朗読『ショコラ』作:Jidak
この『ショコラ』の朗読は、忘れられない作品になった。
一つは、こんなに長い作品の朗読に初めて挑戦したということ。
そして、それ以上に思い入れがあるのは、私の朗読に対する向き合い方が
この作品で変わったからだ。
私は、自分の声で伝えたいと思って朗読を始めている。
自分なりに気持ちを乗せることばかりを考えていた。
これまで朗読したショートストーリーでは、主人公の性格とか話し方などを私なりに解釈して、自分のイメージを乗せることができた。
ところが、この作品では、主人公がどんな人なのか書かれていたのだ。
「言葉に気持ちが乗らないタイプ」
感情を込める話し方しかしてこなかったので、逆に難しい。
そして、地の文を読むところは、フラットに、ニュートラルに読んで欲しいと言われたことも悩んだ。
特別に感情を込めず、どちらかと言うと淡々と平坦に読む、でも無感情になり過ぎない。一番難しかった部分だ。
セリフを話す登場人物が4人、それ以外に誰か特定されていない人物のセリフもあった。声優ではないし、声色を使い分けて演技をするのとはまた違う。これもまた、どう読んだらその人物の声に聞こえるのか。
この作品を通して、単純に伝えたいという気持ちから、どう伝えたらいいのかを考えるようになったのだ。
何度も読み過ぎて反対に見失ったり、ぶれたり、試行錯誤した。
完成となった今も、もう少し違う読み方のほうが良かったのではないか、このトーンでその心情は伝わっているのだろうか、と不安になる。
でも、今の私にできる精一杯のことをして朗読をした作品。
読み終わった今でも、もっと出来たかもと思うのだから、まだ自分には伸びしろがあると思っている。
半年後、数年後、聴き直したら自分がどう感じるだろうか。
その頃までには、色々な作品を朗読して、同じような感情を繰り返し、学び、経験してスキルが上がって、また違う読み方ができるかもしれない。
今、私が表現できる『ショコラ』をこのnoteに置くことで、その楽しみができたと思う。
朗読を通して、自分に対しても向き合うことができた。
考えて、想像し、自分のできない歯がゆさをもどかしく感じ、悩んだ。
大人になってもこんなに深く考える時間があるなんて。
とてもいい経験になったと思う。
そして、この物語にぴったり合う曲を付けて編集してくださった作者でもあるJidak(ジダック)さんにこのような機会を貰えたことを感謝して、多くの方に聴いていただけたら、とても嬉しいです。
朗読音声は、Jidakさん(作者、編集)のnoteから全4話お聴きいただけます
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