作品③「100人のおばあさん」

こんにちは。ゆりりうすです。
連続投稿です。これも変な話です。
よろしくお願いいたします。

「100人のおばあさん」
私の家系はとても変わっています。
女の人が年を取っておばあさんになっても、誰も死なないのです。
その代わり、段々薄べったくなって小さくなっていきます。
どうしてそうなるのか分からないけど、これは声が関係あると思います。
声。
家の家系はさかのぼるほど、声が高くなります。
例えば、私のお母さんは私よりも声が高くて、おばあさんはもっと高いです。そのおばあさんのお母さんはもっともっと高くて、つまり、どんどんどんどん高くなっていくのです。
今、一番声が低いのは私です。
じゃあ、どんどんどんどん声が高くなっていくとどうなるのでしょうか?
20~30人くらいまでは、人の声としてはすごく高いけれど分かります。
でも、40人以上とはもう超音波で人間の耳では聞こえません。
42番目のおばあさんは猫みたいな声を出します。50番目はコウモリみたいで、78番目は蛾で、100番目はイルカです。
つまり、この辺のおばあさんは何を言っているのか分からないし、聞こえません。
100番目のおばあさんが何かを言ったとします。すると、私のところに伝わるまでに順番に下がっていって、大体1時間くらいかかります。
それなのに、どのおばあさんもものすごくおしゃべりで、私は耳がキーンとなります。
おばあさん達はみんな薄べったくて小さくなるけれど、とても似ているので同じ服を着て、背番号を着けています。
みんな私の家に住んでいます。どこに住んでいるかって?
それは、大きめなおばあさんはクローゼットに並んでいます。
小さくなるほど引き出しの中に入れられ、100番目のおばあさんはハンカチサイズです。
ある日、寝坊助のお母さんは、68番目のおばあさんを着ようとして、100番目のおばあさんをカバンの中に入れようとして大騒ぎになりました。
さかのぼるほど、何も食べたくなくなるみたいで、食事をするのは、せいぜい10番目くらいです。
でもみんな、普段暗い所に入っているので、よく日向ぼっこをしたいと言い出します。
そうすると、私とお母さんはベランダにおばあさん達を干します。
何だか虫干しみたいです。お母さんは、梅干しを干しているみたいと言っていました。
ところが、突然強い風が吹いてきて、ずいぶん沢山のおばあさんが飛ばされてしまいました。
私とお母さんが全員を拾い集めるまでに夜になってしまいました。
お母さんと「今度は重石をしとかなきゃね。」と話していたら、みんなが抗議の声を上げました。
私達はずいぶん人数がいるけれど、整理されているのでスッキリと住んでいます。
私は考えます。でも、と言うことは、私の娘は私よりも声が低くなって、その娘はもっと低くなって、どんどんどんどん低くなって、また声が聞こえなくなるのかしら?
それを考えるとすごく恐いけれど、きっと大丈夫です。
だって、私には100人のおばあさんがいるから。
   ―おわり―

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