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【優しさという名の特効薬】


おばあちゃんは、小さきもの達に、
本当に優しかった。


幼い頃から私が病気で食欲が落ちると、
おばあちゃんは一口もご飯が喉を通らなくなってしまう。


おばあちゃんにやしなってもらい、一口私がご飯を食べると、
ホッとした顔になり、その顔をみて、
今度は頑張って私はご飯を食べる。


私がご飯を食べ終わると、
ようやくおばあちゃんは食事が喉を通るようになるからだ。



おばあちゃんは、普段、少食ではない。

無類の食いしん坊なのだ。



そのおばあちゃんがご飯を食べないなんて、一大事だ。

ある時、怪我をした猫が、我が家の庭先に迷い混んできた。


ケンカをしたらしく、顔は傷だらけ。
左の口の下の部分は食いちぎられ、

あまりの痛ましさに、
私は、その子を凝視することができなかった。

その日の夜、おばあちゃんは夕食を食べなかった。


数日間、ほどんど食欲がなく、
体調が悪いのかと心配になった。

すると、おばあちゃんはどこかに出かけていった。


そっと、その様子を見ていると、
なにやら手に持ち、向かった先は、怪我をした迷い猫のところだった。

手に持っていたのはスポイトで、
傷のない口の方から
水を与えている。


数日後には、それがミルクに変わり、
その猫がご飯を食べられるようになった頃、
ようやくおばあちゃんの食欲も戻ってきた。


本当におばあちゃんにはかなわない。
見ず知らずの迷い猫のことを、
自分の孫と同じように心底心配する。

そして、その想いは必ず通じ、
病も傷も回復する。

その迷い猫も例外ではなく、
瀕死の状態だったにもかかわらず、
驚異の回復力をみせつけた。

そして、それ以来、
台所に立つおばあちゃんの姿が見える窓の外の
立ち上がり蛇口の上が、その子の定位置となった。


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