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10年の習いごと

先月末で10年続けてきた習いごとのフラを辞めた。

毎週同じ曜日の同じ時間にレッスンに行っていたから、その時間になるとソワソワしたり、辞めたことを忘れて準備しようと時計を見たりするのかと思ったが、全くそんなことは無かった(笑)

10年も続いたのに辞めてしまった後は、自分でも驚くほどさっぱりしていた。辞める時に先生に言われた「フラに染まらなかった」とはこういうことだろうか。



フラを習い始めたのは、”何か運動をしたい”という単純な理由からだった。フラをやりたいという強い思いではなく、フラでなくても楽しく体を動かして運動できる何かであれば良かった。

家で体操したり、YouTube見ながらヨガしたり、近所を歩いたり。
1人でできることはたくさんあるけど、私は運動系が継続できないタイプ。
”1人”というところに甘えが出る。
やってもやらなくても自分だけ。その時の気分で決められる。
誰にも咎められないし強制力が無いから、なかなか続けられない弱い奴。
教室に通うことで強制力を持ち、友達と一緒に楽しく、軽く、運動不足が解消できたらいい!そんな動機で始めたのが、フラだった。

「フラの体験に行ってみない?」
と友達が誘ってくれた時は、二つ返事でOKした。
ハワイが好きだし、海を見るのが好きだし、ゆったり体を動かすイメージ。ハード過ぎないのがいい。そんなきっかけだった。

同じ志(ちょっと大袈裟)を持つ友達3人と近所のフラ教室に入会した。
友達の1人は”痩せる”を目標に掲げていたから、数ヶ月であっさり辞めた。
膝を曲げて上半身を固定して踊るのは地味に辛い。でも汗をだらだらかいて痩せるのとはちょっと違う。その彼女は、さっさと見切りをつけた。

私にとっては、じんわり汗ばむくらいがちょうど良かった。
ところが、速いテンポの曲で踊ると汗ばむどころか、汗ダラダラになることはもっと後で知る。

自分が思っていた以上にフラは楽しかった。
だから10年も続けられたんだと思う。
ハワイアンミュージックは、聞いているだけでも癒される。
足は右へ左へ動かしながら時々違うステップ。その動きとは別に手は、上へ下へ、波を作ったり風を受けたりとハンドモーションを覚える。
ゆるやかに見えるけど足と手の動きが単純ではなく、結構頭はフル回転している。
脳トレにも絶対いい!
高齢の方も多いけど、みんなで揃えて踊るのは、実は、結構すごいスキルだったりする。



フラを辞めてから数日経って、先生からお花を頂いた。
紫陽花とピンクの薔薇とカラーが入った素敵なアレンジ。

10年お疲れさまで頂いた花束

フラを辞めると先生に話した時、先生はどうして?と聞かなかった。
実は、理由を必ず聞かれるだろうなと思っていた。
なんて言おうか、正直に話してどう言われるだろうかと考えて数日前から胃が痛くなっていた。話す当日もスタジオの扉前で何度も深呼吸して、息を整えてから入った。

いつものように床に座って準備をしていた先生に話しかけた。
先生は、理由も聞かずに床に突っ伏してから、こう言った。

「10年も続けていたら、そのまま続けるか、何か新しいことを始めるか、どっちかだもんね…」

その後のレッスンでは、時々ぼーっとしていたり、振りを間違えたり、先生の動揺を見てちょっと申し訳ない気持ちになった。

そりゃそうだ、突然10年も居た古株が二人も同時に辞めると言ったのだから。


自分のクラスには辞めることを話していたけど、他のクラスの人には伝えるタイミングが無く、最後のイベント終了直後の楽屋で話すことになった。

「なんで辞めちゃうの?」
「引っ越し?」
「ずっと続けるのかと思ってた」

ここまで長く続けてしまうとどうしても来れないような理由があって、仕方なく辞めるというのが、定番のようだ。かなり驚かれた。

そう考えると当たり前のようになっている行動を変えるのって勇気がいる。
ぬるま湯の中でじーっと浸かっていたら、そりゃぁ楽だ。
楽な方をついつい選びがちになる。長ければ長い程、そのぬるま湯は適温になり、肌になじみ、纏わりつく。
それを纏いながら過ごしていくのも剥ぎ取るのも決めるのは自分だ。



辞めて数週間経ったが、今はまだ新しいことを始めてはいない。
今まで運動系の習いごとに関して無関心だったから、近所でどんな教室があるのか、自分が興味湧く運動は何か、それを探している。

今は、朝と寝る前に軽くストレッチしたり、いつも自転車で行っている用事を歩いて行ったりと自分から運動する選択をしている。

フラを辞めたことで自分から運動しなければ、という危機感なのか。
フラのおかげで腰痛も無い。
胸を開く姿勢に気をつけて歩くようになった。
背筋を自然と伸ばすように時々意識する。

フラを辞めてしまったけど、10年続けてきたことで苦手な運動も続けられたという自信にもなった。
フラは神話も多く、神々への賛歌、愛、歴史、文化など学んだことも多い。
美しい姿勢を保ちながら指先まできれいに動かすハンドモーションも消えかけていた私の女子力を引き上げたと思う。

こうやってフラの10年を振り返ると今もフラが好きだし、何年か後にまた再開する可能性もゼロじゃない。
最後までフラを続けたいと思うほど、私はフラには染まらなかったと先生に思われたかもしれないけど、心の中はフラに染まった10年だったと思う。


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