もういいや

つきあっているとかそんなことではない、でも、仲良しだと思っていた男友達が機嫌を損ねて、音信不通になったのは去年の7月の終わり。まだ、オリンピックが始まる前のことだった。
始めのうちは、いつもの「怒って黙り込む」「連絡をしても無視する」だと思っていた。友達には、それはモラハラだから、もう離れなさいと言われた。でも、私は諦められなかった。

1週間経ち、2週間が過ぎても、返事はない。
たしかに、最後のLINEで仲違いはしたけれど、そんなに長く引っ張るほどのこととは、私には思えなかった。要は、こちらには理由がわからない。それも知りたくて何度か連絡をしてみたら、「お願いだから、しばらくそっとしておいてください。SNSに「いいね」もメンションもしないで」と返事が来た。要は、拒絶されたのだ。
ショックだった。胸が痛くなった。考えても考えても、どうしてそうなったのか、わからなかった。

そっとしておいて欲しいなら…と、連絡を控えるようにした。
そうしたら、自分がそれまで、いかに彼に頼っていたかがよく分かって、余計に悲しくなった。
目にしたもの、わからないこと、腹が立ったこと…つらつらと送られてくる私からのつぶやきを、彼はいつも聞いていた。無粋で、自分勝手で、ちょっと偉そうだけど、気の利いたことは何も言わないしできないけど、聞いてくれていた。そしてそれが、彼も嫌ではなかったのだ。

そのことに気づいてから、もっと彼と仲直りしたい気持ちが強くなった。
1ヶ月か2ヶ月に一度、連絡をしてみた。返事は来ない。既読もなかなか付かない。もうブロックされてるのかな…と思うころに、ようやく既読の印がつく。

先月のバレンタインに、オンラインでチョコレートのソフトクリームをプレゼントした。2週間後、既読が付いた。でも、何も言葉はない。
そのあともう一度連絡してみた。既読は付かない。
なんだかフッと、「もういいや」と思った。
もうやめよう。自分のイタさを認めよう。追いかけるのはやめよう。すがるのはやめよう。

非表示にしていた彼の名前を削除した。これでもう、来ない返事を待つことはない。
悲しくないと言ったら嘘になる。でも、もう元の2人に戻ることはできないし、あの関係に戻ったらいけないとも思う。戻ったとしても、彼はきっと同じことをする。
だから、これがベスト。ベストに決めた。もういいや。