ごめん、もうサービスはこれ以上いらない。ありがとう、トン一(トンイチ)

これまた奥渋の話をしよう。前回の記事でサードウェーブの波に乗ったサーファー達の話をしたが、今回は奥渋唯一の韓国料理屋を紹介しよう。「サービスの神」としても崇められる程のサービス量から、いつしかこの奥渋では有名になってしまった店である。勿論今までに「ナイスサービス!!」と思わず口に出してしまうような良サービスはたくさん経験してきた。「寒い冬、お店出た後に預けていたコートのポケットに温かいカイロとメッセージカードが入っていたこと」「温かい顔拭きタオルをお手拭きと一緒にだしてくれたお店...」数え切れない程のサービスを受けてきたが、トンイチはわけが違う。「すみません、これ以上のサービスはもう結構です。」と、こちらからサービスを断ってしまう程のサービス量だ。

〜入店(カランコロン)〜

店長「いらっしゃい、マセ!」
文豪「2名で」
店員「コチラ、どうぞ〜」
店員「今日ハ、何にしますか?」

トンイチは韓国料理店だが何故か、東南アジア系の店員が何人もいる。全員めちゃくちゃいい笑顔だ。

文豪「サムギョプサル2つ..とライス2つください。」
店員「ドリンクハ、どうしますか?」
文豪「じゃあ、コーラで。」
文豪「後、たまごスープください」

当たり前だがサムギョプサルは2人前以上からの注文が鉄則だ。この日は友人と一緒にトンイチに行った。サムギョプサルは本当に美味い。この豚バラたちが高カロリーなのは焼いている本人が一番わかる。これはヤバい。油がただれ落ちている。だが、コチュジャンやごま油、ニンニク、ナムルと一緒を乗せ、荏胡麻やサンチュに包んで食べれば旨味倍増、とたんにヘルシーな料理の味に変わるのだ。注文もサムギョプサルとライス、そしてたまごスープと、特に何の変哲もない、所謂「王道のギョプサルメニューだ。」

店員「サムギョプサルでース」

でかい。めちゃくちゃでかい。ぶりん!とでっけえ豚バラが2枚鉄板の上に、はみ出しながら置かれる。キムチと。後何故かかなりの量のエノキもついてきた。

いや、頼んだか?それ?

と疑問に思うほどの量のエノキだ。鉄板の上は既に巨大なサムギョプサルと大量のエノキで溢れている。その後は韓国料理特有のナムル、オイキムチ等はサービスで出てくるが、このあたりはいつも通りだ。そう思うと、大量のエノキもサービスなのであろう。この時点で既に1サービスだ。まあ、これぐらいであれば韓国料理屋ではよくある話。そう、よくある話なんだ。ここまでは。

店員「コレ、サービスの目玉焼きデス」
文豪「ホワイ??????????」

突然の目玉焼き。ここ、韓国料理だし店員は東南アジア系だし、そりゃ目玉焼きだよね。とはならない。いくらサービスと言えど、目玉焼きは無いだろ。鉄板の上でジュウジュウと焼かれている目玉焼きが、急に運び込まれる。別に悪くはない、こっちはサービスを受ける分にはそれはもう嬉しい限りなのだが、なぜ、目玉焼き???????これで、2サービスだ。

店員「コレもサービスね、スントゥブね」
文豪「ファッッ!?」

流石にスントゥブをサービスではやめとけ。まず、たまごスープ頼んじゃったし。既にたまご被りで目玉焼きは来てるのよ。スープ被りは厳しいよね。サムギョプサル迄焼けていないのに腹タプタプよ???

店員「あ、コレサービスだから!お粥ね」
文豪「あー」

突然の目玉焼き、スンドゥブに続いて、突然のお粥。米にお粥よ????お好み焼き定食を好んで食べるのは狂った関西人だけよ???頼んだのサムギョプサルなんだけど。サービスで既に米とスープと、目玉焼ききてるよ。サムギョプサルそろそろ焼き上がるけど、サービス出しすぎたなって反省しないの???

店員「サービスの芋の天ぷらだヨ」
文豪「あーあーあー」

怒涛のサービスだけど、この頃にはもうあまり驚かなくなるね。どんなサービスでもOK。むしろ他の店もこれぐらいサービスして欲しいよね。サムギョプサルがサービスでついてきたんじゃないかと勘違いするよね。テーブルの上はもうサービスでパンパンだからね。

この辺でサムギョプサルも食べ頃に。ジューシーな肉を頬張ると、肉汁と共に思わず言葉が溢れる。うまい。これはうますぎる。異常なサービス量で味を誤魔化しているんじゃないかと思っていたが、肉厚があり、サンチュに味噌とサービスのエノキ、サービスのネギを乗せ、ごま油に少しつけた、このギョプサルはうまい。油断してた。サービスの陰に隠れてこんな美味しいのを準備していたのか。いや、隠しては無い。ずっと目の前に焼かれていたが、あまりの怒涛のサービスに気がつかなかったのだ。

文豪「腹いっぱいになったな」
友人「そろそろ行くか?」
文豪「そうだな、行こう」

店員「チョット待ってくだサイ」
文豪「????????」
店員「サービスのアイスいりマセンカ?」

あぶねーサービスのアイス忘れるとこだった。そうか、アイスってサービスで出てくるのか。ここは王国なのか?王様なのか??はじめからこれとこれとこれはサービスで出ます。と書いといてくれよ。危うく頼んじゃったらサービスで出てくるのにお金払っちゃうとこよ。いや、お金払っても全然良いんだけど。もうサービスでお腹いっぱいよ?お気持ちは嬉しいんですが、とかじゃなくて、ほんとに腹いっぱいなのよ。こんなにサービス出てくると思ってないからね。

サービスのアイスもサービスのスンドゥブもサービスのお粥に、サービスのエノキ、芋、目玉焼きも食べた。サービス三昧だ。サムギョプサルを食べに来たのに、ここまでサービスを受けるとは。おもてなしのレベルではない、新しい文化である。食べるというのは味だけでは無い。

トンイチは今日も人でいっぱいだ。過剰とまで言われるサービスを提供し続けるが、きっとサービスの暖かさを感じに行っているのだ。是非一度訪れてほしい。


〜退店(カランコロン)〜


店員「すみまセン〜お客サマ〜」
文豪「はい?」
店員「サービスの韓国ノリお忘レです」

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