仕様になります。

ビジュアルに関しては画像を見ていたたければ一目瞭然ですが、オリジナルのP3ではディフォルメされていたキャラクターの等身が伸び、現行機の解像度でアップにしても問題なしの高精細っぷり。
戦闘シーンだけでなくADVパートでもこのキャラクターが動くため、細かい表情での芝居も可能になり、物語にもより引き込まれましたね。


そしてペルソナシリーズと言えば、スタイリッシュで動きまくるUI。
イメージカラーの青と白、そして海をモチーフにしたビジュアルで滑らかに動くのですが、ちゃんと使いやすくて動作もサックサク。
つかこのキタロー、セクシーすぎやしません? 女性キャラを差し置いて一人グラビア写真集かよ? 個人的には全然構わないけど!

もう一つの「タルタロス」の仕様ですが、こちらはオリジナルの後に出たP4やP5の要素に加えて、ローグライクゲームのトレンドも取り入れた結果、ほとんど別物レベルの内容に。

少しだけネタバレすると、P3もP3Rもゲーム内の期日までに200階を超える広大なダンジョンを攻略する必要があります。なのでADVパートやストーリー上のイベント戦闘の合間に、コツコツとこのタルタロスを攻略していくのがゲームの基本的な流れ。
とは言え、かなり長大なダンジョンなのでオリジナルでも飽きが来ないように工夫はしていましたが、結局最後は作業感で進めていた記憶が。

その所為か本作P3Rでは様々な新要素をぶち込んで、ハクスラ要素や簡易スキルビルドが楽しめるようになり、オリジナルと比べるとずっと楽しく、かつ遊びやすい仕様になっていると思います。
後半になると味方サイドの火力が上がって攻略も楽になりますが、個人的には序盤から中盤にかけてのシビアなリソース管理や、リスクとリターンを天秤にかける緊迫感がクセになりましたね……

この他にも主人公を含めたパーティーメンバー「特別課外活動部」内のイベントが大幅に増え、寮内では時間を費やして行う要素も色々追加されたのですが……それに関しては後で述べます。

時代に関係なく変えなかったもの


一方でオリジナルから大きく変わらなかった要素も幾つかあるのですが……何分18年前のゲームかつハードの問題で個人的には検証が困難であり、記憶も曖昧なのでハッキリとは言えません。
それでも変わらない、いや変えなかったものがあるすれば、それは「ペルソナ3らしさ」とも言うべき雰囲気や様々なニュアンスだったと思います。

では「ペルソナ3」らしさとは何かというと、個人的には「シリーズの転換点であるが故のシックでダークな雰囲気」と「キャラクター同士の距離感」だと考えています。
P4ないしP5を経て本作P3Rを始めた人からすれば、ゲーム内の雰囲気がやや暗かったり、ADVパートのシナリオやテキストも淡白で、何よりパーティメンバーの関係性が比較的あっさりしている様に感じるのではないでしょうか。

やや暗めの世界観については物語のテーマが大きく関わっているのですが、それ以外にオリジナルのP3がペルソナシリーズにおいては大きな転換点になった事も関係しています。
P3は過去作と比べてゲームシステムから世界観まで大幅に変わり、その路線変更が後のペルソナシリーズの在り方を決定付けました。それでも今から見ると、真・女神転生の派生作品ゆえの雰囲気や世界観は割と残っているんですよね。
発売当時は過去作との違いにばかり目が向けられましたが、その後のP4、P5の世界観と比べると、P3は過渡期の作品だったのだなぁ…と本作をプレイして初めて気付かされましたね。

そして「キャラクター同士の距離感」に関してですが……これは意図したものと言うよりは、後継作のP4、P5が物語やゲームシステムにおいても仲間との一体感や横の関係性に注力するようになった為、結果としてP3のキャラクター達の関係性が薄く感じられたのではないかと思います。つまり仕様の問題ですね。
なのでP3Rでは前述した「特別課外活動部」内のイベントが大幅に増えており、その結果として個々のキャラクターへの愛着や、一つ屋根の下で暮らす特別な仲間達との一体感が強く感じられるようになりました。
つか俺たち、最高の仲間だったよね……

しかし――大幅に追加されたイベントはあくまで「行間」を埋めるに留まり、システム的にも新しいコミュニティが追加されるとか、好感度を設けて戦闘で追撃したり合体技を出すなどの新要素は追加されませんでした。
更にコミュニティのストーリーやテキストにも大きな変更は見当たらず、やはりP4やP5に比べるとキャラクター同士の距離感は開いている様に感じましたね。

ただ、ここまで変えたものと変えなかったものがハッキリしていると、先に挙げた「シリーズの転換点であるが故のシックでダークな雰囲気」と「キャラクター同士の距離感」は、作品の本質もとい「ペルソナ3」らしさを担っていた重要な要素だったのではないでしょうか。
自分が本作P3Rを遊んで感じた懐かしさや思い出がよみがえったのは、やはり製作者が「ペルソナ3」らしさとは何かを理解していて、それをしっかりと残しておいてくれたからなのだと思います。

ペルソナ3のテーマ、それは何時でも誰にでも通じる「生と死」である。


ネタバレなので詳しく言えないが、こんなにも胸に迫る光景があるだろうか…

オリジナルのP3が世に出て早や18年――その間にペルソナシリーズは日本だけでなく世界に通用する大人気シリーズとなり、作品の規模だけでなくファンの層もぐっと厚く大きくなりました。
自分の様なオッサンゲーマーには必修科目レベルの名作であったP3も、今となっては遊んでいないファンも沢山いると思います。

しかし本作P3Rをプレイして改めて感じたのは、ゲーム内の時代が既に過去になってしまっていても、この作品が掲げた「生と死」の物語はまったく色褪せることなく、時代や年代を超えた普遍的な感動を呼び起こしてくれる名作だと言う事でした。
いやそれどころか楽しみながら、ここまで人間の「生と死」について考えさせられる作品が果たしてどのくらいあるのだろうか、とも。

タロットカードのアルカナが象徴する人の「生」と、ゲームの仕様を逆に利用した「死」という終わり。
お涙頂戴のお仕着せがましい語りではなく、エンターテインメントとしてワクワクドキドキしながら、そうした哲学的なテーマに自然と触れる事ができるのは、ゲームが持つ強みなのでしょうね。

そんな素晴らしい作品に長い年月を超えて再び触れる、或いは新たに触れる機会を設けてくれた事、それこそが本作P3Rの意義であり名作をリメイクする意義でもあると思います。
ゲームとしてとても遊びやすくなり、更には後継作が既にあるからこそ気付かされたペルソナ3という作品の本質と魅力。
「もう一度ペルソナ3と向き合ってみよう」という自分の願いは十二分に果たされ、恐らくはオリジナルを遊んだ当時よりもずっと、この物語や登場人物たちを好きになれました。

最後に本作で一番好きになったと言うか、18年前はその魅力に全然気づけなかったキャラクターは誰かと言うと……


アイギスごめん、今回のワイは桐条先輩一択なんや……



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