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うましき台所帖・第1回「思いを寒天に流して。照井律さんとつくる寒天料理」レポート
うましき台所帖とは?
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2022年7月より、秋田市文化創造館の1階キッチンスペースを拠点に開催している料理教室。毎月、講師が代えて開催しています。(2023 年3月までの全9回)ここで学ぶのは料理の手順やコツだけではありません。ともに手を動かし、味わいながら、講師と参加者がともに語り、学び合い、この土地の魅力や生き方をあらためて考える場です。
うましき台所帖・第1回
「思いを寒天に流して。照井律さんとつくる寒天料理」
開催日:2022年7月24日(日)
会場:秋田市文化創造館 1階キッチンスペース
講師:照井律さん(美郷町)
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秋田に伝わる「寒天」の文化。「秋田のお母さんがたはなんでも寒天で固めてしまう」といわれるほど地域に根付いた料理です。講師の照井さんは、寒天づくりを始めて60年以上。寒天の料理教室の生徒は延べ2万人を超えると言われているほど。毎日3種類以上の寒天を流し続け、そのレパートリーはじつに400種類!
寒天の作り方はもちろん、照井さんの暮らし、秋田という土地で生きるヒントを学んでいきます。
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寒天づくり
前半は律さんとともに寒天づくり。この日作るのは「スイカの寒天」です。
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律さんの解説のもと、班ごとに調理。各工程で律さんから、素材の扱い方、温度管理、道具の使い方など、こだわりやポイントが紹介されます。その一つ一つから、律さんの寒天への真摯な姿勢、食べる人への思いやりが感じられ、参加のみなさんからも終始、感嘆の声があがります。工程ごとに、質問も飛び交い、賑やかに調理が進みます。
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寒天液を型に流し、冷え固まるのを待つあいだ、律さんとのトークの時間です。
トークの時間
【はじめての寒天】
小学3年生の時に母親が脳梗塞で倒れてしまって。学校は大好きでした。でも、一緒に暮らしていた兄夫婦が忙しいので、私が母の世話もしなければならない。休み時間には走って家に戻って、飲み物を飲ませて、おやつを食べさせて、下のお世話をして、体を起こしてあげて、足を伸ばしてあげて……そして、また学校に戻る。そういう暮らしでしたね。
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母は寝たきりで、お通じが悪くて困って困って。お医者さんからもらったお薬でも全然効かない。
そんな時に、ラジオで「寒天がお通じにいい」という話を聞いて、作ってみたのが最初です。小学4年生か5年生のころですね。母にはスプーンで食べさせないといけなかったので、自分なりに考えて、柔らかめのりんご寒天を作りました。
【寒天と向き合う時間】
今思うと、寒天を作っている時間は、全部を忘れられる時間でした。みなさんも先ほど、寒天を煮溶かしましたよね。そのとき、真剣にやらないといいものができない。毎日、嫌なことがいっぱいあって泣きたいようなことばっかりでも、鍋に向き合うと無心になれたんです。
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そして仕上げのとき。型から外すと、でき上がった寒天は、ピッカピカで、透明で「宝石みたいにきれいだな!」って、自分が作ったものに自分で感心して、感動して。その喜びに惹かれて、嫌なことがあればあるほど、また作りたいと思えたんですよね。その喜びに近づきたくて……。そして、寒天はかわいく、きれいに作りたいんですよ。そのためには、しっかり固まって、持ち歩いても崩れない、棒寒天で作るのが一番いいんです。
【おもてなしの心】
農家に育ったもので、田んぼは昔からやっていて、その傍ら、自分たちが食べるためのものを、畑で作って食べてきました。
今も、いちご、スイカ、人参、きゅうり、サツマイモ……寒天の材料は、特別買ったりはせずに、自分で作ったものを使っています。
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毎日、畑仕事をしていると近所の人たちがやってくるんです。85歳になるお母さんは、ゴミ出しのついでに畑のそばを通っていく。そうすると「畑仕事がんばってらね〜」とか「何作ってだ〜?」とか、声をかけてくるんですよ。
私は毎日、寒天だけでなく、お餅とか、おこわとかも作っているので、みなさんが来ると「ちょうどいいところに来た! これ食べでけねが?」って、椅子を出して、そこで食べてもらうんです。
するとみなさん、帰りには「あ〜美味しかった。何日も声出してなかったんだ。声出させてもらえた、ありがとな〜」って言って帰っていくんです。
歳を重ねると、家族がいても若い人たちはお勤めに出ていて、一日中、言葉を発することがなくて、話し相手になってくれる人も少ないんですよね。
私は、誰かに食べてもらいたいがために作っているんです。寒天って、自分で食べることはないんです。人様に食べてもらうものであって、私にとっての「おもてなしの心」。その1番目が、母だったわけです。
トークを終えたころ、ちょうど寒天が固まりました。それぞれに切り分けて、いただきます!
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参加者の声
スイカの寒天、初めて食べました。砂糖、塩味もちょうどよく満足しました。
素晴らしい会でした。秋田に住むことを肯定できる、こういった時間は大切ですね。繋いでいきたいです。
寒天の作り方だけではない人の生き方を学んだ気がします。
寒天の奥深さにびっくりです。おいしく美しくおもてなしの心でこれから作っていきたいと思いました。
秋田を深く食の視点からアプローチできるとても興味深い料理教室だと思いました。手順を習うだけでなく、秋田に住む方の人生までも垣間見える楽しい会でした。
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うましき 台所帖の詳細・今後の開催については、こちらでご確認ください!
https://www.facebook.com/umashiki.kitchen
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